伊豆七島に数えられる神津島は、東京から南へ180km下がった所にある小さな島である。
民話によれば、伊豆諸島を創った神々の集会場所であった事から、その名が付いたという。
だが、この島に居るのは幸福をもたらす神ばかりではない様で、中には招かれざる神もいる。
それが「二十五日様」と呼ばれる神様だ。
この神が来る旧歴の1月24日の前後に島民は、仕事を休み外出を控えるのがならわしである。
雨戸を閉め早々に就眠し、間違っても夜中に外を出歩いたりしない。
何故なら、二十五日様の姿を見た者には災いがもたらされるという伝承があるからだ。
日が暮れると、神社の神職らが二十五日様を迎えに港へ出る。
そして村のあちこちをお参りして廻る。
万が一にも途中で出会ってしまった場合は、もう一度その儀式を最初から始めなければならないのである。
この二十五日様の風習が、いつから始まったものかは定かではないが、一説には伊豆諸島に伝わる伝説が、起源だとされている。
昔に厳しい年貢の取り立てにやって来た代官を、25人の若者達が殺してしまった。
若者らは船で逃げたが、代官の霊が追いかけてきた。
祟りを恐れた島民が手を差し伸べる事もなく、25人は遭難死した。
二十五日様はこの25人の亡霊だとされている。
過去には迷信だと切り捨て、しきたりを守らなかった島民もいた。
だが、その身には必ず災難が降りかかったという。