夢の入口(3)

2019-11-25 06:33:24 | 童話
その夜、向うから友達がノートと2本のエンピツを持ってやって来た。
僕も自分の手を見ると、両手にノートと2本のエンピツを持っていた。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、家の玄関の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は洋服ダンスの中からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のノートは文字がいっぱいで書くところが無いや。』
『僕のノートも文字がいっぱいだ。』
『今度は前の時よりもっと、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』

そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。
『僕の持っている携帯電話は録音機能があるから、今度はこの携帯電話を持って行って、夢の入口が分かった時に録音しようよ。』
『うん、良い方法だね。』
その夜、向うから友達が携帯電話を持ってやって来た。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、物置の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は2階に上がる階段の下の夢の入口からだよ。』

夢の入口(2)

2019-11-24 16:07:47 | 童話
向うから友達がノートとエンピツを持ってやって来た。僕も自分の手を見ると、両手にノートとエンピツを持っていた。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、机の下の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は食堂のテーブルの下からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のエンピツは芯が折れていて書けないや。』
『僕のエンピツも芯が折れていて書けないや。』
『しかたがないので、夢の入口の場所を、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』

そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。
『今度は、エンピツが1本折れても大丈夫なように2本持って行こうよ。』
『そうしようよ。今度は大丈夫だよね。』
そして、二人はノートと2本のエンピツを枕元に置いて寝た。

夢の入口(1)

2019-11-17 08:01:24 | 童話
ある日、僕は夢の事を書いてある本を見つけた。その本には、
『みんなで楽しく遊んでいる時に目がさめて、夢が終ってしまうことがあるよね。それは、夢の出口から出て来たからなんだ。夢には入口もあるんだけれど、夢の出口から出てくると、みんな夢の入口の場所は忘れてしまうから、夢の入口はだれにも分からないだよ。』
と書いてあった。
それで、僕は友達と二人で夢の入口を探すことにして、友達が僕の家に泊まった。
そして、夢を見ることが一番多い場所を、家の中で探すことにした。
僕達は夢の中に入ったらお互いに教えることにして、家の中の別々の場所で寝た。

最初の日は二人とも夢を見なかった。
次の日、向うから友達がやって来る夢を見たので、僕は友達に夢を見ている事を教えてあげた。
すると、友達も夢をみている事を教えてくれた。
朝になって、目がさめた時に二人とも夢の中でお話しをした事は覚えていたが、夢の入口がどこだったのかは覚えていなかった。
『夢の中で君に会ったのに夢の入口のことを覚えていないのは残念だね。』
『そうだね、もう一度夢の入口を探しに行こうよ。』
『うん、二人でまた行こうか。今度はノートとエンピツを持っていて、夢の入口が分かった時に、ノートに書いておこうよ。』
『そうだね、良い考えだね。』
そして、二人はノートとエンピツを枕元に置いて寝ることにした。

僕の順番(2)

2019-11-16 09:36:07 | 童話
そして、葉っぱから落ちた僕は、小川に流れ込んで行き、やがて、僕は川の水になって、みんなで小川を下流へ進んで行きました。
『やあ、魚さんがいっぱいだ。』
僕達はたくさん集まったので川が段々広くなり、流れが速くなりました。
大きな岩がいっぱい有る所では、あっちこっちの岩にぶつかりながら進んで行きました。
右の岩にドスン。今度は左の岩にドスン。次から次からぶつかりながら進んで行きました。
そして、急に前が何も無くなり、勢いよく下に落ちて行きました。

『あっ、これは滝だ。』
一番下の滝壷に落ちて行き、上か下か分らなくなりました。
『ブクブクブク。』
僕は滝壷の中で一回転してから上に上がって来ました。
『ブァ。』
滝が終ると川幅が広くなり、ゆっくりと進んで行きました。

広い河原ではたくさんの人がキャンプをしているのが見えます。
そして木の船をさおで押しながら進んで行く遊覧船が見えます。
僕はゆっくりゆっくりと何日もかかって川を下って行きました。

ずっと進んで行くと、大きな橋がいくつも見えてきました。
そして、目の前が広くなり、大きな船がたくさん停泊している所に来ました。
『あっ、塩辛い。海だ海だ。もう川は終ったんだ』
僕は、また海に帰って来たのです。

僕は、しばらくすると、また水蒸気になって空へ行き、雲になってから雨になり、川から海に戻って来るのです。
だから、家や森や山や大きな木や小さな木やお魚さんや大きな岩や滝やキャンプをしている人や遊覧船のみんな、もうすぐ、また行くから待っいてね。

おしまい

僕の順番(1)

2019-11-15 06:57:19 | 童話
僕は今、海の中の水になっています。
小さな波や大きな波となって、ゆ~らゆら、ゆ~らゆら、と上下しています。
そして、すぐ近くを船が進んで行くと、大きな波がザブ~ンと来て、僕は大きく飛び上がり、ドスンと落ちます。

海の中にはたくさんのお魚がいて、みんなで楽しそうに泳いでいます。
だけれど、ヒトデは泳げないので、海底をゆっくり、ゆっくりと歩いています。

僕は海岸に来て、砂浜に向って、ザブーン、ザブーン、と進みました。
小さな子供の右足をザブーン、今度は左足をザブーン、そして、お尻をザブーン。

ずっと暖かい場所に居たので、僕は蒸発して、小さな、小さな水の粒の水蒸気になったのです。
そして、空気と一緒に、どんどんと高い空に上がって行きました。
そして、みんなで手をつないで大きな雲になりました。
高い空を、ゆっくり、ゆっくりと、風に押されて流れて行きます。
『ここからは、家や森や山がよく見えるなあ。あそこの道路は自動車がいっぱい走っている。さっきまで居た海もよく見えるなあ。』

そして、僕はどんどんと空の高い所に上がって行きました。
『あっ、寒くなってきた。高い空は寒いんだね。』
僕達は寒いので、みんなでくっ付きました。
『あっ、下へ下り始めた。』
僕は空から降ってくる雨になったのです。たくさんの友達と一緒に降っています。
いつもは小さい粒で下に下りて行きますが、台風の時や夕立の時は、たくさんの友達と手をつないで大きな粒となって一緒に降ってくるので、ザーザーと大きな音がします。
大きな木の葉っぱにザーザーザー、大きな木の下の小さな木の葉っぱにポツポツポツ。