ぼく(7)

2019-09-20 06:39:40 | 童話
『もう一つあるよ。お母さんやお父さんが手を近付けてきたときに、手のひらを握るのではなく、指を一本だけを強く握るんだ。そうすると、みんな喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『わたしも指を一本だけ握ってあげて、みんなに喜んでもらっているわ。』
『僕もやっているよ。そうすると、みんなが「かわいいわねえ。」と言って喜んでいるよ。』

『もう他に無いかなあ。』
『いっぱい有るよ。大人の人が「居ない居ない、バァ。」と言ったら、声を出して笑ってあげるんだ。これも喜ばれるよ。それからね、足の裏をコチョコチョされた時は、足だけではなく、両手両足を全部バタバタさせるんだ。足だけでは喜ばれないよ。あっ、バタバタさせる時に口を大きく開けることを忘れないようにね。』
『うん、分かった。今日からやってみるよ。』
『わたしもやるわ。』

『僕はもう大きいからハイハイをしているんだけれど、ハイハイしている時にドテッと転んで見せると笑いながら喜ぶよ。テレビのお笑い番組で、時々わざと転んでいるのを見て、わざと転んだのを知っていて笑っているけれど、僕の転ぶのは本当に転んでいると思っているみたいだよ。』

いっぱい有るんだね。
だけれど、お母さんやお父さんもぼくと同じ事をやっていたと思うんだけれど、大人になると全部忘れるのかなあ?
ぼくも大きくなったら忘れると思うので、今の内にお母さんやお父さんを喜ばせてあげようと思うんだ。

おしまい

ぼく(6)

2019-09-19 06:48:32 | 童話
『ねえ、みんな、お母さんやお父さんを喜ばせる方法が有るんだけれど、みんなのお母さんやお父さんはどうかなあ?』
『どうするの?』
『大きく口を開けて、両手と両足をバタバタさせるんだよ。そうすると、みんなが「かわいい、かわいい。」と言って喜ぶよ。お母さんは、ぼくの顔に自分の顔を押しつけて喜ぶよ。』
『わたしもやっているけれど、お母さんもお父さんも喜ぶわよ。』
『僕のお母さんも喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、よし、僕も家に帰ったらベッドの上でやってみるよ。』
『すごく喜ぶよ。』

ぼく(5)

2019-09-18 07:12:49 | 童話
『あっ、また赤ちゃんがお医者さんの診察が終って出て来た。』
『お医者さんは何と言ったの?』
『うん、順調に成長していますねと言ったよ。』
『良かったね。』
『うん、お母さんも喜んでいたよ。ぼくはたくさんオッパイを飲んでいるからね。』
『もうお母さんと帰るからね。みんなバイバイ。また今度ね。』
『うん、バイバ~イ。』
『バイバ~イ。』

『赤ちゃんのお友達がたくさん居てよかったね。』
『・・・』
『さあ、帰ってきたからベビーベッドで寝ててね。』
『・・・』
ぼくはお母さんのお話ししている事は全部分るんだけれど、まだ口でお話しができないので黙っています。

だけれど、目でお話しをしているのがお母さんには分かりません。
お母さんも赤ちゃんの時には目でお話しをしていたのになあ。
ぼくもきっと、大きくなったらみんなと目でお話しができなくなるんだね。

ぼく(4)

2019-09-17 06:40:33 | 童話
『お母さんとお医者さんがお話しをして、ぼくはもう少し経ったら離乳食も食べるんだよ。』
『離乳食って、おいしいのかなあ?』
『食べたことが無いから分らないよ。』
『ぼくは食べたことがあるよ。オッパイに比べておいしくなかったので、ベェと出しちゃったよ。だけれど、今はちゃんと食べているよ。』
『ふぅ~ん、えらいね。』
『ぼくは君達より5ヵ月早く産まれたお兄ちゃんだから偉いんだよ。』

『何が偉いの?』
『う~んとね、離乳食を食べているからエライんだよ。』
『ふぅ~ん。』

『ぼくも五ヵ月くらいすると離乳食を食べるから偉くなるのかなあ。』
『そうだね、僕達赤ちゃんは生まれてから五ヵ月くらいになると離乳食を食べ始めるので、みんな偉くなるんだね。』
『そうだね。』

ぼく(3)

2019-09-16 10:00:34 | 童話
それからね、僕達はみんなテレビを見ているから、日本以外の国で起きている戦争や病気のこともお話しするよ。
『あの国とあの国で戦争をしていているから、たくさんの人がケガをしていて、その中には僕達と同じ赤ちゃんもいるんだよ。』
『早く戦争を止めて、みんなで仲良くすればいいのにね。』

『あの国で恐ろしい病気が流行しているから、みんなも気をつけようね。』

そして、楽しいこともお話しするよ。
『お母さんのお腹の中に居る時は、体がフアフアと浮かんでいて気持ちが良かったね。』
『そうだね、特にお母さんが歩いている時が一番フアフアとしていて気持ちが良かったね。』
『そうだね。』

『だけれど、お母さんのお腹から外へ出て来た時は寒くてビックリしたね。』
『そうだね、寒かったね。ぼくは思わず泣いてしまったよ。』
『ぼくも泣いたよ。』
『わたしも泣いたわ。』
『なんだ、みんな泣いたのか。泣いたのはぼくだけかと思っていたよ。』