土曜日のこと。
テレビを見ながら縫物をしていると、外で猫の騒ぎ声。
玄関に出てみたら、引き戸が少し開いていた。
こんなことは初めてだった。
なぜ開いているのかわからず慌てて飛び出すと、そこには風太とよく庭に来ていた雄猫。
私の姿を見て雄猫は逃げたけれど、興奮して毛を逆立てている風太。
下手に刺激しないように何とか抱きあげて家に戻した。
それから部屋の中を見渡すと他の猫の姿もなくて血の気が引く。
窓の外を見ると、マロが私の顏をみながら庭を横切っていくところだった。
慌てて外を探しまわるけれど手がかりなし。
真っ先に浮かんだのは白血病のラムちゃん。
もし外に出て行ったらもう生きて帰れないかもしれない。
落ち着いてもう一度部屋をくまなく探したら、ラムちゃんと花は部屋の隅に!
グ―ちゃんと風太も。
逃げたのは福ちゃんとマロの兄妹だった。
その晩は二匹のことを考えてしばらく眠れなかったけれど、きっと遠くには行っていないと信じて、翌朝。
早速庭先でマロと福ちゃんを見かける。
でも呼びかけてもフードでつっても全く近づこうとしないばかりか、私が動いたとたんに逃げてしまい、姿を見失う。
もともと野良の気質が強く人間に慣れない二匹だった。
暖かい部屋や美味しい食べ物が幸せというのは、人間の思いあがりであって、自由を奪うということのほうが残酷なことなのかもしれないと考え込む。
もしまた庭にやってきて、家に連れて帰れたら、一緒に暮らそう。
呼びかけても逃げるようだったら、その時は二匹がそれを選んだのだと諦めることにしよう。
この世界で動物が自由に、安全に暮らせる場所はとても少ない。
無事を祈ることしか出来ない。