組版の仕事の中に「ルビ(振り仮名)をふる」という作業があります。
あまりなじみのない漢字や固有名詞などの初出には、ルビをつけたほうが読者に親切かもしれません。
ただ、漢字1文字に対してルビが2文字までなら特に問題はありませんが、3文字以上の場合はクライアントの希望を伺いながらバランスを考えます。
たまに、児童書などで「総ルビ」のご依頼をいただくことがあります。
「総ルビ」というのは登場する漢字すべてにルビをつけることです。
一言で「総ルビ」とおっしゃいますが、これがなかなかシビレます。
単純作業ですが、長時間にわたると集中力がもたなってきます。
ところが、作業を続けているうちに徐々に心地よくなってきて、後半は一種のトランス状態になるようです。
達成感もこの上なく、結果的に楽しかった記憶が残ります。
つくづくおめでたい脳でできているみたい?
一度、地獄を体験してしまうと、もはやそれは“想定外”ではなくなり、「総ルビ」依頼にも驚かなくなりました。
こうして、私の守備範囲が徐々に広がっていくのでした(できることが増えていくという意味です)。
アシスタントの汗と涙 ③