おもしろき ー熊本、鹿児島、宮崎で過ごした日々🌟🌟🌟

おもしろきことのなき世をおもしろく!Carpe Diem. 人間万事塞翁が馬。人生いろいろあるから、おもしろい!

Something 六話

2013年02月06日 01時07分36秒 | 僕が書いた小説

二人は大きく深呼吸し、勇気を持って、うめき声のほうへ歩く決心をした。
恐ろしいけれど、一歩ずつ一歩ずつ、地面を踏みしめながら進んでいく。
しばらく進むと、うっすらと人影が見える。
懐中電灯で照らすと二人は想像以上の女の姿に体が動けなくなった。
髪の毛は半分ほど抜け落ち、顔は原形をとどめず、目は見えないようで、皮膚は紫がかっていた。
左足首を鉄の鎖で繋がれていて、この世の地獄を見るようであった。
二人は勇気をふりしぼり女に近づいた。
何か話かけようとするが、この地獄の有り様に声がでない。
するとその時、女はうめくのを止め、見えない目でこっちを見て、微笑んだ。
二人の目から涙がこぼれた。こんな苦しみを背負いながら、微笑むことができる人などいるだろうか?
そして、女はか細いかすれた声で語り始めた。
二人は何も言わず、女に耳を傾けた。
「ジョンとポールですね。悪魔を倒してくれたようですね。わたしはそれだけでもう救われました。わたしの命はもうすぐ尽きます。このままこの洞窟を下れば三時間ほどで下の道に繋がります。ここに長いこといると、このとんでもない病気がうつり、とりかえしのつかないことになるでしょう。さあ、行ってください。わたしはあなたたちのおかげで救われたのです。それと、お腹がすいてるでしょう。
そこにあるパンと葡萄酒を飲んでいってください。永遠に腐らないものですから、大丈夫ですよ。ほんとありがとう。」
そう言うと、女は気を失ってしまった。
二人の気持ちは決まっていた。どうしてこんな心の持ち主をこんなとこに置いていけようか。
たとえ女が助からなくとも、自分たちが途中で息絶えようとも、この人を助けねばならない。
二人はパンを手にとり、葡萄酒で自分たちの運命に乾杯した。
パンを食べ、葡萄酒を飲みほすと、久々に腹が満たされたせいか、そのまま眠りに落ちてしまった。

二人はまた同じ夢を見ている。
そう二人は12使徒としてまさに最後の晩餐に参加している。
キリストがいう。
「12のうちの1人が私を裏切るだろう。私はそして明日処刑されるだろう。
ユダ、なすべきことをやりなさい。」
ジョン(ヨハネ)とポール(パウロ)はキリストの発言に驚き、どうしてよいかわからない。
二人を見て、キリストがいう。
「Somethingは見つかったかね。その表情ではまだみたいだね。ユダは悪魔の誘惑に負けてしまって、私は明日死ぬことになるけど、心配はない。2000年くらいして、お前たちの生まれ変わりが悪魔を滅ぼし、Somethingを見つけるだろう。その時も私の生まれ変わりも死に瀕しているだろう。」
そういうと何ともいえない微笑みをキリストは見せたのである。
二人はその微笑みに涙し、パンと葡萄酒を口に入れた。
とてつもない眠気に襲われ、眠ってしまった。
目が覚めると、洞窟の中にいる。夢と現実が交差する。
目の前に女が倒れている。ジョンとポールは現実に戻り、まずは女の足の鎖をはずすことから始めることにした。
リュックからカナズチをとりだし、二人で交互に叩くもびくともしない。
鎖の根元から壊すしかない。そう思い、鎖の根元の岩を二人で交互に叩いた。手のひらから血が滴り落ちた。そして4444回目でついに岩を砕き、女は自由の身となった。
喜びが込み上げ、二人で雄叫びをあげると女は目を覚ました。
「あなたたちのことを軽く見ていました。
これも運命かもしれません。あなたたちには3つの選択肢があります。
1つ目はこのまま山を降りることです。ここまでやったのです。十分です。
2つ目は私を連れて山を降りることです。あなたたちに病が伝染し、生涯治らないでしょう。
3つ目は私を祠まで連れていくことです。私はそこで元気を取り戻すでしょう。でも…あなた方は死にます。」
ジョンはポールに言った。「死ぬのも悪くはないですな。」ポールが笑って言った。「それもまた粋ですな。」二人は大きく笑った。
続く…

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ビバリー