植村さんは、朝日新聞が虚偽であることを認め、関連する18本の記事を取り消した「吉田証言」に関する記事は、1本も書いていない。それどころか、ソウル特派員だった97年に吉田証言についての現地調査を行い、「人狩りのような行為があったとの証言は出てこなかった」というメモを本社に提出している。
植村さんが書いた「慰安婦」関連の記事は、次の2本。
(1)91年8月11日付「思い出すと今も涙 元朝鮮人慰安婦 韓国の団体聞き取り」
(2)91年12月25日付「かえらぬ青春 恨の人生 日本政府を提訴した元従軍慰安婦・金学順さん」
(1)は、前年の取材活動を記憶していたソウル支局長の提案で、挺対協が録音した金学順ハルモニの証言テープを聞いて書いた記事だ。ここで植村さんは、金学順ハルモニが「だまされて慰安婦にされた」と書いており、「強制連行」という文言は使っていない。また、植村さんのこの記事は韓国の新聞に転電(他紙の記事を引用して記事化すること)されていない。
この植村さんの取材活動について、「SAPIO」誌上での座談会で保守系ジャーナリストが「ソウル支局がスクープを取ったのに、それを大阪社会部が記事化するのはおかしい」と、いかにも意図的なものがあったかのように発言しているが、当時の朝日新聞ソウル支局は、ドイツ統一後の南北高位級会談、国連同時加盟問題の取材で非常に多忙を極めていた。前年に韓国取材経験があり、韓国語も堪能な植村さんが応援隊に選ばれたことは、当然の人選だった。
記事中にある「女子挺身隊」という名称は、金学順ハルモニ自身がそのように名乗り、当時は「慰安婦=挺身隊」という理解が一般的で、朝日以外の言論もこの用語を使用している。
(2)の記事では、読売新聞が「朝日記事の検証」(14.8.29)で、金学順ハルモニが妓生(キーセン)学校に通っていた事実を書かなかったことを問題視している。しかし、これについては、朝日以外の各紙も同様に記事化していない。妓生は「売春婦」とは違うし、その学校に通ったから「慰安婦」になったわけではない。このことを記事化しなかった植村さんの判断は正しい。
妓生学校に通っていたことが「慰安婦」になることに何らかの影響を及ぼしたと考えるのは、かつて「キーセン観光」で韓国人女性の性を搾取した日本人男性の植民者的発想が清算されていないからだろう。読売新聞は、朝日や植村さんを批判する前にまず、己の性差別意識と植民意識を自己批判すべきだ。
植村さんが書いた「慰安婦」関連の記事は、きちんとした取材に基づいた極めて穏当なものだ。その本数も少ない。植村さんが、日本が「慰安婦」を強制連行したと「捏造」報道して韓国の反日感情をかき立てたという話は、まったく事実に反する。
そんな植村さんが、なぜバッシングの対象となったのか?
それはやはり、植村さんが朝日新聞の記者であり、夫人が韓国人、それも戦後補償を求める運動団体の関係者であったという事実からだろう。
朝日新聞の歴史認識・リベラリズムに対する嫌悪。これは1987年5月3日、朝日新聞阪神支局が襲撃されて小尻知博記者が殺害された事件を彷彿させる。
また、個人の出自を攻撃対象にして、事実無根のデマを流して誹謗中傷することも、ナチスのユダヤ人排斥や、昨今のヘイトスピーチに通じるものがある。
朝日と植村さんに対するバッシングは、もはや「言論」ではない。
彼らは、「慰安婦」問題をなかったことにするために、嘘とデマで固めた攻撃を加えている。
「国益」「名誉」「尊厳」「国賊」といった言葉に、「人権」が踏みにじられようとしている。
民主主義を守ろう。
歴史修正主義・ファシズムとの闘いに立ち上がろう。
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