風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

楽書き雑記「考え、覚醒された作品――愛知県立芸術大学の卒業・修了制作展から」

若いってすごいなあ。陳腐な表現ですが、愛知県立芸術大学の卒業・修了制作展、(3月4日~3月9日、愛知県美術館・県芸大芸術資料館)を見ての感想です。2会場のうち県美術館だけの鑑賞でしたが、けれん味がなく個性的な作品の数々に、これからの実り多い「制作人生」を期待したいものです。

日本画、油画、彫刻、デザイン、陶磁、芸術学の各部門の作品が、8階フロアの10部屋に並びます。まず注目したのは日本画部門でした。
このブログ「日本画界の新星と85歳の新入生」(昨年12月19日更新)で取り上げた「新星」が愛知県芸大卒の若い作家たちだったこと、さらに芸術関係の月刊誌で松村公嗣学長(日本美術院同人理事)が「今年の院展の入選者270人のうち54人が愛知芸大だった」と話されているのを読み、「ついに、あの東京芸大を抜いたのだ」と強い関心をもったからです。

他の部門と同様、日本画も僕のような素人では作品の出来、不出来を述べることなどできませんが、18点の展示作品は個性的で大胆なモチーフ、彩色はさすがです。

それとは別に、僕は2人の学生が取り組んだ復元模写に興味を持ちました。
復元模写は、日本の絵画教育ではあまり重視されてこなかったように思います。でも、名古屋城本丸御殿の障壁画の復元模写を例にとるまでもなく、先人が遺した文化遺産を後世に伝える極めて大切なことですね。
以前、ある美術館で出会った若い女性学芸員が「いまのままではダメになってしまう重文級の絵画の復元に取り込みたい」と、イタリアのフィレンツェなどで復元技術を学んだことを振り返りながら、熱っぽく話してくれたのを思い出します。
どのような素材と技法が使われたのか。描かれた時代背景や絵師の感性は・・・。古文書を読んだり、化学的知識も欠かせません。拡大鏡や断層写真など各種装置を使っての研究・分析も必要でしょう。
復元模写がいかに大変で意義あることかを、2人の復元模写作品の前に置かれたリポートに目を通しながら考えました。


デザインの部門でも「山のしごと」と題した印象に残る作品に出会いました。

スギやヒノキの山林や伐採した木の搬出道路などの写真と、手作り作品らしい木製の椅子とテーブルに3冊の本が置かれているという、見過ごしてしまいかねないコーナーでしたが、本を手にして引き込まれたのです。

そこには、日本の国土は7割が森林であること、世代を超え100年後を見据え植林・伐採して守り育ててきた人たちがいること、いまの自然や緑豊かな山はこうした先人たちの試行と知恵を積み重ねてきたから存在することを強調。そのうえで、江戸時代から受け継がれてきた三重県の林業家のもとに生まれた作者が、家族や山仕事に携わる人たちの語る思いなどを紹介しつつ、林業の一端を書いています。

正直言って「これがデザイン作品?」と思った自分が覚醒されました。

          
      
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