裏庭
ひとときのなかに永遠をみていた子どもが
かつてここにあったと
わたしがどうして思い出せよう
雨多い夏の終わりに
雲間から光はふらず
果てない荒れ野を夢みながら
わたしは庭にいる
そこはわたしの育った家だ
石の垣にかこまれたみどり深い家だ
わたしの庭に鳥は飛ばない ただどくだみの花が咲く
赤く錆びた氏神のほこらの屋根に 黒い揚羽がくる
わたしのけやきは枯れてしまった
ひいらぎも枯れてしまった
庭は小さく明るくせまい
わたしはとてもさびしい
わたしの足ふみおろすところに
どくだみの白く開いて
寂しい わたしの母たちの骨を
ふくよかにおおいつくして
赤い晴れ着をつけた子どもが
石段をのぼってくる
年よりに手を引かれて
かつて多くをみていた目が
じっとわたしをみる
(おばあさん おばあさん)
(わたしは七つのお祝いに)
(おふだをおさめにまいります)
そうかい ゆっくりいっておいで
帰りは怖いだろうから
だけど ねえ おまえは七つじゃないだろう
春に学校へあがったなら
七つになるにはまだ少し
少し早くはないかい
晴れ着の子どもは首をかしげる
百とせを生きた仕草で
そしてかなしくわたしをみる
千とせにつかれたように
荒れ野へふみだすおまえのあゆみを
わたしはとどめられない
おまえの幼く無慈悲な足が
かろがろと草を踏むたび
黒い揚羽が舞い出しては
わたしをかすめてゆく
おまえの足ふみおろすところに
どくだみの白く開いて
さびしいわたしの母たちの骨を
ふくよかにおおいつくして
ひとときのなかに永遠をみていた子どもが
かつてここにあったと
わたしがどうして思い出せよう
雨多い夏の終わりに
雲間から光はふらず
果てない荒れ野を夢みながら
わたしは庭にいる
そこはわたしの育った家だ
石の垣にかこまれたみどり深い家だ
わたしの庭に鳥は飛ばない ただどくだみの花が咲く
赤く錆びた氏神のほこらの屋根に 黒い揚羽がくる
わたしのけやきは枯れてしまった
ひいらぎも枯れてしまった
庭は小さく明るくせまい
わたしはとてもさびしい
わたしの足ふみおろすところに
どくだみの白く開いて
寂しい わたしの母たちの骨を
ふくよかにおおいつくして
赤い晴れ着をつけた子どもが
石段をのぼってくる
年よりに手を引かれて
かつて多くをみていた目が
じっとわたしをみる
(おばあさん おばあさん)
(わたしは七つのお祝いに)
(おふだをおさめにまいります)
そうかい ゆっくりいっておいで
帰りは怖いだろうから
だけど ねえ おまえは七つじゃないだろう
春に学校へあがったなら
七つになるにはまだ少し
少し早くはないかい
晴れ着の子どもは首をかしげる
百とせを生きた仕草で
そしてかなしくわたしをみる
千とせにつかれたように
荒れ野へふみだすおまえのあゆみを
わたしはとどめられない
おまえの幼く無慈悲な足が
かろがろと草を踏むたび
黒い揚羽が舞い出しては
わたしをかすめてゆく
おまえの足ふみおろすところに
どくだみの白く開いて
さびしいわたしの母たちの骨を
ふくよかにおおいつくして
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