二人は交互に女を背負っていくことにした。
二人の体はすでに限界を超えていた。
一時間歩いては一時間休みながら、洞窟を登っていく
半日、登っただろうか?
ついに二人の体に異変が見え始めた。
高熱の上に体に黒い斑点が見え始めた。
病魔が二人の気力と体力を奪ってゆく。
ついに倒れて、動けなくなった。
二人の死が近づいているのを感じる。
女は自分のせいで二人がこうなってしまい、ただ涙を流している。
もうなすすべはないのだろうか?
ポールが死を覚悟したまさにその時、頭の中にある呪文が浮かんだ。
そしてジョンに向かってその呪文を唱えた。「SELFYSACRIFITUS」
ジョンの気力がみるみる回復してゆく。
ポールはジョンに最後の言葉を告げた。
「先にあの世に行っときます。究極呪文を唱えたから、もうだめみたいです。ジョン、きみはあと10日間は体がもちます。でもちょうど今から10日後に完全に死ぬことになるでしょう。あとはよろしくお願いします。いい人生でした。」
そう言うと、微笑み、そのまま動かなくなった。天に召されたのだ。
ジョンは涙を流さず、自分の使命を果たすことを決意した。
そして女を左肩にポールを右肩に背負い、一心不乱に歩き始めた。
足は血だらけで、心臓はもはや動いていなかった。
痛みも感じず、目もほとんど見えなくなってしまった。それでも、気力だけで登っていく。
もうここまでくれば理由なんかいらない。
何も考えずともよい。ただ上にたどり着けばよい。
そして10日の間、休まず、何も食べず、ただ歩き続けた。
女が生きているかもわからない。
ジョンの五感は全て失われてしまった。
ただ光だけを感じることができたのだ。
頂上に着いたのだ。無情の喜びがジョンの心の中で込み上げるのと同時にジョンは天に召されていった。
女は虫の息で祠の方へ這っていく。
本来彼女が持っているものが祠に封印されていた。
祠は悪魔がその女の所有物を封印するために建てたものであった。
悪魔が消滅した今、その封印も解けようとしていた。
祠の近くにいた人々は女の物凄い姿に、悲鳴をあげ、一目散に逃げてゆく。
彼らと悪魔にどれほどの差があるだろうか。
それに比べ、ジョンとポールは…
そんなことを考えながら、女はやっとのことで祠にたどり着いた。
そして祠の中に箱を見つけた。
悪魔のシールは燃え尽きていた。
箱は簡単に開いた。
久方ぶりに彼女が本来持っているものが彼女の元に戻るのだ。
彼女は箱の中のものにそっと手を伸ばした。
続く…
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