以前、余市20年原酒という表題でシングルカスクのことを
書きました。
そのときに、熟成年数10年と20年のウィスキーを比較して、
10年では、樽香 > ピート香 > エステル香 のところ、
20年になると、エステル香 > ピート香 > 樽香
に変化が認められ、+10年熟成でアルコール度は低下する
にも拘らず、エステル香が強く前面に出てきて、もうひとつ
より多く原酒に溶け込むであろう樽香の主張が弱くなっている
現象を不思議に感じて、「こういうのは、ブレンダーとか
工場の蒸溜長に聞かないと分からないこと。もしその原理が
分かったら、ブレンド技術に関して、色々とブレイクスルー
しそう」と書きました。
それで、先日いよいよそのチャンスに恵まれることになり
ましたので、メーカのプロのブレンダー(しかも当該メーカ!)
にお尋ねすることができましたので、ここで正解をご披露
させていただきます。
まず最初のエステル香については、エステルは水に溶け込む
成分であり、熟成年数の経過によって水分が蒸発して減ると、
溶け切れなくなったエステルが出てくるために濃く(強く)
感じるのだろう、とのこと。
素晴らしい。
もうひとつ、樽香については、これは単純に樽毎による個性
(製造的には誤差、ばらつき)の話なのだそうで、同じタイプの
原酒造りを目指して、同じようにオークの新樽を作っても、
ひと樽ずつ表れる熟成スピードの違いや樽成分の溶け込み量の
違いがあって、よく云われる「厳密には、ひと樽ひと樽味が
違います」という、まさにそれに当たったことだそうです。
ですから、今回の問題はシンプルですが奥行きの深いテーマを
湛えていて、熟成が進むにつれて変わる味の変化ということ、
同じように作っても樽ごとに味は異なるという味の違いと、
シングルカスクの味わいの本質に触れる出来事でありました。
となれば、原酒の秘密が判明したというタイトルも、あながち
大げさではないとご理解いただけるでしょうか。
感謝!