カタツムリの富士登山(6)

2017-02-23 21:37:50 | 童話
『あ~あっ、よく寝たなぁ。』
僕は、あまり寒くないので目がさめた。
そして、岩の穴の中から外を見ると、雪はほとんど無くなっていた。

『お父さんとお母さん、僕は約束を守って家の中にいたよ。また今日から富士山を登るからね。』
穴の外でお水をタップリ飲んで歩き始めた。雪の上や、雪解け水の上は冷たいので、乾いている所を歩いて行った。
『ランランラン、ランランラン。』
今度は、僕が歌っても、だれも『ルンルンルン、ルンルンルン。』や『ピッピピピ、ピッピピピ。』と歌ってくれる友達がいません。
『下りる時に、トンボ君やチョウチョさんと一緒に歌えるから、今は僕だけで歌おう。』

そして、僕は何日間も『ランランラン、ランランラン。』と歌いながら登って行った。
また時々寒い日があるので、寒い時は暖そうな岩の穴を探して暖かくなるのを待つことにした。
僕の歩いている所から遠くを見ると、人間が登って行く登山道に、多くの人がリュックを背負って、ツエを持って一列に並んで歩いている。だけれど僕みたいに歌いながら登っている人はいません。

カタツムリの富士登山(5)

2017-02-22 21:20:49 | 童話
『ランランラン、ランランラン。』
『ピッピピピ、ピッピピピ。』
『寒くなってきたね。高い所は、山のふもとよりずっと寒いだね。』
『僕もこれ以上高い所へ登って行くと、他のトンボに会えなくなってしまうので、僕も山のふもとへ下りていくね。カタツムリ君も気を付けてね。』
『僕はまだ登っていくね。ここまで一緒に登ってきてくれてありがとう。僕が下りて来たら、また一緒に下りようね、バイバイ。』
『うん、カタツムリ君、気を付けてね、バイバ~イ。』

そして、ここからは僕だけで頂上を目指して登って行きました。チョウチョさんもトンボ君もいないので、注意して登って行きました。
『う~、寒い。風が吹くと急に寒くなるなぁ。』
僕は、お父さんの言った『寒くなったら、背中の家から出たら絶対ダメだよ。』を思い出した。
『よしっ、今の内に風のこない温かい場所を探そう。』
丈夫な岩の、風のこない場所を探した。
『あっ、ここは丈夫だし、穴もあまり大きく無くて、風が入ってこないや。』
僕が穴の中に入ると、コケが生えていて温かく、コケはお水をもっているので、僕の体も乾燥しないみたいだ。
『よしっ、ここに決めた。僕は温かくなるまでここにいよう。
『コケさん、春まで一緒にいようね。』
そして、僕は穴の外のお水をタップリ飲んで、僕の家に入って寝た。
『温かいなあ。』
そして、僕は暖かくなるまで寝ていました。

カタツムリの富士登山(4)

2017-02-21 21:18:20 | 童話
ある日、チョウチョさんが
『これ以上、富士山の高い所へ登って行くと、他のチョウチョの友達と会えなくなってしまうので、これから高い所はトンボさんと登ってね。』
と言って、富士山のふもとへ帰って行きました。
『バイバ~イ。僕がここに降りてきたら、また一緒に山から下りようね。』
『待っているね、バイバ~イ。』

そして、今度はトンボ君が高い所から僕のために水の付いている草やお花のある所を教えてくれました。
そして、太陽が出ていない朝と夕方は少し寒くなってきました。
『朝と夜は少し寒くなってきたけれど、トンボ君は平気なの?』
『僕達トンボは秋にも飛んでいるので、まだ平気だよ。』
『そうなの、それでは、まだ一緒に登れるね。』
そして、僕とトンボ君は、また歌いながら富士山を登り始めました。

僕は『ランランラン、ランランラン。』
トンボ君が『ピッピピピ、ピッピピピ。』

ずっと登っていると草やお花の生えていない所に出た。そこはゴツゴツとした岩だけだった。
『トンボ君、草が生えている所は無いの?』
『うん、高い空から見ているけれど、そこだけ草やお花が無いね。もう少し登って行くと草の生えている所が有るよ。気を付けて登って来てね。』
『うん、わかった。』
少し登って小さな石の上にいる時に、僕が乗っている石がグラグラして、僕は石と一緒に下へ転がり落ちてしまった。
『うわっ。』
『カタツムリ君、大丈夫?』
『うん、草の生えている所で止まったから大丈夫だけれど、岩の上を転がっていたら、背中のカラが壊れるところだったよ。今度は気を付けて登るよ。』
『そうだね、気を付けてね。』
『うん。』
そして、僕は何日かトンボ君と一緒に登って行きました。

カタツムリの富士登山(3)

2017-02-20 17:20:32 | 童話
『あっ、雨だ。』雨粒が僕の目に当たりました。
『チョウチョさん大丈夫?』
『ええ、これくらいの雨なら大丈夫だけれど、きつく降ってきたら雨宿りしないといけないわね。』
『そうなの? 僕は雨がたくさん降っていてもへいきだよ。』
『わぁ、たくさん降ってきだした。わたしは大きな葉の裏側で雨宿りするわ。』
『じゃぁ、僕も葉っぱの裏側で休憩するよ。』
『カタツムリさんは1日10メートル歩くんでしょ。』
『うん、だけれど、雨がやんでから一杯歩くよ。』

こうして、僕とチョウチョさんは歌いながら、何日も富士山を登って行きました。
僕が
『ランランラン、ランランラン。』
チョウチョさんは
『ルンルンルン、ルンルンルン。』

『楽しそうだけれど、何をやっているの?』
僕とチョウチョさんが見上げるとトンボ君が話しかけてきました。
『チョウチョさんと山登りしているんだよ。』
『カタツムリ君はふもとからずっと登って来たの?』
『登山口まで自動車で送ってもらったけれど、登山口からはずっと歩いて登っているんだよ。途中でチョウチョさんと友達になって一緒に登っているので楽しいよ。』
『いいなぁ、僕も友達に入れてよ、僕も一緒に登りたいなあ。』
『いいよ、たくさんで登ると楽しいよ。』
『決めた。僕はカタツムリ君とチョウチョさんの友達になる。』

こうして3匹で
僕が
『ランランラン、ランランラン。』
チョウチョさんは
『ルンルンルン、ルンルンルン。』
そして、トンボ君も
『ピッピピピ、ピッピピピ。』
と歌いながら何日も何日も富士山を登って行きました。

カタツムリの富士登山(2)

2017-02-19 09:44:45 | 童話
僕は、登るのに2年で、下るのに2年かかるから、僕が今度お花畑に帰るのは4年後になるんだなぁと思った。
さあ、ガンバルぞ、僕の始めての大冒険の始まりだ。

今はまだ低い所なので草やお花が一杯だ。僕は体が乾燥しないように、水が残っている草の上を歩いて行った。
『どこへ行くの?』
僕のうしろから声がしたので頭をうしろにまわすとチョウチョが飛んでいた。
『僕はね、これから富士山に登るんだよ。』
『ふぅ~ん、すごいね。ひとりで登っているの?』
『うん、お父さんとお母さんはお家に帰ったよ。』
『わたしが途中まで一緒に行ってあげようか?』とチョウチョが言ったので、仲良く一緒に登って行った。チョウチョはカタツムリの僕の体が乾燥しないように、水のある所や、水の付いている草の場所を、高い所から探して僕に教えてくれました。

そして、夜は仲良く一緒に寝ました。
『カタツムリ君、もう朝だよ、早く起きなよ。』
『ああ、おはよう。昨日はいっぱい歩いたから疲れちゃった。』
『まだ1日でしょ。4年間歩くのだから、がんばらなければダメだよ。』
『そうだね、よしガンバルぞ。』
僕は草の上の水を飲んだあとで、大きなあくびをした。

そして、僕はまた歩きだし、チョウチョは僕の上を飛び始めた。
『ランランラン、ランランラン』
僕はチョウチョと一緒なので楽しくなり、歌をうたいながら歩きました。
チョウチョも
『ルンルンルン、ルンルンルン。』
と楽しそうにヒラヒラと飛んで、一緒に富士山を登って行きました。