二章:Electric Princess of The Absoluteness Ⅰ《完全無欠の電撃姫1》
「料理とは、私にとって毎日、"詩"を編んでいるようなものですね。その日によって、その日に誰と会うかによって、私の心を映して変化してゆく」--ピエール・ガニェール
学園都市の第7学区――
ここは中学・高校といった中等教育機関を主とし、同校に通う学生や教師たちの生活の場となっている。
上条 当麻もこの学区に住しているのだが、最近ある事件が断続的に発生していた。
いわゆる連続爆破『連続虚空爆破(グラビトン)』事件に端を発し、のちに『幻想御手(レベルアッパー)』事件と呼ばれるものだった。
ここは中学・高校といった中等教育機関を主とし、同校に通う学生や教師たちの生活の場となっている。
上条 当麻もこの学区に住しているのだが、最近ある事件が断続的に発生していた。
いわゆる連続爆破『連続虚空爆破(グラビトン)』事件に端を発し、のちに『幻想御手(レベルアッパー)』事件と呼ばれるものだった。
『幻想御手(レベルアッパー)』とは、聴くだけで簡単に能力レベルを引き上げるという効果を持ち、都市内で密かに流通している不正な音楽ファイルのこと。
使用者は、一時的に異能力のレベルが上がるが、他人の脳波を無理に当てはめているので体への負担が大きく、使用一定期間後に昏睡状態に陥ってしまう。そんな物騒な品物(危険物)なのだ。
使用者は、一時的に異能力のレベルが上がるが、他人の脳波を無理に当てはめているので体への負担が大きく、使用一定期間後に昏睡状態に陥ってしまう。そんな物騒な品物(危険物)なのだ。
『連続虚空爆破(グラビトン)』事件を解決するも、つかの間。『幻想御手(レベルアッパー)』使用による昏睡する生徒たちが多発という重大な事態が発生し、『風紀委員(ジャッジメント)』と『警備員(アンチスキル)』が捜査を進めていた。
そして、化粧気はほとんどないけれど、端整な顔立ちに肩まで届く短めの茶髪をピンで止め、私立名門女子中学の常盤台の制服に身を包んだ女の子。学園都市に7人しか存在しないレベル5のひとりであり、『超電磁砲(レールガン)』、『発電能力者 / 電撃使い(エレクトロマスター)』、『常盤台のエース』、『ビリビリ(特定の人物より)』など数多くの異名持った御坂 美琴が事件の解決に乗り出していた。
いま美琴は、革ジャンにジーンズといった、いかにもと言ったいでたちの女と対峙している。
『幻想御手(レベルアッパー)』の関する情報を得られるとの情報を元に出張ってきたのだが、舎弟たちから『姐御(あねご)』と呼ばれる『武装無能力者集団(スキルアウト)』の女性リーダーに絡まれてしまったのだ。
「くっ!!」
姐御(あねご)から繰り出された特殊能力『表層融解(フラックスコート)』に対して、美琴は電撃を放ち、空中放電しながらに向かっていく。
「フッ……フフフ」
姐御(あねご)は、かすかな笑いを浮かべながら、地面(アスファルト)に右手を着き能力を使い、壁を作って電撃を防いだ。
『表層融解(フラックスコート)』は、アスファルトの粘性を操る能力のことで、その形状を自在に変化させることができるのだ。
『表層融解(フラックスコート)』は、アスファルトの粘性を操る能力のことで、その形状を自在に変化させることができるのだ。
「こんな攻撃、あたいにゃ…… 」
壁の一部を砕いた電撃は、姐御(あねご)まで届くことがなかったが、アスファルトを砕いた威力で辺りは煙に包まれた。
「な・何!? 消えた??」
煙が消え、彼女が周りを見渡すと美琴がいなくなっていた。突然目の前から消えたのだ。
「やるじゃない!」
意外な方向から声が聞こえる。美琴はビル側壁に立っていた。
「な・何だー そりゃー!! 何でそんなところに!?」
「電流ってね…… 磁場を作るのよ。それを壁の中の鉄筋に向けると、便利でしょ!」
そう言いながら再び電撃を放つ。
今度もアスファルトの壁に防がれたが、先ほどよりも威力があった。壁を根元からすべて破壊しアスファルトがはげて地面が露出している。
「なっ!」
「どう~ そろそろおとなしく喋ってくれる気になった?」
姐御(あねご)は、その威力に驚がくした。
「なるほど…… 最初の一撃は本気じゃなかったってわけだ。そして今の一撃も、わざと外してくれたと」
「そうよ~ わかったら、おとなしく……」
「ふざけんなーー ! あたいはまだ負ちゃいないんだよ。あんたも能力者なら本気で来なーー !! あたいの鉄(くろがね)の意志、そんなちんけな電気ごときで、砕けるもんなら砕いてみなーー!!」
姐御(あねご)は、両手のこぶしを強く握りしめながら叫ぶ。
「フッ…… 、よっ~~と! 嫌いじゃないわ~。そういうの」
美琴は不敵な笑みを浮かべながら、ビルの側壁から降りてきた。
地上に降り立った御坂 美琴の周りでは、空気中に電撃が行き交う。電撃が空気を引き裂く音が徐々に大きくなり、周りの音を包み込んでいった。
「じゃ~ お言葉に甘えて……」
さらに電撃の威力を増すために左手を頭上に掲げる。
「お姉さまー 待って!」
そのとき、美琴の背後に『空間移動(テレポート)』してきた者が声をかけた。
白井 黒子である。美琴と同じ常盤台中学に通う後輩で、第177支部所属の『風紀委員(ジャッジメント)』であり、ルームメイトだった。
「わかってるって…… (手加減しろ、ってことでしょ)」
言葉の半分は、あえて口にしない。自分が作り出した電撃の威力が、どれほどのものか、しっかり把握していた。
これほどの威力、直撃しなくとも、相手に致命傷を与えるには、じゅうぶん過ぎるほどなのだ。そこまでする必要はない。ただ相手をビビリさせればいい。
これほどの威力、直撃しなくとも、相手に致命傷を与えるには、じゅうぶん過ぎるほどなのだ。そこまでする必要はない。ただ相手をビビリさせればいい。
ふたたび黒子が叫ぶ。
「わかってませんの! お姉さま!!」
――と、あたり一帯が、停電(ブラックアウト)した。
美琴の作り出した強大な電撃は、学区内の数ブロックを停電(ブラックアウト)させた。彼女と姐御(あねご)が抗争していた場所の近くに変電施設があったのだ。
学園都市は、最先端技術によって整備され、外界にくらべ10年以上も進んでいる。
とうぜん送電設備においても、いち早く電力制御網(スマートグリッド)が導入されていて、滅多なことでは停電(ブラックアウト)など起こるはずもないのだが、今回はちがった。美琴の電撃が近くにあった変電施設を需要過多(オーバーロード)させたのだ。
とうぜん送電設備においても、いち早く電力制御網(スマートグリッド)が導入されていて、滅多なことでは停電(ブラックアウト)など起こるはずもないのだが、今回はちがった。美琴の電撃が近くにあった変電施設を需要過多(オーバーロード)させたのだ。
美琴と黒子は、変電設備ちかくの街路を歩いていた。
「だから…… 待って、と言いましたのに~」
「仕方ないじゃない。まさかこんなところに変電施設(こんなもの)があるなんて!」
美琴は変電設備の案内看板をたたく。
「ですから、わたくしが……」
「あんなギリギリ、間に合うわけないでしょ! それより、どうしてくれんのよ!」
「自業自得というものですわ~」
『幻想御手(レベルアッパー)』の有力な情報をほとんど得られないまま、二人は帰路につく。寮の門限がさし迫っていたからである。
そして、ひとりポッツンと、その場に取り残された姐御(あねご)は、呆けて座り込んでいた。
「あたいの…… 負けか……」