美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

ギリシャ問題についてのメモ(その2)――フェイスブックより (美津島明)

2015年07月16日 23時24分07秒 | 経済
ギリシャ問題についてのメモ(その2)――フェイスブックより (美津島明)



ギリシャの財政破綻さらにはユーロ離脱問題についての続報です。

●7月16日(木)「ギリシャ 財政改革法案を可決」(YAHOO!ニュース)
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6167281?fr=fb_pc_tpc

マスコミでは、「これで、ギリシャのEU脱退がなくなって一安心。デフォルトも回避されそうだし、やれやれ」というノリの報道がなされている。私には、ギリシャの財政主権が、EUの緊縮財政派に乗っ取られた、無残なニュースとしか感じられない。緊縮財政派の軍門に下ったチプラス首相が、反緊縮財政の選挙公約に反し、国民投票で示された国民の意思を無視する振る舞いをしてしまったことは間違いない。EUに首根っこをつかまれたなかでの、ギリシャ国政の動揺が、悲惨な末路を迎えることを危惧する。私は、絶望したギリシャ国民が、極右勢力に期待をかけるようなことにならなければよいが、と思っているのである。ギリシャの次の総選挙がいつになるのかは分からない。しかし、「反緊縮財政路線」を選挙公約に掲げた政党が、ふたたびギリシャ国民の心をつかむことは間違いないだろう。今回、極左連合から裏切られた国民が、今度は極右勢力に望みを託す可能性が少なからずあるような気がする。まあ、素人話だから、話半分で聞いていただければけっこうだが。


●7月16日(木)「薬の輸出禁止=国内流通分の不足警戒―ギリシャ」(YAHOO!ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150716-00000097-jij-eurp

6月から導入されている資本規制の影響で、あらゆる資金の流れが滞っていることが、薬の輸出禁止の原因らしい。薬剤の輸出は、輸出総額のほんの数%にすぎない。輸出総額の35%は石油精製なのだが、資本規制の影響がそこにも及んでいるのだとすれば、ギリシャ経済への打撃は甚大なものだろう。輸出の減少は、端的にGDPの減少をもたらす。緊縮財政の縛りが法制化された現在、私たちは、これからずっとギリシャ経済の惨状を目の当たりにするほかないのだろうか。


●7月16日(木)「アテネで大規模デモ、一部が暴徒化 機動隊が催涙弾発射」(朝日新聞DIGITAL)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/ASH7J1QMMH7JULFA001.html?fb_ref=Default
「財政改革法案は祖父母や両親の世代にはいいのだろうが、自分たちにとっては苦しいだけだ」。これは、財政改革法に反対するデモに参加したギリシャの若者の発言である。このように、緊縮財政は、「子や孫の世代に借金を残さない」ものなのではなくて、子や孫の世代の未来を奪うものであることが、これでよく分かるだろう。いつか言ったことを、いまふたたび、言おう。緊縮財政思想と一定の距離がとれていない論者を、私は、価値ある知識人であるとはまったく思っていない。少なくとも、経済政策に関しては、口をつぐむだけの節操を持っていただきたい。


〔追加分〕
7月11日(土)に配信された、青木泰樹氏の「ギリシャ危機は対岸の火事ではない」(「三橋貴明の「新」日本経済新聞」より)は、とても意義深い論考である。
https://www.facebook.com/mitsuhashipress/posts/513768658788764
財務省シンパのマスコミの緊縮財政肯定論のデマをなで斬りにしたうえで、緊縮財政思想が、ギリシャ経済をずたずたにした道筋を、青木氏は、次のように述べている。なお、引用文中の「PB(プライマリーバランス)目標」とは、「税収だけで、一般歳出(国債費を除く政策経費)をまかなえるようにすること」である。いいかえれば、「基礎的収支を単年度で均衡させる財政目標」である。これが、緊縮財政派の金科玉条であることはいうまでもない。

欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)という三者、いわゆるトロイカに押し付けられたPB目標を達成しようとして、ギリシャは忠実に増税と歳出削減を履行し、結果的に経済を破綻させました。

5年間でGDPは25%減少しました(日本に置き換えて考えるなら、日本の名目GDPは約490兆円ですから、120兆円以上が消し飛んだことになります)。失業率も平均で26%超、若年層に至っては60%超です。若者が希望の持てない、未来のない国にしてしまったのです。万死に値する所業です。

ここまで経済を破壊して得たものは何か。若干のPB黒字だけです。それによって財政再建はかなったのでしょうか、財政破綻の危機は去ったのでしょうか。とんでもない、PBを黒字化しても財政破綻寸前です。PB目標の達成は、国家の安寧も財政再建も、何ももたらさなかったという歴史的事実が残ったのです。これを教訓とせずして、何を教訓とすべきでしょうか。


安倍政権がいま目標に掲げている「PB目標」なるものが、どれほど国民経済に深甚なる害をなすものであるのかを思い知ることが、われわれ日本人にとって、ギリシャ問題から得られる教訓の最たるものである、と青木氏は主張しているのだ。そのとおりである、と申し上げたい。氏の緊縮財政批判が主流にならない日本言論界の惨状を、私は深く憂慮している。氏が語っているのは、いわば、常識にほかならないのである。

常識といえば、「日本の借金は、1000兆円。GDPの200パーセント超で大変。財政破綻なのだ。ハイパー・インフレなのだ。消費増税なのだ」という、毎度毎度、新聞を三か月に一度の年中行事のように賑わせている記事がある。これは、一般国民にとっては常識になっているのであろうが、会計学のイロハからすれば、噴飯物にすぎない。いわゆる「金融の異次元緩和」の断行によって、日本にもはや財政問題など存在しないのである。私ごときがいくら言い募ってみても、大方は信じないのだろうから、ぜひ、青木氏の言葉に耳を傾けてみていただきたい。それでも信じられなければ、北極か南極に行って、その融通のきかない頭を強烈な冷水に突っ込んでみてはいかがか。
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『Road of Resistance』について ―――雑誌『ヘドバン』VOL.6より (美津島明)

2015年07月16日 01時59分18秒 | 音楽
『Road of Resistance』について ―――雑誌『ヘドバン』VOL.6より (美津島明)

先日買ってきた『ヘドバン』VOL.6に『BABYMETALの仕掛け人KOBA-METALと振付師MIKIKO-METALのインタヴュー記事が載っていました。ふたりともに、『Road of Resistance』についてけっこう詳しく語っています。とても興味深い内容だったので、みなさまにそれをご紹介します。記事の中身をよく御存じの方にとっては退屈極まりない内容になるのでしょうが、BABYMETALにいささかなりとも興味のある方がみな『ヘドバン』を読んでいるわけではないでしょう。

ちょっとだけ、『Road of Resistance』の概略を述べておきます。この楽曲は、昨年11月8日に行われたロンドン・02ブリクストン・アカデミーのライヴのラストで初披露され、異国の地においてシンガロングで会場がひとつになるという 驚くべき成果を挙げました。また、イギリスの メタルバンド・ドラゴンフォースのサム・トットマンとハーマン・リがギター演奏で参加していることでも話題になりました。

では、二人のインタヴューの中身に触れましょう。

まず、KOBA-METALから。『Road of Resistance』はいつごろから制作をはじめたのかという質問に対して、「原型はかなり以前からありましたが、音源のような曲構成が固まったのは2013年だった」と思うと答えています。2013年から、とは驚きですね。別のインタヴューで、楽曲をひとつ作るのに半年はかける、と答えていますが、『Road of Resistance』の場合、約二年間かけたことになります。KOBAMETALの、この楽曲への思い入れの深さがうかがわれますね。

『Road of Resistance』は“メロスピ”の要素がふんだんに入っていると言われています。“メロスピ”とは、メロディック・スピード・メタルの略語で、ヘヴィメタルのサブジャンルの一つです。これと近いジャンル区分にメロディック・パワー・メタルがあり、こちらは「メロパワ」と略されます。両者の間には厳密な区別はない、とされているようです。ドラゴンフォースは、フィンランドのソナタ・アークティカとともに、当ジャンルの代表格とされています。

そのドラゴンフォースのメンバーが、当楽曲のサポートをしているのです。メロスピやドラゴンフォースの魅力を、KOBA-METALは次のように語っています。「(メロスピの)高速なギターとドラム、そこに乗っかるメロディーなど、褒め言葉として″クサい″と言われる諸々の要素に惹かれます」。「(ドラゴンフォースの魅力を)例えるならば、あの味をもう一度食べたい!と想像して注文した料理がイメージどおりだったときのような、期待の裏切らなさというか。来るべきところに来てほしいサウンドやメロディーがやってくる、″ドラゴンフォース節″とも呼べるオリジナリティがあると感じています」。

ここまで読んでいただいた方のなかで、「ドラゴンフォースって、どんな音楽をやってるのかな」とお思いになられた人も少なからずいらっしゃると思われるので、一曲紹介しておきます。

DragonForce - Through The Fire And Flames (Video)


これを聴くと、『Road of Resistance』がドラゴンフォースのサウンドを強く意識して作られていることが、すぐに分かりますね。また、上記のKOBA-METALの言葉が、ドラゴンフォースの魅力の核心を突くものであることも分かりますね。『Road of Resistance』の曲作りについては、次のように語られています。「サウンド面に関しては、お題を作る際にジュ-タス・プリーストの『ヘリオン』~『エレクトリック・アイ』のような″登場感″溢れるイントロからスタートし、ドラゴンフォースのような高速メロディック・スピードメタルに突入し、シンガロングでオーディエンスと共に涙する・・・というようなイメージができていたので、必然的にアンセム的な楽曲になったのだと思います」。

ここで「アンセム」という言葉が自明のものとして登場しています。もともとは、イギリス国教会での礼拝用合唱曲・賛美歌・頌歌(しょうか。神などを褒め称える歌)を意味する言葉だったのですが、最近のポップミュージックシーンでは、「グループなどを代表する歌・定番の歌・集団などを祝い応援する歌」という意味で使われているようです。

「歌詞のテーマはBABYMETALが歩んできた道、そしてこれから歩んでいく道をイメージしていますが、BABYMETALに限らずメタルレジスタンスに参加するすべての人々に『自分を信じて前に進もう』というエールを贈っている楽曲だと思います。BABYMETALのメタルレジスタンスのテーマ曲として、大切な意味を持っている楽曲です」と率直に熱い胸の内を語っているのが、強く印象に残りました。

次に、振り付け師MIKIKO-METALの言葉から。まずは『Road of Resistance』を聴いたときの印象について、率直に「恥ずかしながら、私自身はメタルの知識があまりないのですが、ジャンル(ママ)関係なく『お、ここに来て王道がきたな』と思いました」と語っています。というか、彼女は、つねに率直ですね。私は、彼女の語り口にとても惹かれるものがあります。思っていること、感じ取っていることが、すっと言葉になって出てきているような印象があるからです。独創性にあふれた、感性の鋭いタイプに多い語り方のような気がします。

KOBA-METALからなにかオーダーがあったのかという問いに対しては、「戦国時代の合戦や『レ・ミゼラブル』などの″戦(いくさ)″のイメージに、というリクエストがありました。でも、とにかく″大合唱″推しでしたね。KOBA-METALにはさいたまスーパーアリーナでの大合唱がイメージ出来ていたのだと思います」と答えています。このあたり、KOBA-METALの言葉と符合していますね。

「素人目にもあの速さに振りを付けるのは至難の業なのでは?と思うのですが、実際の難しさはいかがでしたか」という問いに対しては、「速い曲の振り付けは得意なほうなのですが、この曲はさすがに速かったですね。でも、三人に振り付けしたとき、すぐに出来たので驚かされました。大人にはなかなか出来ない速度かもしれないです」と答えています。三人の、ダンスのレベルがさらに高度化していることをうかがわせるコメントですね。

『Road of Resistance』の振り付けに関して、いろいろと具体的なことを言っています。それらを列挙しましょう。「イントロが終わり本編が始まってからの、馬に乗って駆け抜けるような振り付けも衝撃的でした。あれがMIKIKOさんのアイデアだとして、すぐにあの乗馬のような振り付けが思い浮かんだのでしょうか?」との問いに対しては、「テーマを頭に入れてから楽曲を聴いたら、あのイントロが3人が乗馬している音にしか聞こえなくて・・・。あのステップは一番最初に決まりました」と答えています。また、一番意識したのは、「3人が勇敢に″壁″に立ち向かっていく姿が可視化できる」ことであると答えています。

当楽曲を振付けたときの3人の様子については、「速さには驚いていましたが、テーマを先に話してから振り付けたので、イメージがすぐに湧いた様子でしたし、とても楽しそうでした。最近は限界に挑戦するのに燃えているように見えますね」と語っています。最近の3人の変化について、「意識の変化もありますし、吸収力は恐ろしいほど速くなっています。経験値と自信が付いたのはもちろんですが、何より3人がライヴをするのが楽しいんだと思います」と語っているのが、特に印象に残りました。

言い忘れてはいけないことがありました。あの旗振りの場面についてです。MIKKIKO-METALによれば、「確か、いろいろ試してみて決めようと、KOBA-METALさんと相談しながら決めた気がします。3人に試しにやって貰ったら立ち姿が凄く勇敢な雰囲気でテーマにハマっていたので、即採用しました」との由です。

『Road of Resistance』の動画は、一度アップしたことがあります。しかし、以上の言葉を頭の片隅に置いて聴くと、なおいっそう深い味わいがあるのではないかと思うので、ふたたびアップしましょう(しつこくてスミマセン)。私があらためていうのもなんですが、この動画の圧倒的な感じはすごいですね。特に、彼女たちが、赤い橋を渡って突き出た舞台で激しいパーフォーマンスを繰り広げているかたわらに、人々の大きな渦ができている場面を目にしたとき、「ここでは、とんでもないことが起こっている」という実感が腹の底から湧いてきました。現場に参加していなくてもそう感じるのですから、現場にいた人たちの心の中はどうなっていたのでしょうか。


BABYMETAL - Road of Resistance - Live in Japan - (Official Video)
コメント (2)
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