アイヌ語で「シリエトク」という北の果てを意味する知床は、2005(平成5)年に世界文化遺産として登録された、多くの見所が有るが、中でも人気のスポットが知床五湖である。
知床五湖は知床連山の一つである硫黄岳の一部が崩壊し、そこから崩れ落ちた岩石のたまり場に水が溜まって出来たものだと言われている。
周囲から流れ込む川もなく、一年中豊富な湧き水で満たされ、夏の時期でも水温は低いので絶好の避暑地でもある。
知床が世界遺産に登録された事で、知床五湖への観光客も増えた。
しかし、同時に危険な事態を招く事となってしまった。
ヒグマとの異常接近である。
1995(平成7)年以降、観光客が行き来する遊歩道周辺でも頻繁にその姿が目撃される様になった。
人間が食べ歩きなどをする事で、ヒグマの行動範囲が変化してしまったのだ。
現在では生態系を守り、事故を防ぐ為に、入場規制が設けられている。
特にヒグマの活動期となる5月から7月は、登録ガイドが同行するガイドツアーでしか散策出来ない。
また、湖畔の展望台へと延びる高架木道にもヒグマ対策がとられている。
木道脇には電線が張られ、7000Vの電流が流れていて、ヒグマが侵入する事が出来ない。
もともと、知床は世界的なヒグマの生息地だった。
異常接近が起こる様になったのは、観光目的で侵入した人間側の都合に他ならない。
大自然のパワーを感じる為に訪れた場所で、電流柵を使って動物を追い払う。
何とも皮肉な話ではないだろうか。