僕は自転車(4)

2021-01-26 09:32:30 | 童話
そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。
新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをボンポンとたたいてくれる。何も言わないが僕は嬉しい。

少し経って、僕の仲間ができた。男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。
そして、今迄乗っていた大きな自転車も綺麗にして、僕の隣り置いてある。
3台の自転車で時々お話しをするので僕は寂しくない。

ある日、僕は他の家に貰われて行くことになった。小さな子供が居る家で、自転車の練習をしたいというのだ。
僕は昔を思い出した。転びながら練習をしたよね。僕は今度の小さな子供も上手く乗れるようにしてあげようと思った。

僕が貰われて行く日に、男の子がやって来て、サドルをボンポンと叩いた。僕は涙をこらえるのが大変だった。僕は幸せだったし、今も幸せだ。

僕は自転車(3)

2021-01-25 09:03:12 | 童話
男の子は、夕飯の時にお母さんに
『あのね、僕、自転車に乗れるようになったよ。』
『あらそう、頑張ったのね。良かったわね。』
と喜んでくれた。
そして、しばらくお父さんや友達と一緒に僕に乗って楽しんだ。

ある日、お父さんが男の子に
『大きくなったので新しい自転車を買ってやろうか?』
と言った。
男の子は嬉しそう
『うん。』
と言った。だけれど、男の子は
『要らない、僕が自転車に乗れるようになったのは、この自転車だったからなんだ。僕はこの自転車が大好きなんだ。僕がこの自転車を乗らなくなると自転車がかわいそうだから。』
と言ったので、僕は
『ありがとう、だけど僕は違う子供に乗ってもらうから大丈夫だよ。』
と涙を抑えて言った。
お父さんが
『それでは、新しい自転車を買ってやるが、この自転車も家に置いておくから、時々この自転車にも乗ってやればいい。』
と言ったので、男の子は
『うん、そうする。』
と応えた。
僕は嬉しくなり、
『ありがとう、ありがとう。』
と何度も言った。

僕は自転車(2)

2021-01-24 09:19:22 | 童話
そこへ、男の子の友達が自転車でやって来た。
『なんだ、まだ乗れないのかよ。』
と言った。
自転車の僕は男の子が乗れるように頑張ることにした。
グラグラしていても、僕が倒れないようにすればいいのだ。

僕は男の子に
『一緒に頑張ろうよ、僕も倒れないようにするから。』
といって励ました。
『うん、頑張る。』
と言って、友達の前で僕を漕ぎ始めた。僕はグラグラしながらも倒れな
いように男の子を支えた。
友達は
『なんだ、乗れるじゃないか。』

男の子は嬉しそうに
『うん、そうだね。』
と言って公園の中をぐるぐると、いつまでも僕に乗って走っていた。だんだん上手くなり、僕はグラグラしなくなった。
お父さんさんが
『おぅ、乗れるようになったじゃないか。』
と言い、男の子以上に嬉しそうにしていた。

僕は自転車(1)

2021-01-23 10:40:13 | 童話
僕は自転車、この家の男の子の自転車。
男の子のお父さんの自転車は古いが、僕は新しい。
もう一つ、お父さんのとは違うところが有る。僕には補助輪が付いている。
男の子は頑張っているが、なかなか補助輪が外せない。

今日も補助輪を外して、お父さんと公園で練習をしている。
『お父さん、手を離さないでね。』
男の子が乗った僕がグラグラ、グラグラ。なかなか上手くならない。
お父さんが
『下ばかり見ているからだ、もっと遠くを見ないとダメだよ。』
だけれど男の子は遠くを見ることができない。
『ほらほらっ、前を見て、遠くを見て。』

お父さんの声は聞こえるが、顔が自然に前の車輪の地面を見てしまう。急に僕がグラグラして転んでしまった。お父さんが手を離したのだ。
男の子は血のにじんだ膝を見ながら泣くのを我慢してい
る。
『少し乗れるようになってきたから、もう少しだよ。』
お父さんが励ましているが、男の子は膝が痛くて仕方がない。

『男だろっ、頑張れ。』
男の子は「僕は男でなくてもいい。」と思った。

火星ネズミ(3)

2021-01-21 09:51:56 | 童話
僕はすごい衝撃を受けて体が床に押しつけられた。三人の宇宙飛行士も座席に押し付けられていた。
しばらくして押し付けられる力が弱くなり、立てるようになった。
そのあと、こんどは体が浮かび上がった。

今迄隠れていたが、空中に浮かんだので3人に見つかってしまった。
僕は仕方なくみんなに挨拶をした。
『僕も宇宙飛行士になりたかったのです。みんなに迷惑をかけないので火星に連れて行ってください。僕の食べる物とお水は持っていますし、オシッコやウンチを貯めて押し固める袋も持っています。』
三人の宇宙飛行士は相談した。『今この宇宙船から外へ出したらハツカネズミは死んでしまう。食べ物もお水も持っているし、ハツカネズミは体が小さいので酸素もあまり使わないので連れて行こうか。』
僕は大喜びをして、
『みんなの訓練の様子はずっと見ていましたので、この宇宙船のことは大体分かりますので、僕を宇宙飛行士として手伝わせてください。』
『よしっ、分かった。君には機械の操作はできないが計器の見張りをやってもらうよ。
空気の圧力や炭酸ガス濃度、それと電気の状態を毎日記録するんだ。
いいかい、君は宇宙飛行士なんだから。』

僕はすごく嬉しかった。
『よしっ、頑張るぞ。』
こうして、僕は宇宙飛行士となり、3人の宇宙飛行士と一緒に、今も火星に向けて飛行している。みんなとミッションを成功させて帰ってくるように頑張っている。
 
   おしまい