夢のようなバーに出会った。モルトファンなら天国かインヴァネス
と思うだろう。しかも池袋駅から近くだ。
ベンチャーウィスキー社がリリースしているシングルグレーン川崎
について検索しているとき、マスターがお書きになっているブログ
に辿り着いたのがきっかけだった。
私は、地元神奈川、しかも工業地帯にウィスキー蒸溜所があったこ
とを知らなかったので驚き、記事を読み始めたら10回に分けた特
集となっており、その博学ぶりに更に驚いた。
どんな方なのだろうと思ってトップページに移ると、今月末で(一旦)
閉店の文字。そうなったら、ない時間も遣り繰りして会っておくし
かない。会いたい人には会おうと行動しなければ永遠に会えなくなっ
てしまうことを理解するほどに年を取ってしまった。
店主は一瞥して私を初めての客だと察知して、どんなウィスキーが
好みかと聞かれる。私はカウンター奥の棚を見てオフィシャルボト
ルがほとんどないことに気づく。
ブログを拝読してやって参りました、と珍しくもないだろう詰まら
ない会話から始まったのだけれども、ブログはブログ、バーはバー
だ。会話の流れから秩父蒸溜所の2年半ものを出してくださった。
ベンチャーウィスキーの肥土社長とは随分と長いお付き合いなのだ
そう。
瓶詰め業者のボトルばかりが数百本も並んでいると、あれをなんて
注文は事実上できない。飲み手が飲みたいものを伝えて出してもら
う。つまり、飲み手は自分の好みを知らなければいけない。
そんな見えないハードルが内面に出来てしまうことをご存知だから、
甘いのが好みか?重いのが好みか?と聞いてくださる。そして最適
な一杯が目の前に注がれる。
ははぁ。なんて幸福だろう。なんて充実した時間だろう。蒸溜所の
名前やらラベルのデザインやら教科書に書いてある情報ではなく、
麦芽や樽やボトラーを肴にアロマが広がる。
マスターはウィスキーを愛しておられる。飲み手の人も大切に考え
ておられる。だから、ご自身の立ち位置はちょうどそれらの中間に
なる。
飲み手の好みとウィスキーの個性をマッチングさせるのがバーテン
ダーの仕事、という自負と誇りがカウンターの内側に漂っている。
驚きから始まったのだけれども、次第に感心に移り、店を後にする
ときには感動に変わっていた。こんな店があって、本当はこういう
ものがバーというのではないかとも思った。
現在の店舗は今月いっぱいだそうだ。私はもう行かれないけれども、
もしお近くで行かれそうなら是非訪れていただきたい。その値打ち
は見えないところにある。
感謝!