→ あるきだす鈴木加成太 →
昨日夕刊☀あるきだす言葉たち は今年の角川短歌賞の鈴木加成太。11月号角川「短歌」に受賞作が発表される。その4日前に彼の近詠「404研究室」を読むことができた。
♦ 鍵穴に満ちているのは月の匂い、研究室のドアノブ冷えて
八首連作の「404研究室」はこの歌から始まる。作者は現在、大阪大学文学部4年生。
研究室の鍵穴の月の匂い、冷えているドアノブを引けば荒涼とした月の世界、孤独の世界が広がるのだろうか。高校2年のときに短歌を始め、文学部を選んだ鈴木加成太、これは筆名らしい。加成太は彼方か。文芸の世界は彼方の月のように思えるのだろうか。
♦ 回る椅子ぽかんと回す珈琲の湯が沸くまでのねむたい遊び
♦ ホチキスの痕よりやわらかな歯型 飲みさしの紙コップの縁に
鈴木加成太は短歌を詠むことは難しくない、そうである。日常のイメージを無理やり31文字に当てはめるだけで、すっと短歌になっちゃうことが多い。彼は短歌を支配できるのか。
♦ 「淋しい」 を指す七通りの言い方をオルゴール語はきらきらと待つ
「オルゴール」を詠むと甘い歌になるので私は避ける。淋しい、、きらきら も私は避ける。しかし「オルゴール語」とは、しかも「淋しい」は七通りの言い方があるとは、、。
♦ 潮騒の色のインクが足りないとプリンタが紙の呼吸をやめる
インク不足でプリンタの印刷ができない。ただそれだけのこと。私は昨日も印刷できなかった。潮騒の色のインク、プリンタが紙の呼吸をやめる。日常のよくあることを新鮮な表現で詩にしてしまう、詩にすることができるのだ、22歳の鈴木加成太は。
加成太さま 3日後の角川短歌賞「革靴とスニーカー」を楽しみにしてます。
10月21日 松井多絵子 、