カタツムリの富士登山(6)

2018-12-02 07:51:56 | 童話
僕が立ち止まって深呼吸をしている時に、遠くに建物が見えた。
『あれは山小屋なのかなあ、山小屋だったら温かいし、風で飛ばされる心配も無く、安心して寝られるなあ。』

人間に踏みつぶされないようにして近付いて行くと、やっぱり山小屋で、たくさんの登山者がいました。
僕は山小屋の中でも暖かい高い所で休憩をしていると、登山者の一人が僕を見つけて、
『こんな所にカタツムリがいるよ、風で飛ばされてきたのかなあ?』
『ちがうよ、僕は自分で登って来たんだよ。』
『えっ、こんな所まで登って来たの?』
『うん、途中までトンボ君とチョウチョさんと一緒だったけれど、あとは、ここまでは僕ひとりで登って来たんだよ。』
『どこへ行くの?』
『みんなと同じで、頂上へ行くんだよ。』
『カタツムリさんは、なぜ富士山に登るの?』
『テレビで富士山を見ていたら、どうしても登りたくなったからだよ。』
『ここまで、何日くらいかかったの?』
『1年くらいかな。』
『お家に帰るまで、どれくらいかかるの?』
『これから頂上まで行って下りて来るころに寒くなるので、また岩の穴の中で温かくなるまで寝ているから、お父さんとお母さんのいる所まで、あと2年くらいかかるかな。』
『わぁ、すごい、頑張ってね。そして、気を付けてね。』
『うん、ありがとう。』

次の朝、僕は頂上の少し下にある神社を目指して登って行った。
『この神社にも登山者が一杯いるなあ。』
登山者が神社でお参りをしているので、僕もお参りをした。
『無事に山頂まで行って、お父さんとお母さんが待っている所に無事に帰れますように。』

僕は寒くなる前に山の下の方に下りたいので、お参りをしたら、山頂を目指して速く歩いて行った。
『あそこにいる登山者が写真を撮っている。あそこが山頂なんだ。』

山頂に着いたが、僕はカメラを持っていないので、お家に帰った時に、お父さんとお母さんにお話しができるように、山頂からの風景をしばらく見ていた。
『山頂に着いたので、転がり落ちないように注意して下りよう。』
また僕は歌いながら歩いた。
『ランランラン、ランランラン。』
何日か歩いて下りていると、また寒くなってきたので、登る時と同じように、大きな岩の小さな穴を見つけて寝る事にした。前と同じようにコケが生えていて暖かい。
『外が暖かくなるまでおやすみなさい。』
そして、僕は暖かくなるまで寝ていました。


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