マックいのまたのMalt Whisky Distillery

モルト好きで株式公開/上場(IPO)の経営戦略,マーケティング,M&Aを支援する経営コンサルタントのプライベートブログ

本当に美味しいウィスキーの作り方

2012-03-08 14:35:03 | グルメ

ウィスキーというのは、モルトウィスキーのこと。

通な御仁だとシングルモルトなんていいますが、あれは「単一蒸
溜所で製造されたウィスキー」という定義ですので、蒸溜所所在
地の名称で商品化されているボトルの中身はブレンドです。

また、アメリカのテネシー州製ウィスキーというのもありますが、
あちらは原料がとうもろこしですので、ちょっとここでは別項と
します。

さて。

ちょっと前提として整理をしますと、「美味しい」というのは人
間の味覚による評価ですから、主観と嗜好が多分に働く分野の出
来事で、客観的評価としては信用度が低いテーマです。

しかし、他方で美味しいものをランキングするといった出来事も
日常的に行われているのが人間のすることですから、今日のテー
マはむしろこちらに近いかもしれません。

さて。

では「本当に美味しい」とは何か。
美味しいに本当もニセモノもあるのか。

ニセモノはなくとも、美味しいなかの美味しいという意味、即ち
レベルの高い美味しさというなら、きっとあるでしょう。

それをどのように作るのか。

日本の多くの作り手の皆さまは、こういう質問を投げかけると、
口を閉ざされる傾向があります。なにしろ相手は長期間に亘って
貯蔵庫で熟成させるもので自然の影響が大きい、と。

消費者が製造の現場で丁重に断られてしまうと、もうこれ以上は
近づくことが許されない神の領域なのかと感じてしまい、近くに
帰ってバーテンダーさんにお尋ねしたりしてみても、残念ながら
多くのバーテンダーさんはそこまでご存じないのが現実です。

しかし味のレベルの高さというなら、例えば料理人の技術レベル
によって出来上がる料理のレベルに違いがあるように、いくら自
然に委ねる領域が多くても、麦からニューポットに至るまでの蒸
溜技術レベルによって、出来上がるウィスキーのレベルに違いが
顕れるでしょう。

モノ作りのプロセスを考えるとき、例えばそれが革靴だったとし
て、よい靴を作るためには、良い皮原料、良いなめし、良い染め、
良い部位の吟味、良い裁断、良い穴あけ、良い縫い、取り付け、
というように全ての工程で「丁寧な仕事」をしたものが、よい皮
靴を作る王道だろうと思います。

モルトウィスキーを作るとき、一頭最初に麦を麦芽にする製麦工
程がありますが、日本のウィスキー蒸溜所で工場見学をしても、
製麦工程は見せてもらえません。なぜなら、いくつか理由があり
ますが、一番大きな理由は自社で製麦していないからです。

製麦した麦芽(=モルト)を外部業者から購入するのが既に一般的
になっているのですが、その理由は均一な品質の麦芽が手に入る
ということと、コストを80%近く下げられるということでしょ
う。

もしモルトを自社製造すれば、品質が不安定な麦芽ができるリス
クと5倍近いコストを負担しなければなりません。

これをどうみるか。

経営者ならば絶対に認めないことですし、対市場には「品質管理」
という言葉で企業イメージの向上に役立てようとするものです。
百歩譲って正直に消費者にアナウンスしても、誰もが納得するこ
とでしょう。

しかし。

均一な品質の麦芽がアルコール発酵すると、味も均一になります。

ワインに例えると、最近よくある「化学的にしっかり品質管理して
いるので、とても飲みやすく美味しいです」という味になります。

ところが、ワインの分野では、エンスージアスティックな皆さまは
この近代的な製法をあまり高く評価されない。

テロワールがないと。

ウィスキーも同じことが当てはまるのではないかと思うのですよ。

原材料が農作物で、天然アルコール発酵させ、樽で熟成させるとい
う基本的なプロセスに共通点が多いのですから。

自社製麦することによって、ウィスキーにテロワールが生まれるの
だと。

テロワールとは、品質管理の観点からは不均一とされてしまう味の
複雑さだと。

そして、その複雑さを人間は感じ取ることが出来、高く評価すると。

すなわち、味のレベルが高いという意味での美味しさを追求すると、
経営上のリスクを承知の上でフロアモルティングをすることが必須
になるのではないかと思うのです。

もちろん、これはいくつにも分解される製造工程のごく一部の手法
についてですが、モノ作りの現場にいらっしゃる方ならご理解して
いただけるように、上流工程の品質は下流や製品への影響が大きい
のだから、コストを優先させるだけでなく、最終消費者の評価や製
品のブランド価値や、製造企業の株価に通ずると信じて取組むテー
マであり、

本当の美味しさとは、そういうものではないかと思うのです。

にほんブログ村 酒ブログ 洋酒へ
にほんブログ村


感謝!