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2015年4月13日 田中森一の『遺言』

2015-04-13 | 日記

 田中森一の『遺言』を読む。副題は「闇社会の守護神と呼ばれた男、その懺悔と雪辱」。この方の前作『反転』は去年読んだ。

 この方の生き様。父親との葛藤。母親の愛情。兄弟との愛情。仕事の世界での上司との葛藤。仕事が順調に行くときの楽しい気分。断れない状況。などなど、多くの男が生まれ、社会に出て、晩年になるまで、その程度は大きいも小さいもあろうが、経験するようなことが、書いてある。

 この本に出てくる実名の登場人物は、1980年代から1990年代に登場した「バブル紳士」といわれる方たちだ。あの当時、現役としてそれほど遠くない世界で仕事をしていた私は、すでに忘れて久しかったこの方々たちを、もう多くの方は亡くなられたのだろうが、思い出した。

 あの当時、日本人の誰もがこんな「裏」があるのだとは知らなかっただろう。この著者の前作とこの本で分かった。

 著者が一番言い残したい部分は『遺言』の217ページ「石橋産業事件の幕開け」にある。石橋産業に200億円の手形を裏書させたのは、許永中とこの本の著者田中森一が石橋産業をだましたのか(詐欺)、それとも石橋産業は納得の上で(作者が言いう対価の見返りとして)振り出したのか、である。裁判所は、これは許永中と田中森一の詐欺である、とした。田中森一は石橋産業は事前に承諾していたと書いてる。

 「億」という呼称に何の違和感もなかった時代。今振り返ってみると、太平洋戦争とか戦後の貧しい時代とかは確かにあったよな、という記憶はある。でも、ちょっと会っただけの人からお礼に百万円が入った紙袋をもらったとか、新幹線の中に書類と一千万円の金が入ったカバンを忘れたとき、忘れ物の届け出書に書類だけを記載し、一千万円を届け出るのを忘れた、なんていう時代が四半世紀前に本当にあったなんて、とても信じられない。

 以上

 

 

 


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