おもしろき ー熊本、鹿児島、宮崎で過ごした日々🌟🌟🌟

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Something 八話

2013年02月08日 11時34分33秒 | 僕が書いた小説

女が手にしたものは天女の羽衣であった。
女が羽衣をまとうと瞬く間に病気が回復し、美しい天女になった。

天女は4000年前、人間たちが悪魔の囁きで堕落してゆく姿を見かね、天から降りてきた。
そして、Somethingを創造し、幸せになれるSomethingが世に存在する噂を流した。
Somethingを手に入れることのできる人間だけが悪魔を倒すことができる。

そしてこの山に住むことにした。
悪魔は天女の存在に気づき、天女の存在を恐れた。

悪魔は天女の様子をずっとうかがいながら、天女に永遠の命をもたらす羽衣を奪うチャンスを待っていた。天女が水浴びをしている隙に悪魔はそっと羽衣を盗んだ。
天女は悲しみのあまり涙を7日の間流し続け、ある決心をした。
悪魔に存在が見つからないように輪廻を繰り返し、Somethingを手に入れることのできる人間を探そう。
4000の後、元の姿に戻るが、その時に羽衣が手元に戻らなければ、天の裁きを受けおぞましい病気にかかるだろう。その時、本当の死を迎えるだろう。
それでも、人間を信じ、いつか悪魔を滅ぼし、羽衣が自分の手に戻ると信じることにしよう。
そう思うと、天女は消えてしまった。
いろんな人物に生まれた。ある時はキリストで、ある時はガンジーであったり、マザーテレサでもあった。いつも人々の善い心の支えとなるべき存在であった。
悪魔は羽衣を奪うと地獄の炎で焼き払おうとした。
天の糸で編まれた羽衣は傷一つ作ることができなかった。
悪魔は祠をつくり、箱の中に羽衣を入れた。そして自分が生きている限り箱が開かないように封印した。

そしてこの山に人々が近づけぬように、大蛇を飼い、道を険しいものにした。
この山に近づくものなどいなくなり、羽衣のことも遠い昔の話になった。

百年に一度くらいの割合で、山に登ろうとする人々がいたが、全て、悪魔が誘惑し、頂上にたどり着くものはいなかった。

ところが最近になり、Somethingが山の頂上にあるという噂が流れ始め、たくさんの人々が山の頂上を目指し始めた。
悪魔は天女が本来の姿に戻り、羽衣をとりかえすためにこの噂を流したことに気づき、策を練った。
そして天女が山の頂上を目指すのを待った。
険しい道以外に、大きく誰もが登れる道を作り、関所を作った。関所を天女は通るまい。
そしてお金を払って平坦な道を選ぶ人間は恐ろしくはないと思い、険しい道をいつも見張っていた。
特に一目につかない洞窟から天女は上を目指すことは明らかだった。
そして、洞窟の中で、捕まるべくして天女は捕まって、鎖に繋がれた。
天の裁きが彼女を待っていた。日に日に病気は進行し、天女とはほど遠い、見た目は悪魔のような醜い姿になってしまったのである。
続く…

 

天使と悪魔(上中下合本版) (角川文庫)
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