[書籍紹介]
斎藤詠一による、第64回江戸川乱歩賞受賞作。
南極遊覧中のチャーター機が
原因不明のシステムダウンを起こして緊急不時着する。
ツァー添乗員の望月拓海は、
乗客のアメリカ人と物資を探しに
今は使われていないアメリカの基地へ向かい、
更に「到達不能極」にある基地へと雪上車で向かう。
ツァーの団員の一人には、謎の老人が含まれていた。
この2018年の話と同時並行的に、
1945年、マレーシアのペナン島にある日本海軍基地の出来事が描かれる。
訓練生の星野信之は、
ドイツから来ていたエーデルシュタイン博士とその娘・ロッテを、
南極にあるナチスの秘密基地へと送り届ける任務を言い渡される。
信之は、ロッテに密かな恋心を抱いていた。
秘密基地では秘密の実験が行われており、
博士はロッテが重大な任務を負っていることが分かる。
やがて、二つの話が結びつき、
73年の時間を隔てて、
ナチスの実験が重大な結果をもたらしていく・・・
ナチスが南極で謎の実験をしていたというのは,
どうやら、史実らしい。
と書くと、ナチスの実験とは、何かという話になるが、
原爆実験ではないとだけ述べておこう。
ただ、その実験内容は、
荒唐無稽を通り越してよく言ってSF、
悪く言えばオカルトの領域まで入ってしまう。
江戸川乱歩賞というのは、
元々ミステリーの賞だと思うが、
いわゆるミステリーではない。
「SF冒険小説」という表現がふさわしいのではないか。
この前年、「授賞作なし」だったので、
今年こそは受賞作を、
ということで、ジャンルを超えた作品になったのか、
それとも、ジャンルを超えてもなお受章に値するだけの作品の力があったのか。
南極という極寒の地の描写はなかなかのものだ。
そして、ナチスの秘密実験と現代を結びつける着想もなかなかいい。
ただ、その内容においては、
漫画を読むようで、説得力には欠ける。
到達不能極(とうたつふのうきょく)とは、
陸上で最も海から遠い点、
または海上で最も陸から遠い点のこと。
あくまで地理的に定められた点であり、
物理的には「到達できる」(到達例がある)ため、
到達困難極または到達至難極と呼ぶべきだという意見もある。
南極の場合は、
↓のあたり。
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