朝日歌壇の熊本地震
熊本地震発生がら3週間余りの今日、ようやく朝日歌壇に被災された方々の入選作が掲載された。この欄に載るのは投稿3週間前後、☆印8首のうち4首が熊本の被災者である。俳壇には1句のみ。歌壇には今後も熊本からの投稿歌が多いであろう。
<永田和宏 馬場あき子共選>
★子と孫の無事を確かめ呆々と坐して見てをり散乱の部屋 高添美津雄
永田{評} 熊本大地震の歌がいち早く寄せられた。まず子と孫の無事をたしかめた高添、
<馬場あき子 選>
♦ 頻繁に起こる余震に足腰の真っ直ぐ立てずくずおれしゃがむ 佐渡京子
馬場{評} 熊本地震の歌が多く投稿されていた。現場での声にはそれぞれ力がある。
<佐佐木幸綱 選>
♦ 震度7生涯初の狂ふごと揺るる部屋なか妻と耐へをる 高添三津雄
♦ 余震収まり帰りてみれば三方のブロック塀は倒れてをりぬ 佐渡京子
佐佐木{評} 締切時期から見て、熊本地震発生直後の作。まだ周囲の状況も不明で、た
だ耐え、驚いている作。体験者ならではの臨場感。
、<高野公彦 選>
♦ 足裏からお尻から振動突き上げて仏壇落ちるテレビ倒るる 佐渡京子
<高野公彦 永田和宏共選>
★ お守りのごとくケータイ握りしめ浅く眠りぬ余震に怯え 垣野俊一郎
高野公彦{評} 4月14日以降、ずっと熊本地震が続いている。地震の激しさを伝える。
永田和宏{評} ケータイを握りしめて眠る板垣氏、臨場感が圧倒的である。
※ 本日5月9日の朝日歌壇から熊本の方の作品のみ取り上げました。5月3日の私のこのブログで熊本在住歌人・浜名理香さんの 「熊本地震第一夜」の連作について書きました。ぜひお読みください。「現代短歌新聞5月」に掲載された10首から8首を抄出。地震発生の夜に詠まれた作品です。浜名さんは少しはなれた所に住む認知症の父上のところへ駆けつけるとき道が地割れしていた、などが詠まれています。
5月9日 松井多絵子