九州最南端の佐多岬から南南西へ60km
下がった所にある、サンゴ礁の海にぽっかりと浮かぶ丸い島が屋久島だ。
屋久島は日本で7番目に大きな島だが、その大きさは東京23区の面積と変わらない。
しかし、この島には人々を引き寄せる自然のパワーが充満している。
その一つが樹齢7000年以上と言われる縄文杉だ。
今でこそ、その姿を一目拝もうと多くの人々が訪れるが、1966(昭和41)年に発見されるまで縄文杉は深い森の中で、何千年にも渡ってひっそりと樹齢を刻んでいたのだ。
もちろん縄文杉だけではない。
島の中心部の殆どを占める山々は九州地方の最高峰で、濃密に苔むした森は深く静かで、気軽に人間が立ち入る事が出来ない雰囲気がある。
それは屋久島が「一ヶ月に35日雨が降る」と言われる程に雨の多い場所だからでもある。
特に島の中心部の殆どを占める山の天気は変わりやすく、雨が降るとすぐに行く手を阻まれる。
豪雨で道が壊れてしまう事さえあるのだ。
そんな屋久島の山は島民にとって、昔から霊山であり、杉はご神木だった。
その為に映画『もののけ姫』の風景が見られる場所として、多くの観光客が訪れる白谷雲水峡でさえ、奥に進むと地図には「歩道」と書かれていても実際は道なき道同然となる。
目印として木の枝にリボンが付けられていなければ、自分のいる場所をすぐに見失ってしまうだろう。
圧倒的な自然で人間に憧れを抱かせながら、人間をオープンに受け入れてくれない屋久島は、本当に自然の精霊の棲む島なのかも知れない。