「空港で難民申請したとたんに、するーっと入管の収容所に直行させられちゃうケースもあるの。日本の地を踏まずに二年も三年も収容されている依頼人の顔が、ああ、いまここに思い浮かぶわ!」
「難民を保護するというマインドと、外国人を管理するという入管のマインドは、そもそも相いれないものだからね」
「本来は、入国管理局からは独立した難民認定機関ができなきゃいけないんだよね」
「いや、ここ、じつは根源的な問題なんだよ、マヤちゃん。なぜ、難民保護と入国管理を同じ部署の同じ人間が担っているのかってこと。変だと思わない?助けてあげたいっていうのと、追い出してやるぜっていうのが、同じ部署なんだよ」
「はっきりいって『追い出してやるぜ』ってメンタリティに貫かれているよね」
「うん、日本には難民認定制度って、ないに等しいよね。あるのは難民不認定制度だよ」
麻衣子先生とハムスター先生は、よほど不満が溜まっていたらしく、一気にここまで語り合うと、ふうーっと息をついて、二人で虚空を見つめた。
スリランカ人の男性と結婚したシングルマザーの母と娘は、幸せから一転彼がオーバーステイで入管に囚われるという最悪の事態に直面する。そもそも難民がどのように生まれ、日本ではどういう扱いを受けるのか。
日本の入管の問題点を、ある家族の人生をなぞりながらリアルに描ききっている。出来るだけ多くの人に読んでほしい力作だ。