火星ネズミ(2)

2021-01-20 10:51:23 | 童話
それから僕は、みんなが宇宙の勉強をしている教室に入って行き、テーブルの隙間から勉強の様子を見ていた。

そうか、地球の空気が無い宇宙では、宇宙に飛んでいる宇宙線や、太陽からの太陽風が直接当たるので体を悪くするのか。宇宙船はその影響を少なくするようになっているが、太陽の爆発が大きくなった時は、それでも防げない場合が予想されるので、その時は安全な宇宙服を着るんだ。勉強は大切なんだね。

そうすると僕も宇宙服を作らないていけないね。だけれど、僕は機械が使えないので宇宙服が作る事ができない、どうしようか?
そうだ、倉庫に有る宇宙服用の布地を少しもらってきて、ロケットに乗り込む時に持って行こう。もし宇宙で危険になった時に、宇宙服用の布地にくるまっていればいいや。
そして僕は倉庫に行った時に、実験に使った宇宙服用の布地を僕の住家に持ってきた。その時に、宇宙食とお水、それとオシッコとウンチを貯めて押し固めておく袋も一緒に持ってきた。宇宙飛行士として、人間に迷惑をかけないようにするためだ。

そして、人間の訓練が順調に進み、僕の訓練も進んだ。
今回のロケットの行先は火星であり、永い宇宙旅行による。
そして訓練が終り、十名の宇宙飛行士から今回乗り込む三名が決定した。
発射の一ヶ月前となり念入りの最終チェックが続いた。僕もロケットに乗り込む物の最終チェックをした。
機体の確認ができたのでロケットに荷物が積み込まれたが、その時に僕が荷物を持って、そっと乗り込んだ。成功だ、僕は宇宙飛行士になれるのだ。

いよいよ、ロケットに燃料が入れられて、発射の秒読みが始まった。
僕は足を踏ん張って、発射の時に体にかかる重力のGに耐えられるようにした。
大きな声のカウントダウンのアナウンスがあった。十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、発射。

火星ネズミ(1)

2021-01-19 17:03:26 | 童話
僕はハツカネズミ、僕の仲間には宇宙環境の実験のために、小さなオリに入れられて宇宙へ行ったネズミも居る。
だけれど、僕は宇宙飛行士として宇宙に行きたいと思っている。

日本の宇宙飛行士10人は、ロケットの発射による重量に耐える訓練や宇宙船の操縦、そしてロボットアームの操作の訓練を毎日行なっていた。
1日の訓練が終ると疲れて、宿舎に帰って食事をしてお風呂に入ったら、すぐ寝てしまうのだ。

ハツカネズミの僕はみんなが寝ている間に訓練の装置を見て回った。
僕は機械の操作はできないが、全部見ておけば人間が実際に訓練している様子が良く分かる。
昼間は見つかってしまうので夜の間の探検だ。

僕の一番のお気に入りは操縦室だ。コンピュータ画面や計器がいっぱい並んでいる。まだ全然分からないが、打上げまであと一年くらいかかるのではないかと思うので、その頃までには全て分かる予定だ。

『訓練開始!』教官の大きな声が響いた。
僕は訓練装置の隙間から訓練の様子を見ている。
『ふぅ~ん、そうなんだ。ハッチを閉めるのは、そのボタンで、船内の気圧は、あのメーターで、炭酸ガス濃度は、こっちのメーターなのか。』
計器類の確認が終わったら『Gをかけます。』とのアナウンスがあり、徐々に僕の体が重くなってきて、ついに体が床に張り付いて動けなくなった。
『そうか、ロケットが打上げられる時に体にかかる重力なんだ。』
しばらくしてやっと歩けるようになった。
『ふぅ、大変なんだね。』

それからみんなは、いろいろな計器が異状を示した時に、原因を調べて修理する訓練をやっていた。『ふぅ~ん、予備の装置がいっぱい付いているんだ。誰もいない宇宙に何年も飛んで行くから、全部自分達で直さなければならないから大変なんだね。』
何日か見ている間にいろいろ分かってきだした。

夢の向こう(3)

2021-01-18 09:18:36 | 童話
それからしばらくは、高い空の上を走っているモノレールに乗っている夢や、幅が広くて、高く大きなエスカレーターで駅から滑って降りてくる夢はみなかった。

ある日、僕はすごく高い空の上を走っているモノレールに乗る駅にいた。切符を買って待っていると赤い色のモノレールが着いたので、みんなと一緒にモノレールに乗った。
モノレールは速いスピードで、前に乗った時と同じ高い空を走って行き、モノレールの駅から幅が広くて、高く大きなエスカレーターでみんなと一緒に滑って降り始めましたが、僕だけ途中で別のエスカレーターに乗り換えた。

僕が乗ったエスカレーターが着いた所に学校があった。
教室の中を見ると先生が
『これから勉強を始めますので、みんな寝てください。』
と言って、生徒も先生も寝てしまった。寝ながら勉強をしているのだった。

チャイムがなると、先生が
『勉強が終りましたので起きて帰りましよう。』
と言ったので、生徒がみんな帰ってしまった。

よく見ると、学校の横に僕の家が有った。僕がドアを開けて家に入るとお母さんが『
あらっ、おかえり。寝ながら宿題をやりなさい。』
と言った。寝るのと起きているのが反対なのだと気が付いた。

そして、僕は寝ながら歩いてエスカレーターを乗り換えた所に来たので、夢の出口へ行くエスカレーターに乗り換えた。
『早く起きないと学校に遅れるわよ。』
とお母さんに起こされた。

僕は夢の向うより、夢の中の方が良いなぁと思ったので、今は夢の向うの探検はしていない。君達は夢の向うの探検で何か見つけたら教えてほしいなぁ。

      おしまい

夢の向こう(2)

2021-01-17 10:11:06 | 童話
またしばらくして、夢の中で友達が向うから歩いて来たので
『夢の向うから帰って来たの?』
と聞いたら
『そうだよ。』
と言ったので、僕は
『夢の向うへ探検に行ってくるよ。』
と言うと、友達は
『うん。』
と言って夢の出口から出て行ってしまった。

僕は一人で、前の探検の時よりもずっと遠くまで夢の中を歩いて行った。
ずっと歩いて行くと遠くに家が見えてきた。
もっと歩いてその家に着くと、家の中から、僕のお父さんとお母さんが出てきて
『おかえり。』
と言った。僕は
『ただいま。だけど、ここは夢の中なの? それとも夢の向うなの?』
と聞くと、お母さんが
『ここは、夢の中よ。夢の向うは、ここからモノレールに乗っていくの。』
と言った。

僕はすごく高い空の上を走っているモノレールに乗って、大きな駅に着いた。それから、幅が広くて、高く大きなエスカレーターで、みんなと一緒に駅から滑って降りた。
『早く起きないと学校に遅れるわよ。』
僕はお母さんに起こされた。大きなエスカレーターは、みんなが学校や会社へ行かないといけないので、みんな夢の出口へ向って行っていたのだ。

僕が大きなエスカレーターに乗っている時に、もう一つのエスカレーターが動いているのが見えた。
そうか、途中で、もう一つのエスカレーターに乗り換えれば、夢の向うに行けたのではないかと思った。
今度、すごく高い空の上を走っているモノレールに乗って、幅が広くて、高く大きなエスカレーターに乗ったら、僕だけエスカレーターを乗り換えようと考えた。

夢の向こう(1)

2021-01-16 11:34:40 | 童話
君達はどんな夢をみるのかなぁ?
僕はね、前にみた夢と同じ場所で迷子になる夢をみることがあるよ。
それとね、パラグライダーで高い空を飛んでいる夢や、すごく高い空の上を走っているモノレールに乗っている夢や、幅が広くて、高く大きなエスカレーターで、みんなが駅から滑って降りてくる夢をみたこともあるよ。

夢って、ふしぎだよね。  君達はどんな夢をみるのかなぁ。

僕はある日、友達が向うから歩いてやって来る夢をみたんだ。
その友達は
『僕は夢の向うから帰って来たんだよ。』
と言って、夢の出口から出て行ってしまった。

次の日、その夢の話をしたが、友達は
『そんな夢はみなかったよ。』
と言った。
僕はもう一度、夢の中でその友達に夢の向うのことを聞いてみることにした。

しばらくして、また夢の中で友達が向うから歩いて来たので
『夢の向うから帰って来たの?』
と聞いたら
『そうだよ。』
と言って、夢の出口から出て行ってしまった。
その友達に、夢の向うのことを聞く前に、その友達は夢から出て行ってしまったので、僕は自分で夢の向うを探検することにした。

そして、夢の中を歩いて行ったけれど、いつまで歩いて行っても、夢は続いていて、夢の向うには行けなかった。そして、朝になって目がさめた。
『残念だなぁ、夢の向うは、まだ遠いのかなぁ?』