駅をテーマにした短歌 ①
染野太朗・吉岡太朗の「短歌同名誌」をいただいた。主にネットを通じて募集した「駅をテーマにした短歌」の特集号である。応募者はツイッターや歌誌でお馴染みの方が多い。応募作品を読みながら駅で多数の歌人に私が出迎えられているような気分になった。「駅」の名歌はたくさんある。私たちは駅にそれぞれの想いがあり、詠みたくなるのだろうか。今日はこの歌誌から「切符」をテーマにした作品をとりあげてみる。
♦ 切符には発つ駅のみが記されて(どこでもいけるはずほんとうは) 杉谷麻衣
※ 電車の切符は親指くらい。この小さな紙切れで私たちは行くきたい所へ行ける。
♦ どの駅で降ろされたってその街で暮らすしかない片道切符 井倉りつ
♦ 朝へ行く片道切符ぎんいろの封をやぶりて飲み込みたれば 春紫苑
※ 片道切符は人生みたいだ。帰りはどうなるか。帰れなくなることだってある。
♦ 大人でもない子供でもないわたくしに買える切符はありますか 片塩宏朗
※ この1首に私はドキッとする。わたしも子供ではないが大人でもない。一体何か。
♦ 会ふほどにあなたは遠くの駅になる 僕は切符を握ってしまふ 浜松哲朗
♦ 僕たちに切符がいらなくなったとき失くしてしまった目的地など みちくさ
♦ おれはおれの、おまえはおまえの喪に服す切符を裏返しにいれてみる 濱田友郎
※ 以上3首は恋の歌。切符が恋の「御守り」ですか。失くさないようにしてください。
♦ 特急は飛騨高山の駅に着く切符を受け取る人は懐かし 太田青磁
※ 駅はみな自動改札になってしまって、飛騨高山の駅に行きたくなりました。
♦ 四桁の切符の数字たしながらひきながらわりながらなほ待つ 千住四季
※ 切符が認知症の予防に利用できることを知りました、千住さん、アリガトウ。
5月10日 松井多絵子