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「リア王」 舞台内容 四幕三場

2010-04-21 11:55:46 | 「リア王」

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 ドーバー付近のフランス軍陣営、ケントと紳士が登場する。
二人の会話により、フランス王は、イングランドに上陸後、直ぐに本国へ引き返してしまったことが分かる。


 何か重大な事件が起こったとのことだが、それが何なのかは、作中で語られることはない。
フランス王の変わりにルファー将軍が軍の指揮を取ることになる。
 実際は、シェークスピアは、ここにフランス王がいては、まずいと考えたのだろうと思われる。

 フランス王が去れば、コーディリアが立役になって表に出てくるようになるからだ。フランス王が留まったままだと、彼が主役になってしまい、コーディリアがかすんでしまう。
話の展開上、彼女が前面に出てくる必要があったからだ。

 それにもう一つ、シェークスピアの狙いは、ここでコーディリアの性格をはっきりと見せる必要があると感じたのではないだろうか。

 ここまで彼女は一幕に登場したきりで、そこで得られた彼女の一面は、正直で行動が誠実あるが、少し頑固であるということであった。つまり、高潔だが厳しい性格かもしれない、優しさはないのだろうか、と思わせるので、それを払拭させるためである。

 ちなみに彼女の性格の一面を暗示する箇所が一幕四場にある。


 'Since my young lady's going into France, sir the fool hath much pined away.'
 (末の姫君がフランスへお立ちになって以来、あの道化はすっかり元気をなくしてしまいました)


と騎士が言う台詞がある。この道化の落胆振りがコーディリアの優しさを物語っていると思う。




 そしてこの場において、ケントと紳士の会話で、父のリアが受けた虐待について、その知らせを受け取った彼女の優しさと頑固さ(堅忍さ)を垣間見る。
Kent:     Did your letters pierce the queen to any demonstration of grief ?

Gentleman: Ay, sir; she took them, read them in my presence;
         And now and then an ample tear trill'd down
         Her delicate; who, most rebel-like,
         Sought to be king o'er her.

Kent:                           O, then it moved her.

Gentleman: Not to a rage: patience and sorrow strove
         Who should express her goodliest. You have seen
         Sunshine and rain at once: her smiles and tears
         Were like a better way: those happy smiles,
         That play'd on her ripe lip, seem'd not to know
         What guests were in her eyes; which parted thence,
         As pearls from diamonds dropp'd. In brief,
         Sorrow would be a rarity most beloved,
         If all could so become it.

ケント:例の手紙をお読みになって、お妃(コーディリア)には深く悲しんでおられると思うが?

紳士:左様です。お妃は手紙を受け取られ、その場でお読みになられましたが、
  読み進まれるうちに、時折、大きな涙が優しい頬を伝って滴り落ちたのです。
  その激しい悲しみを王妃の面目に掛けて耐え抜こうと努めておられたご様子でしたが、
  謀反人の悲しみの方は、お妃の上に王のような力を揮おうとしているように
  見受けられた次第です。

ケント:          おお、では、あの手紙にお心を動かされたのか。

紳士:もちろん、お取り乱しはぜず、忍耐と悲しみとが、
  何れがあの方にふさわしいか、両者が互いに競い合っているかのご様子。
  いわば、日は射しながら雨が振るようなもの、
  微笑に涙が交じる風情は、それに似ていて、しかも美しい。
  如何にも幸福そうな微笑は、さざなみが柔らかい唇の上に舞い戯れていて、
  思わぬ客(涙)が次々に目頭を訪れ、
  やがてダイヤモンドから滴り落ちる真珠の玉のように、
  そっと去って行くのも気がつかぬご様子でした。
  簡単に申せば、もしもそれがすべてのものに似つかわしいものならば、
  悲しみもまた、こよなくいとおしいものとなりましょう。


 ちょっと大げさな表現をしているが、これは哀れみと怒りとが一つの性格の中に釣り合わされ、見事に調和させられているように描いている。つまり彼女こそ真に王妃らしい王妃であることを示しているのだと思う。

 こんな立派な娘を、無一文で放り出したことは、リアにとって最大の過失だったというわけだ。
リアはそのことに気がつき始めている。それだから、彼はコーディリアに合わす顔がないのだ。

 あのように娘を侮辱した後で、彼女に会うのは辛いし、赦しを乞うとなると、もっと辛い。しかし、こういうことは、先延ばしにすればするほど、より一層、自分の犯した過ちを深く悔やむことになる。




 そしてケントが、この紳士をリアの元に案内し、リアはコーディリアの元に保護されることとなった。