栃木県の日光は今や観光地化されすぎていて、聖地というイメージは薄いかも知れない。
しかし、ここは1200年以上も前の奈良時代から山岳信仰の場だった。
その中心となっていたのが、標高2486mの男体山(なんたいざん)だ。
日光山内にある二荒山(ふたらさん)神社のご神体とされている山である。
ここを開山したのは、勝道上人という僧だと伝えられている。
山は非常に厳しく、三度目の挑戦でようやく頂上までたどり着けたという。
その時山頂に建てた祠が、二荒山神社の奥宮である。
頂上では古代の祭祀跡や遺物も発見されており、数多くの修行者が男体山を目指した事がわかる。
現在では片道三時間半の登山ルートが作られているものの、そこには決して破ってはいけない決まりが定められている。
男体山に登る事ができるのは、5月5日~10月25日までの半年足らず。
それ以外の時期は登拝門は閉められて、山への立ち入りが禁じられている。
真冬の山頂は激しい吹雪が吹き荒れるのだという。
ただし、登拝祭が行われる7月31日~8月7日の一週間だけは、夜の男体山に登るという珍しい経験ができる。
この祭りは、三人の神様を背負って奥宮へ帰すという意味があるそうだ。
本殿にお参りを済ませた人たちは、午前0時から一斉に山に登り始める。
そして、夜が明ける頃に山頂にたどり着き、ご来光を拝むわけだ。
この山道はかなりきついが、祭りの初日には千人を越す人が参加するらしい。
それだけ男体山が篤く信仰されているという事だろう。