日本の最高峰と言えば、ご存じ富士山である。
国内随一のパワースポットだけに、周囲にはミステリアスな名所が点在しているが、とりわけ独特な存在感を放っているのが「人穴(ひとあな)」だ。
場所は、富士山麓の富士宮市に位置する人穴浅間神社の境内である。
その正体は長さ83mほどの溶岩洞穴で、穴の先は異界なのではと思わせる様な雰囲気を漂わせている。
古くから「地獄の入口」などと恐れられていたが、一方で穴の先は神奈川県の江の島に繋がっているという都市伝説もある。
穴そのものは古くから有った様で、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡(あずまかがみ)』には、探索を命じられた武士が家来を引き連れて人穴に入ったが、家来4人が謎の死を遂げ、みずからも命からがら逃げ出したという話が載っている。
しかし、この洞穴はのちに江戸時代に流行した「冨士講」の聖地となるのだ。
冨士講は、山岳信仰における富士信仰の集団組織の一つで人穴で修行を行ったという角行(かくぎょう)なる行者が開祖だ。
信者は富士登山で富士山を参拝し、その前後に人穴を参拝して巡礼する。
冨士講そのものはその後廃(すた)れたが、人穴は今でも出入りでき、地元では知る人ぞ知る心霊スポットになってしまった。
鳥居をくぐると呪われる、人穴に入ると気がふれる…などの噂は数知れない。
しかし実際には洞穴の中には入れば、暗闇の中で安置される祠や石仏の姿に、ここが侵す事の出来ない聖地だった事が窺えるのである。