アマゾン・プライムで偶然拾った映画。何気に見始め、出演者紹介の字幕で目をこすった。
Line Renaudって、あのリーヌ・ルノー? カジノ・ド・パリの看板スターだった、「カナダの私の小屋」の、「針仕事に精をお出し」の、「トワ・マ・プティット・フォリー」の?
半信半疑でネット情報を漁ってみたら、やっぱりそうだよ。あのリーヌ・ルノーだよ。よくよく見れば、グリーンの陶器みたいな瞳は昔のまま。それにしても、若い。
映画の中の彼女は、さすがに足取りにはちょっと頼りないところも見られたが、長ゼリフを淀みなくしゃべり、舌がもつれるようなことは全くない。
この人、1928年生まれだから、映画の撮影当時、92か3だよ。タマげるね。ノーベル平和賞受賞でオスロまで出かけて行って演説した被団協の田中熙巳さん (92) にもタマげたけど。
グレコとかバルバラとか、歌はヘタだが持ち味で聞かせるタイプが多いフランスの女性歌手の中で、ルノーは際立って歌がうまい歌手だった。といってもピアフのようにたくましい歌唱力があるわけではなく、ジャクリーヌ・フランソワのようにうまいがよそよそしいわけでもなく、どちらかと言うと若いころのドリス・デイやパティ・ペイジのようなキュートな魅力のある歌手だった。
大先輩の蘆原英了さんは「トリモチのような声」と、よく分からない比喩で讃えておられたが、一度聴いたら後を引く、という意味だったのかも。
映画は毒を抜いた女性版『最強のふたり』といったところ。肩の凝らないエンターテインメントであり、感動を覚えるような深みこそなかったが、懐かしい人の活躍もあって、いっとき幸せな気分にひたらせてくれた。