一章:Ramen Wars Ⅱc《ラーメン戦争2c》
「人口は幾何学級数という比例で増加するが、食物は等差級数でしか増加しない。そのための食物の奪いとなり、強者は勝って生き、弱者は敗れて滅びる」--チャールズ・ロバート・ダーウィン
木山 春生が、とつぜん服を脱ぎだしたことに、研究員はたじろぎうろたえる。
「な・何をするんですか!? き・木山先生!!」
「何を…… と言われても、火を使ったのでね。少々、暑くて汗をかいてしまったのだよ」
彼女は、ブラウスを脱ぎ終えて上半身はブラジャーだけとなり、そしてすでにスカートのファスナーに手をかけていた。
「し・し・し・失礼しましたぁーーーーーっ!!」
若き研究員は悲鳴のような言葉を残してラボから逃げ出していく。
「おい…… きみ、待ちたまえ。実験の…… 途中で逃げ出すとは…… 失礼なのは、どちらなのか…… 最近の研究員の質も落ちたものだな」
木山 春生は、研究員が置いていった調査資料とカレーラーメンの入ったビーカーを回収しつつ、脱いだ服を着て、ラボ内の空調機の温度を下げる。
「 ……そうか、こうすれば、良かったのか? まぁ…… 個人における習慣というものは、なかなか改めるのが難しい…… ということか」
彼女は改めていすに座り、ビーカーの中のカレーラーメンを食べ始めた。
「そういえば、彼は、わたしを先生といっていたが、わたしは先生ではない…… ただの研究員に過ぎない…… しかし、先生と呼ばれるのは、何年ぶりだろうか……」
ふっと、見上げた彼女の視線は、遠い過去を思い出すかのように、遠くを見つめていた。