風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

「あいちトリエンナーレも大詰め=3年後への期待」


名古屋市と岡崎市で79日間の日程で開かれている「あいちトリエンナーレ2013」も、10月27日の閉幕が近づきました。8月29日更新のブログ「トリエンナーレの会場巡り始める」でも書きましたが、乏しかった現代アートに対する僕の理解も深まりました。
 「3年前の前回に比べて入場者はほぼ横ばい」(あいちトリエンナーレ実行委員会)だそうですが、この催しを継続・発展させるためにも、閉幕後の総括はきちんとして欲しいものです。そこで、今回は会場巡りをした一人として疑問・注文などを書いてみます。

   (困惑させた『裏口入場』)
 

会場回りを楽しんだ友人たちや、活動するアート作家たちから異口同音に耳にした疑問や苦情は、会場のひとつ名古屋市美術館への出入りが、体の不自由な人や赤ちゃん連れ以外は、裏口からしかできなかったことです。

チケットを手に玄関口で入ろうとすると、スタッフから裏口に回るようにいわれます。入場者は困惑顔で美術館の外の歩道を半回りして裏口へ。出てくるのもこの裏口です
雨の日は大変。さしてきた傘を玄関口のキー付き傘立てに置き、スタッフからビニール傘を借りて裏口へ。館内の展示を見終わると、裏口から再び玄関口へ戻ってビニール傘を返し、自分の傘に持ち変えて美術館をあとにします。

僕はこの美術館へは何度も訪れています。でも、こんなことは初めて。館内には順路の矢印はありましたが、裏口へ戻るのに迷い、見かねたスタッフが近道を教えてくれたほどです。


僕は「混雑緩和のためかな」と思いました。ところが、実は「美術館を建築アートとして見てほしい、という出展作家の要望に応えたため」(実行委員会)だったのです。

この美術館は、建築界の巨匠のひとりだった黒川紀章の代表作。公園内の狭い敷地をどう生かすかなど、多くの課題の克服に苦労したと聞いています。
この美術館の建築をテーマに取り組んだ作家が、展示コーナーだけでなく美術館の建物そのものとともに「作品」とし、入場客には内からも外からも見て鑑賞してほしい、というのを僕も理解しないわけではありません。既成概念を破る発表形式として感心するほどです。

問題は作家の要望を受け入れ、裏口からの出入りを決めた実行委員会の入場客に対する配慮が足りなかったことにある、と考えます。

例えば、パンフレットなどで、名古屋市美術館の設計・建築にまつわる話を紹介するとともに「お手数ですが、裏口への小路を散策しながら、見事に環境と調和した建築をご覧ください」とでも書いて周知徹底していれば、入場客の反応は全く違ったと思います。美術館の建物に目もくれないで歩かされる腹立ちより、「なるほど、そこまで考えて建てられているのか。建築アートって素晴らしいな」と感じる人が少なくないでしょう。


困惑し、不快な表情を隠せない入場客。「すみません」「申し訳ありません」と、頭を下げ続けるスタッフたち。実行委員会では案内スタッフを配置したそうですが、続々やってくる入場者一人ひとりに短時間で説明し、納得してもらうのは不可能でしょう。

「ここにはヒトへの思いやりがない」と嘆く老夫婦もいた、と聞きました。

最寄りの地下鉄伏見駅から500メートルほどとはいえ、炎天下あるいは土砂降りの雨の中を歩いて玄関にたどり着いたとたん「向こうへ回ってください」と言われ、釈然としないまま従った入場客の気持ちはよくわかります。

          2013
      
(玄関側から見た名古屋市美術館)
 

(欲しかった名古屋地区での当日券)
 

入場客の不満が、名古屋市美術館に対してだけにあったのではありません。
作品そのものに対する感想を別にすれば「赤ちゃんのオムツ替えができる場所が欲しかった」「展示会場の位置を示す地図はもっと分かりやすく」「入場チケットの販売に工夫を」などといった声は、「あいちトリエンナーレ」の継続・発展にとって小さくはないでしょう。
 

そこで、ここでは入場チケットを取り上げたいと思います。
チケットは「普通=一般1800円」「団体割引=同1400円」「フリーパス=同3500円」の3種類。このほかに、岡崎では岡崎地区3会場に使用できる「当日券=高校生以上300円」がありましたが、名古屋地区にはなかったのは残念でした。
普通チケットの場合、全ての会場に1回ずつ日を替えて入場できます。ということは、入場日を押印された会場では、時間に余裕がなくなり後日続きを見に来ようとか、後日にあの作品をもう一度見たいと思っても、改めて1800円の普通チケットを買わねばならないのです。

このため僕も、大型作品や力作が集中する愛知芸術文化センター会場や、展示施設が広範囲に点在する長者町会場などで、十分鑑賞しないまま急ぎ足で回り、見るのを飛ばした作品もあります。もう一度見たいと思った作品も少なくなかったのですが、断念しました。勤め帰りにちょっと立ち寄りたいな、と思って止めた人も多いでしょう。

「そういった方は、あらかじめフリーパスを買って頂ければ」。実行委員会の説明ですが、値段は倍だし「この作品をもう一度見たい」は一度見てから思うことですからね。

また、閉館時間は多くの会場で金曜日は20時まで延長しています。でも、真夏の催し。都心の芸術文化センターぐらいは、さらに1時間ほど延長できればと思います。「アートでデート」。魅力的です。

 

もちろん、チケットや閉館時間については何度も検討されたそうです。前回は全会場が一律に月曜休館だったのを、今回は月曜日に会場ごとに臨時開館日を設けたのもその結果だと聞きました。
作業が複雑・煩雑化したり、人件費などの経費がかさんだり、会場施設の都合がつかなかったり・・・。改革には課題が多いのは当然ですが、ご承知の通りチケット販売の世界もネット販売など手段は著しく効率化しています。

せっかく県民・市民の間に芽生えた現代アートに対する親近感が消えてしまっては残念です。

名古屋市美術館で起きたよう問題、チケット販売、閉館時間・・・。「あいちトリエンナーレ」を発展・定着させるため、あくまで入場客の目線に立った改革を期待したいものです。

 

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小さなアーティスト)

数多くの企画のなかで、僕がしばらく立ち止まって楽しんだプログラムのひとつを紹介します。

愛知芸術文化センター会場の子ども参加型企画「キッズトリエンナーレ」です。広いスペースに並んだ段ボールのテーブルやベッド、壁などに、子どもたちが古新聞の写真や見出し、広告などを切ったり、ちぎったりして貼り付けています。よく見ると、思いがけない模様になったり、素敵なキャッチフレーズになったり。

後日。再び覗くと、張り紙で一杯になった上に今度は絵具で思い思いの言葉やアニメキャラを描いていました。
最後には、これらをみんなで思い切って破ったりするそうです。

すぐそばにオノヨーコの企画で、入場者が自分の母親の写真に短いメッセージを付けてボードに貼るコーナーがありました。

その一枚。91歳のお母さんへの写真に添えたメッセージには「東京オリンピックに一緒に行こうね」。いいですね。

芸文センターの「サン・チャイルド」や「太陽の結婚式」などの作家・ヤノベケンジは、子どものころ遊び場だった大阪万博跡地での記憶が創作活動の根底にあるそうです。

今回のトリエンナーレで遊んだことがきっかけになって、何年後かの「あいちトリエンナーレ」の出展作家が誕生すれば素晴らしいですね。


        2013_45
        
(自分自分のアートを楽しむ子どもたち)
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