http://dot.asahi.com/aera/2015082400032.html
「I say憲法、you say守れ」立ち上がる若者 武器はクールな抗議
2015/8/24
ステージの学生がスマホに書かれたメモを手にスピーチすると、会場は共感の歓声と拍手に包まれる。SEALDsは東京にとどまらず、関西、東北、沖縄などの学生も呼応し、地方組織が生まれている(撮影/写真部・加藤夏子)
記事「「I say憲法、you say守れ」立ち上がる若者 武器はクールな抗議」より
毎週金曜日、午後7時30分、国会議事堂正門前。この夏、ここで、日本の新しい民主主義が生まれた。その熱源が、SEALDsと名乗る学生たち。彼らは安保法案に反対し、安倍政権の退陣を求めている。クールな抗議が、彼らの武器だ。
「安保法案、絶対反対」「戦争法案、絶対反対」
ドラムやタンブリンのリズムに乗り、まっすぐなメッセージが昼の熱気をはらむ夜空に響く。
「国民なめんな」「勝手に決めんな」
ミカン箱をひっくり返して作った簡易ステージに立つメンバーがリードするコールに、数千人が応える。
「I say“憲法”、you say“守れ”」「憲法」「守れ」
そしてこれが、彼らが立ち上がる理由だ。
「Tell me what democracylooks like(民主主義って何だ)」「This is what democracy looks like(民主主義はこれだ)」
6月に始まった抗議に参加したのは800人。それが8月14日には8千人(いずれもSEALDs発表)になった。この間、安保法案は強行採決の末に衆院を通過。それにもかかわらず、抗議のうねりは衰えない。
SEALDsの学生メンバーはLINEでつながった200人ほど。毎週の抗議に押し寄せるのは、SNSで拡散された彼らのメッセージに共感し、報道されるその姿勢に動かされた人たちだ。年代も背景もさまざまな参加者が、コール・アンド・レスポンスで一つになる。彼らの抗議は、牧歌的にシュプレヒコールを繰り返す既存のデモのスタイルとは違う。
「響くっていうか、いい感じに伝わる、そういうコールの言葉、探しているんですよね」
そう話すのは、明治学院大学4年の奥田愛基(あき)(23)。SEALDsのフロントマンと呼べる存在で、抗議では常に先頭に立ってきた。コールに盛り込むメッセージだけではなく、フライヤーやプラカードのデザイン、一つひとつにこだわってつくり上げたのが、SEALDsの活動だという。意識したのは、自分たちがカッコいいと思える感覚。
明治学院大学4年
奥田愛基さん(23)
「特定秘密保護法に反対するとき、日本の大学生で俺らが一番この法律に詳しくなろうって話し合った。ロジカルに、でも『これ嫌だ』って感情があってもいいよねって」(撮影/写真部・加藤夏子)
記事「「I say憲法、you say守れ」立ち上がる若者 武器はクールな抗議」より
「僕らって、普段から服屋に行って、音楽を聞いて、あれカッコいいとか、ダサイとか言うわけじゃないですか。でも社会運動だけは聖域で、ダサくてもしょうがないってのはおかしい」
10代、20代が持つデフォルトの感性を形にしたのが、SEALDsだ。
2013年12月、特定秘密保護法案が参院特別委で可決されたとき、民放のニュースキャスターが「民主主義が今日終わりました」と言った。奥田はそれをツイッターで知った。SASPL(サスプル)というSEALDsの前身で、同法の廃止を目指して活動していたからこそ、この言葉は忘れられない。
「でも考えてみたら、僕らが生まれてからずっと終わりっぱなしだったなって。バブルが崩壊して日本経済が終わったとか、失われた10年がいつの間にか20年になって、オウムの事件とか、リーマン・ショックとか。で13年になって、民主主義が終わりましたとか言って。また終わんの、みたいな」
奥田が高校を卒業する春、東日本大震災があった。「なんだこれ、本当に現実か」。新生活を前にした浮かれ気分は吹き飛んだ。震災から10日後には、仙台市へ。一日10時間、トラックの助手席で揺られ、救援物資を運んでは降ろした。
「震災が起きたときも、日本が終わったって言ってる人がいた。それでも、ボランティアをするとか、脱原発デモとか、何かを始めようという人がいっぱいいたんスよ。みんな終わったって言うけど、始める人があまりにも少なかったんじゃないのかって思う。終わったなら始めればいい。何回でも始めればいい」
※AERA 2015年8月31日号より抜粋