・・・ 歌人クラブの文学散歩 ・・・
♥ 白鳥は哀しからずや空の青海の青にも染まずただよふ 若山牧水
昨日は歌人クラブ東京ブロックの文学散歩。31名は朝8時半にバスで沼津へ向った。まず沼津御用邸公園内で昼食、公園内を散策し若山牧水館へ。宮崎県日向市にも牧水館があり遺品などが展示され、牧水の生家も近くにある。沼津の牧水館は、晩年の彼が過ごした処。歌人牧水の生涯の作品が幅広く紹介されている。亡くなったのは43歳、彼は青春の終わりとともに世を去った。青を恋いながら。 昨日の沼津の空は灰色、海も灰色の曇天。
♥ 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり
牧水と言えば「酒」といわれるほど「酒」が好きだったらしい。牧水の酒の歌だけを集めた歌集が売店で売られていた。牧水が愛用した杯や徳利に見入る男性が多かった。その中に牧水が特に愛用し柩のなかに納め焼かれたが、その青が鮮やかに美しくなったので遺骨の中から取り出して保管し展示されている杯と徳利。牧水の代表歌の短冊の墨筆は無邪気な字で見ていて楽しい。休憩室には本のコーナーもあり、私の歌集『えくぼ』を今井千草さん(短歌人)が見つけてくださった。8年も前か、この記念館にお贈りしたのは。
記念館を見学したのち海岸沿いの千本松原を歩く。海も空もシルバーグレイ、青春時代を終えた、晩年の牧水は海も空もいつまでも鮮やかな青であることを願っていたであろう。全国に300余もある牧水の歌碑の第一号が千本浜公園に立っていた。
♥ 幾山河越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞけふも旅ゆく
旅と酒が生きがいだった牧水、もし彼が酒と女に生きた歌人だったら私はイヤだ。自然へののめり方がすばらしい。文学散歩の最後は乗運寺、牧水の墓があり若山家の菩提寺である。紫陽花がもう咲いていてまるで公園のような墓地の片隅にある牧水の墓に私たちは花を供えた。「缶ビールのほうが牧水は喜ぶかしら」、などと話しながら。
5月26日 松井多絵子