そして由貴さんは時雄さんと浅草駅から東武特急で日光に旅立ちます。
東武日光への車中「由貫 口じゃ言いづらいからこれを見て」
一枚の便箋「二日間は僕の妻として完璧な演技をして下さい。もちろん精一杯の演出をさせてもらうから……云々」
字数は少ないけれど小さなハートが締めつけられるような彼のひた向きさに悦びを感じとり、彼の顔をじっと見て「頑張ってあなたの妻になりきってみせます」
返事の替わりに「うむ!」 私の頬に手をかけ肩を引き寄せます。
少し汗ばんだ手をぐっとにぎり、心の太い絆が赤い糸で結ばれていくのが判ります。
終着駅は小雨にしっとりと濡れていて半袖ブラウスとタイト姿では肌寒く宿を早めに探さなくては。
ふたりで電話ボックスに入り,”るるぶ栃木″からランダムに電話番号を伝える私に彼はピッポッパと。
二人三脚の夫婦の和。結局宿はあいていません。でもこんになところにも小さな幸福があるんですよね、一生懸命探してくれている彼に感謝。
しかたなく宇都宮に宿をとる事になりました。東武からJRの駅へ。しっぽりと相合い傘でお互い手を携えながら……
築数十年の駅近くの旅館。宿帳にしっかりと妻由貴恵と。ここにも幸せを見つけました。
宿の主人「家族風呂もうあくからおふたりでどうぞ」「はい」と私。二階の今時めずらしい格子の戸を開けて部屋に入ります。
仲良く敷かれた布団がふたつ。
浴衣に着がえ、なにげなく彼が私の唇を奪います。ファーストキスはあっ!というまに。
「由貴恵お風呂入ろう」
旦那様の幅広い肩や背中を流してさし上げます。
前も……恥ずかしいわ……(天の声……初めてじゃないのに)
ゆったりした湯舟にふたりでつかり、彼の膝の上にちょこんと。優しく激しいペッティング。
部屋に戻り三つ指ついて床入りの儀式。
「こんな由貴恵ですが末長く可愛がって下さいね。お願い致します」
彼は首を縦にふり「うん、こちらこそ」
桃源郷の奥深く二人の体は沈んでいくのでした……
翌朝、朝食時「奥さん、おかわりあるからね」「はい!」
彼は昔来た事があるこの旅館の近辺についておかみさんと昔話に花が咲きます。私も彼と一緒の輪の中と安堵感が。
小さな便箋の大きな役割をはたして女装冥利に尽きる思いです。
女装の演出はエスコートの方の協力が大とつくづく考えさせられました。
ありがとうあ・な・た。
♡ ♡
久し振りに晴れた日曜日、ふたりは今、御苑に来ています。
近くで買ったお弁当。「あなたのなめこ汁おいしそうね」
一ロつけた彼のカップ「こっちのがおいしいわ」
「全部いいよ」
「じゃあ、私のしじみ汁あげる」
こんな場面を夢に抱いた由貴恵ですもの。
幸せの絶頂!
私の膝枕で今回依頼されたこの原稿。
ふたりで案を練り合いながらいつまでもいつまでも語り尽くせぬ中秋の青空の下、私の恋焦がれる思いが天まで届くのを祈りつつ、この大きく怖いシークレットの趣味をいつまでも支えていってもらいたいわあー。あなた! お願い!
東京ラブストーリーのリカか、はたまた101回目のプロポーズの薫さんかしらね。
結末は。でも始まったばかりのINGの愛のプレリュードだから……。
『くいーん』1992年2月号
>部屋に戻り三つ指ついて床入りの儀式。
>「こんな由貴恵ですが末長く可愛がって下さいね。お願い致します」
>彼は首を縦にふり「うん、こちらこそ」
1992年は既に平成です。
でも、このような古風な新婚初夜の作法をする由貴さん。
素敵ですね。
こういう風にされたら時雄さんもメロメロです。
1泊2日の女装妻を無事にやり終えた由貴さん。
たいへんだったと思いますが、とてもうれしかったのではないでしょうか。
東武日光への車中「由貫 口じゃ言いづらいからこれを見て」
一枚の便箋「二日間は僕の妻として完璧な演技をして下さい。もちろん精一杯の演出をさせてもらうから……云々」
字数は少ないけれど小さなハートが締めつけられるような彼のひた向きさに悦びを感じとり、彼の顔をじっと見て「頑張ってあなたの妻になりきってみせます」
返事の替わりに「うむ!」 私の頬に手をかけ肩を引き寄せます。
少し汗ばんだ手をぐっとにぎり、心の太い絆が赤い糸で結ばれていくのが判ります。
終着駅は小雨にしっとりと濡れていて半袖ブラウスとタイト姿では肌寒く宿を早めに探さなくては。
ふたりで電話ボックスに入り,”るるぶ栃木″からランダムに電話番号を伝える私に彼はピッポッパと。
二人三脚の夫婦の和。結局宿はあいていません。でもこんになところにも小さな幸福があるんですよね、一生懸命探してくれている彼に感謝。
しかたなく宇都宮に宿をとる事になりました。東武からJRの駅へ。しっぽりと相合い傘でお互い手を携えながら……
築数十年の駅近くの旅館。宿帳にしっかりと妻由貴恵と。ここにも幸せを見つけました。
宿の主人「家族風呂もうあくからおふたりでどうぞ」「はい」と私。二階の今時めずらしい格子の戸を開けて部屋に入ります。
仲良く敷かれた布団がふたつ。
浴衣に着がえ、なにげなく彼が私の唇を奪います。ファーストキスはあっ!というまに。
「由貴恵お風呂入ろう」
旦那様の幅広い肩や背中を流してさし上げます。
前も……恥ずかしいわ……(天の声……初めてじゃないのに)
ゆったりした湯舟にふたりでつかり、彼の膝の上にちょこんと。優しく激しいペッティング。
部屋に戻り三つ指ついて床入りの儀式。
「こんな由貴恵ですが末長く可愛がって下さいね。お願い致します」
彼は首を縦にふり「うん、こちらこそ」
桃源郷の奥深く二人の体は沈んでいくのでした……
翌朝、朝食時「奥さん、おかわりあるからね」「はい!」
彼は昔来た事があるこの旅館の近辺についておかみさんと昔話に花が咲きます。私も彼と一緒の輪の中と安堵感が。
小さな便箋の大きな役割をはたして女装冥利に尽きる思いです。
女装の演出はエスコートの方の協力が大とつくづく考えさせられました。
ありがとうあ・な・た。
♡ ♡
久し振りに晴れた日曜日、ふたりは今、御苑に来ています。
近くで買ったお弁当。「あなたのなめこ汁おいしそうね」
一ロつけた彼のカップ「こっちのがおいしいわ」
「全部いいよ」
「じゃあ、私のしじみ汁あげる」
こんな場面を夢に抱いた由貴恵ですもの。
幸せの絶頂!
私の膝枕で今回依頼されたこの原稿。
ふたりで案を練り合いながらいつまでもいつまでも語り尽くせぬ中秋の青空の下、私の恋焦がれる思いが天まで届くのを祈りつつ、この大きく怖いシークレットの趣味をいつまでも支えていってもらいたいわあー。あなた! お願い!
東京ラブストーリーのリカか、はたまた101回目のプロポーズの薫さんかしらね。
結末は。でも始まったばかりのINGの愛のプレリュードだから……。
『くいーん』1992年2月号
>部屋に戻り三つ指ついて床入りの儀式。
>「こんな由貴恵ですが末長く可愛がって下さいね。お願い致します」
>彼は首を縦にふり「うん、こちらこそ」
1992年は既に平成です。
でも、このような古風な新婚初夜の作法をする由貴さん。
素敵ですね。
こういう風にされたら時雄さんもメロメロです。
1泊2日の女装妻を無事にやり終えた由貴さん。
たいへんだったと思いますが、とてもうれしかったのではないでしょうか。