えくぼ

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いま熊本の人びとは

2016-05-16 09:32:14 | 歌う

            いま熊本の人びとは  

 熊本地震発生から1か月過ぎた。当初18万人を超えた避難者が約1万人に減る中、今も自宅が壊れて見通しがないまま避難所に残る人々。今日の朝日歌壇の熊本の歌を、、。

 <馬場あき子、佐佐木幸綱、永田和宏共選>

♥ これ以上倒るる家具も無ければと腹を括りてこの夜酒酌みぬ  高添美津雄

 {評}佐佐木幸綱  大自然の力の前での人間の小ささ。

 <高野公彦、佐佐木幸綱選>

♥ 浴室でグラリと来たる続震にタイルはがれて湯船に落ちる  佐渡京子

  {評}高野公彦   佐渡さん、大丈夫でしょうか。

  {評}佐佐木幸綱  繰り返す揺れで、家が壊されてゆく恐怖と不安。

 以上2首が共選なのは被災者ならではの歌だからか。倒れてしまった家具に囲まれ、もう
倒れる家具がないと安堵し酒を飲む。しかし憩の場の浴室でタイルが剥がれ湯船に落ちることもあるのだ。タイルが凶器になるなんて、おそろしい。今日の朝日俳壇は1句のみである、熊本の句は。大串章が選出している。

 ♦ 車中泊余震のあとの朧月  林田正一

 {評}大串章  車中泊で体調を崩す人も多い。朧月の奥に不安が漂う。

 かすんで光のうすい月は見飽きない。晩春の夜、私はおぼろ月と語りあいたくなる。しかし被災の車中泊の人びとの眺める朧月は不穏な月になってしまうことだろう。

                         5月16日  松井多絵子