ここ数年お酒の世界では、シングルモルトブームが続いて
いるそうです。
なかでもアイラモルトといわれる、Islay島のモルト
ウィスキーが人気なのだとか。
アイラモルトは、岸壁に蒸留所が建設されていることが
多く、そこで熟成されるウィスキーは海藻っぽい風味が
します。
また、アイラモルトはいくつかの蒸留所でピート(泥炭)に
よるフロアモルティングがされているので、とてもスモーキー
であることも特徴。ひと言でいえばクセが強くて臭い
ウィスキーです。
こんな特徴のアイラモルトですから、作っている当の
スコットランド人以外は「誰も飲まんだろう」というのが
常識だったくらいです。
そんなアイラモルトが人気だというのだから、世の中変わった
もの(笑)。代表的なボウモア蒸留所は日本のサントリーが
所有しています。
そのアイラ島の7つの蒸留所のうち、最近になって所有者が
変わったところがBRUICHLADDICH蒸留所。日本語ではブルック
ラディと言われています。
このブルックラディ蒸留所の新オーナーは、非常に情熱的な
人だそうで、蒸留所に瓶詰め工場を新規に併設してしまった
のです。
これがじつは大事件。
ウィスキーというのは、樽のなかで熟成しているときのアル
コール度数は50~65度くらいあります。
対して、一般に店頭で販売されているウィスキーは40~
43度です。つまり、製品として瓶詰めされているものは、
水をいれてアルコール度数を調整しているんですね。
調整すること自体は、味を調整したり創造したりするために
いろいろなウィスキーをブレンドするくらいですから、ごく
一般的なこと。
問題は、この希釈するときに使う水なんです。
ウィスキーは、当然そのほとんどが水ですね。ならば、蒸留所で
使っている仕込み水と製品化するために希釈している水が同じか
違うかは大問題です。
今まで、アイラ島の蒸留所には瓶詰め設備がなかったので、樽の
ままスコットランド本島に持ってきて、本島の瓶詰め工場で希釈・
ボトリングしていました。
すると、当然仕込み水と希釈水が異なり、味が純粋でなくなり
ます。
しかし、このブルックラディ蒸留所だけは、自社に瓶詰め施設が
ありますから、仕込み水と希釈水が同じで純粋な味を保てるの
です。
アイラ島は、くどいようですが島ですから、世界中に出荷するため
には、海を渡って本土に持ち込まなければなりません。
すると、(希釈されて増量した)ブルックラディのモルトと(樽の
原酒をそのまま運ぶ)他のモルトでは製造コストが大幅に変わって
しまうのです。
本当に純粋な良いウィスキーを飲んでもらうためには、前者の
ような努力が大切ですが、もちろん莫大なコストがかかります。
経営者としては、コストアップになることは出来ればやりたくない
でしょう。
それでもブルックラディの新オーナーはこれをやった!
この英断を称えたいと思います。
ちなみに、ブルックラディはハイランドパークに匹敵する、
もの凄く美味しいウィスキーです。
感謝!