美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの提唱者ステファニー・ケルトン教授の来日にちなんだ動画ふたつ

2019年07月18日 01時11分00秒 | 経済


昨日、MMT国際シンポジウムに参加し、来日したステファニー・ケルトンの講演を聴きました。ちなみに場所は、本会場ではなくてパブリックビューイング会場でした。
開口一番、ウォーレン・モスラーの例の「親/子クーポンモデル」が繰り出され、けっこう驚きました。おそらくケルトン教授は、初心者が財政支出と徴税の本質を理解するうえで同モデルが有効であると考えたのでしょう。会場が真っ暗でメモが取れなかったので、記憶を頼りに講演の内容を箇条書きにします。

・はじめに財政支出がある。その次に徴税が来る。
・だから徴税の本質は、財政支出の財源作りなどにはなくて、国民の購買力を奪う度合いを調整することによって経済をコントロールし過度なインフレを回避することにある。
・財政赤字は、それ自体良いものでも悪いものでもない。それゆえ政府は、財政の均衡を目指すべきではなくて、経済全体の均衡を目指すべきである。
・政府の経済政策の目標は、健全財政ではなくて健全な経済すなわち過度なインフレを回避しながら完全雇用を達成し続けることである。
・貿易赤字や貿易黒字はそれ自体でその善悪を断言することはできない。
・インフレの懸念がまったくないときに国民の購買力を奪う消費増税は不要である。
・リフレ派は、中央銀行に頼りすぎなので賛成できない。デフレ時には民間部門はお金を借りようとはしないから、中央銀行の金融政策の有効性には限界がある。財政政策でじかに人々の収入を増やし、消費行動を盛んにすることの方が有効である。

現段階では、残念ながら、昨日の模様を動画でお伝えすることがかないません。その代わりに、三橋貴明氏との翌日の対談と記者会見の動画を掲げておきます。

女史の経済的知見は、大手マスコミが流布しているものとは真逆です。どちらが真実を語っているのか、あなたの目でじっくりと見定めてください。

それにしても、ステファニー女史、なかなかのスター性の持ち主です。ジャンヌ・ダルクのような颯爽とした風情があるのですね。女史の講演を聴き終わっての周りの率直な反応は、「ううん、まいった」というものでした。「いい女」に接した後の男連中のなんともいえない幸福感(降伏感)そのものでした。これは、ほかのメディアでは絶対に報じられない類の情報であると思われるので、あえて当方から申し上げる次第です。「ケルトン現象」はしばらく続くものと思われます。その間に、反緊縮財政派は、反転攻勢の道筋の考案を練る必要があるでしょう。

【三橋貴明×ステファニー・ケルトン】概論、MMT(現代貨幣理論)


財政均衡論の虚構】MMT提唱者 ステファニー・ケルトン ニューヨーク州立大学教授 記者会見[桜R1/7/17]

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第4回 交観会BUNSO 無事に終了しました(その2) 安裕会について

2019年07月16日 01時18分03秒 | 文化


②さいとうあや 「こんなことがありました」コーナー

さいとうさんからは、自民党・安藤裕衆議院議員の後援会「安裕会」の紹介がありました。

安藤裕議員のことは、「未来を考える会」の主催者として、個人的に以前から注目していました。「未来を考える会」は、国会議員の自己研鑽の場で、三橋貴明・藤井聡・中野剛志らの錚々たるメンバーを講師として招いている高水準の勉強会です。一言でいえば安藤議員は、国会議員が緊縮財政の呪縛から脱却しなければ、まともな政策議論などできないという問題意識の持ち主です。ここで、緊縮財政とは「税収で政策的経費をすべてまかなうのが理想である」という財政上の考え方を指しています。

緊縮財政に立脚するならば、どんな素晴らしい政策を立論したとしても、その財源を厳しく問い、それがはっきりしなければ、バッサリと切り捨てられます。また、財政赤字は緊縮財政真理教からすればハイパーインフレを招きかねないところのとんでもない異常事態なので、たとえ不景気下であろうと増税してでも改善すべき、という考え方に陥ってしまいます。当ブログを読んでいただいている方ならご存知の通り、いま話題のMMT(現代貨幣理論)は、その考え方とまっこうから対立します。で、安藤議員はMMTを真正面から肯定する立場にあります。

以下、長くなりますが、安藤議員のHPから引用します。MMTについての簡にして要を得た解説にもなっていますので、ご興味のおありの方はお読みください。

***

「現代貨幣理論とは何か」 2019年6月5日

最近、米国で急に激しく議論が交わされている「現代貨幣理論(Modern Monetary Theory(MMT)、『現代金融理論』とも訳されます)」をご存知でしょうか。

新しい経済理論とも思えそうですが、実際は、現在の私たちが使っている「貨幣とは何か」、つまり「貨幣の本質」について説明している理論です。ところが、これが今、米国で大論争を巻き起こしつつあります。

なぜ、ただの「貨幣の本質」について説明しているにすぎない理論が大論争になっているのか。

それは、この理論が説明している「貨幣の本質」が、私たちが通常考えている「貨幣の本質」とまったく異なる概念だからです。

そして、私たちが普通考えている「貨幣」の概念と、実際の「貨幣の本質」が全く異なるということは、一般的に信じられていて正しいとされている「経済政策」も、「貨幣の本質」を間違えているために「経済政策全般を間違える」という現象が起きているということなのです。

通常私たちは「貨幣」とは「資産」であると考えています。例えば、労働することによって「貨幣」という資産を得、その貨幣を使うことによって貨幣という資産を減らす。国の借金である国債は、国民の資産である貨幣を借りることによって資金調達しているということであり、国民が預金などの貨幣を持っている間は国も国債を発行することができるが、そのうちに国民の預金という資産が枯渇してしまうので国債を発行することができなくなり破綻するということが一般に信じられています。

ところが、現代貨幣理論(MMT)は、下記のように主張しています。

貨幣の本質とは、資産ではなく負債である。ニクソンショックによって金本位制が完全に終わりをつげ、管理通貨制度に移行した現在においては、通貨とは金などの実体のあるものに裏付けられた「資産」ではなく、単なる帳簿記録上の「負債」に過ぎないものとなった。

国の経済成長を実現させるためには、政府は「財政赤字」であるのが通常の姿であり、政府が財政赤字を容認することによって民間に貨幣が新たに供給されるのである。政府が赤字を容認することにより、皆が豊かになる経済成長が実現するのである。
経済が成長するためには貨幣の供給を拡大していく必要があり、そのためには負債の拡大が必要である。そして、負債の拡大とは、「預金を持っている人がいるから借金ができる」のではなく、「借金をすることによって預金が生まれる」のである。銀行による「信用の創造」とは、「銀行が貸付を行うことによって預金通貨を新たに創造することができる」ということであり、これは「万年筆マネー」とも言われる。

この理論で衝撃的なのは、通常は「銀行は国民から預金を集め、その預金を企業などに貸し付けている」と考えられていますが、これがまったくの間違いであるということなのです。

銀行による融資とは、実際は下記のように行われます。

銀行は、融資を行うときにあらかじめ預金を準備しておく必要がない。「銀行が融資をする」、ということは、銀行から見て「貸付金」という「資産」と「銀行預金」という「負債」を「帳簿に書き込む」作業である。銀行がこの帳簿上の記録をすることによって企業は「銀行預金」という「資産」を得るとともに「借入金」という「負債」を負うことになる。(この作業をすることによって、銀行は「預金」という負債を新たに負うことになる。つまり、貨幣の本質とは負債である。)このように、銀行が帳簿に融資を記録することによって新たに預金通貨が発行されるのである。

このようなことを言われると「そんなばかな!」というように感じられるかも知れません。しかし、銀行実務は実際、このようになっています。もちろん、準備預金制度などがありますので、現実にはある程度の預金を集めることは必要ですが、融資の原理は上記の通りなのです。

私たちが日常使っている紙幣にも「日本銀行券」という印字がありますが、これは「日本銀行の負債である」ということを表しています。実際に日本銀行の貸借対照表を見ると、日本銀行の貸借対照表を見ると、現金は日本銀行券として「負債の部」に計上されています

これらの「貨幣の本質」をもとに今後考えるべき政策を考えると、経済政策の柱は下記のようになります。

①管理通貨制度の下では、主権国家は自国通貨をもっている場合、通貨発行権を有するために、国債が破綻することはあり得ない。したがって、日本や米国などでは財政破綻を心配する必要がないので、必要な財政支出は財政赤字を気にすることなく拡大することができる。

②しかし、野放図な財政支出拡大を意図するものではなく、真の国債の発行制約はインフレ率による。

③租税とは、政策経費を賄うために徴収されるものではなく、インフレ率の調整や各種の政策目的のために徴収されている。政府の財源として考えるべきではない。

右記①については、日本の財務省もホームページ上で下記のように主張しています。
日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」(財務省ホームページ「外国格付け会社宛意見書要旨」より)

デフォルトとは「債務不履行」つまり「返済不能になること」を意味しますが、財務省は明確に自国通貨建て国債が返済不能になることはあり得ないと言っているのです。

これは、国は通貨発行権を持つ「中央銀行」が存在しているため、いくら国債の買い手がいなくても、言い換えれば国が借金したい時に国民の誰もが貸してくれない状態になったとしても、最後は中央銀行である日本銀行が貸してくれるし、貸してくれないことは通常考えられないので、国債発行により資金調達が不調に終わることは考えられず、したがって返済不能になることも考えられないということなのです。

実際に、日本銀行はすでに日本国債を466兆円も持っています。平成30年12月末現在の国債残高は1013億円ですが、そのうち46%は日本銀行の保有になっています。

皆さん、不思議に思いませんか?

日銀は、国債を466兆円も持っているのです。日銀は、いつからそんなに国債を買えるだけのお金を持っていたのでしょうか?

いいえ、日銀は当初からそんなお金は持っていませんでした。ところが、日銀は通貨発行権を持つので、国債を買い入れる時は「帳簿に記録するだけで買うことができる」のです。まさに「万年筆マネー」を実現しています。

実は、この理論については、私の主宰する「日本の未来を考える勉強会」では一昨年から取り上げていました。ぜひインターネットで勉強会の模様をご覧ください。この現代貨幣理論について解説している動画が3本あります。一昨年は「貨幣と租税」 。昨年は「貨幣と経済成長」。そして今年は「よくわかる現代貨幣理論(MMT)解説」というタイトルで見ることができます。

この理論がにわかに注目されたのは、米国の最年少女性下院議員のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏が「MMTを使ってもっと財政支出を拡大すべき」という主張をしており、これを理論的に支えているのが民主党大統領候補であるバーニー・サンダース氏の政策アドバイザーであるステファニー・ケルトン教授である、という構図です。

今年の3月13日のブルームバーグの記事です。

「現代金融理論」にわかに脚光
米財政赤字拡大や「AOC」効果で
(一部省略して転載します)
何年も無視されてきたMMTが、なぜ今になって突如、米国の経済論議の焦点となったかを巡っては当然、疑問が生じる。次に幾つか考えられる答えを挙げてみる。

MMTの論旨は、自国通貨を持つ政府の支出余地は一般的に想定されるよりも大きく、全てを税金で賄う必要はないというものだ。この見解によれば、米国はいかなる債務返済に必要な貨幣も創出できるため、デフォルト(債務不履行)に追い込まれるリスクはゼロということになる。

米国の政治にMMTを持ち込んだのはバーニー・サンダース上院議員だ。しかし、サンダース議員がMMTをはっきりと支持したことはない。

支持を明確にしたのはサンダース議員の選挙運動に参加したこともあるニューヨーク州選出の新人議員で、AOCの頭文字で知られるアレクサンドリア・オカシオコルテス氏だ。オカシオコルテス氏はMMTについて、「会話でもっと盛り上げる」べきだとし、議会がその「財政権」を動員するよう呼び掛けている。

MMTの措置を本格的に活用したとほぼ言える国は日本だろう。日本では20年前に金利がゼロに達し、日本銀行が一部ファイナンスしている公的債務残高はGDPの約2.5倍の規模にある。
赤字続きでもインフレ高進はなく、債券市場からの資金逃避の動きもない。

米国トップの大学の著名エコノミストは一斉にMMTを批判している。ハーバード大学教授で元財務長官のラリー・サマーズ氏は、「重層的な誤り」があると論評。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏や、国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランシャール氏もMMT攻撃に加わった。と同時に、こうした著名人らから、公的債務懸念は行き過ぎだとして赤字拡大の支出に好意的な姿勢が見られるのも最近は多くなってきた。

ここでは、日本がすでにこのMMTを実際に意図しないうちに実証しているのではないかと指摘がされています。

この貨幣論の概念を「資産」から「負債」へと変えるのは、まさしく「天動説」から「地動説」へと概念を変更した「コペルニクス的転換」と言えるかも知れません。今までの主流派経済学を使い、実践してきた経済学者から反発されるのは当然なのでしょう。実際に、この理論を米国で提唱しているケルトン教授は下記のように述べています。以下、4月17日の朝日新聞の記事より抜粋します。

「天動説から地動説へと私たちの考えが変わるまでには時間を要しました。いま私たちは租税が中心にあって、経済がその周りを回っていると考えています。増税がなければ、よい経済は築けないと。しかし、「コペルニクス的転回」は近づいています。じきに私たちは、租税は分配をコントロールしインフレリスクに対抗するものである、と考えるようになるでしょう。天動説から地動説へのような、思考の大きな飛躍が求められています」

今、日本では『消費税増税について最終的にどうなるのか』という議論がされています。

しかし、今日お話ししたように租税とは政策経費を賄うものではなく、インフレ率を調整するために存在するのだとしたら、また、自国通貨建ての国債が返済不能になることはあり得ず、日本の財政破綻の心配はまったくないのが本当だとしたら、大きく政策転換をする必要があるのではないでしょうか

私の勉強会では、以前から貨幣の概念が重要である、という観点からこの現代貨幣理論を取り上げてきました。それに基づいて、消費税増税の凍結や減税を主張してきました。

ここで米国からこのような議論が沸き起こってきたことは、まさに「神風」というべきかも知れません。デフレ脱却ができずに苦しむ日本をきちんとした経済成長路線に戻すためにも、既存の誤った概念に基づいて立案される誤った経済政策を繰り返すのではなく、正しい貨幣の概念を理解し、経済成長を取り戻すための正しい経済政策を実践していかなくてはなりません。

財務省はこの現代貨幣理論を大いに警戒し、早速反論資料を取りまとめて公表しています。新聞記事にも必ず「異端の理論MMT」といった否定的なタイトルが並びます。
しかし、私は、長い間デフレから脱却できず貧困化する日本を成長路線に戻すために正しい政策を主張していきたいと考えています。

ぜひ日本の未来を考える勉強会の動画を見て、現代貨幣理論への理解を深めていただきたいと思います。ご希望であれば、私も説明に伺いますので、お声掛け下さい。

どうぞよろしくお願いいたします。

***

安藤議員が、いかに重要な指摘をしているのか、彼が広めようとしている貨幣観・税金の本質論が政治エリート・言論エリートにおいて常識として定着することが日本の繁栄にとってどれほど重要なのか、上記の長い引用を読んでいただいた方ならよく分かるものと思われます。

ちなみに私は、さいとうあやさんのご紹介の後、安裕会に入会いたしました。

安裕会入会申込の概要は以下の通りです。

***

〇通常会員 年会費一口10000円(複数口も可)
      特典 各講演会、勉強会等のご案内
         「活動報告」の発送 等
〇特別会員 年会費 一口120000円(月額10000円)
      特典 会員限定による特別講演会・セミナーのご案内
         「活動報告」の発送
         国会案内や本会議・委員会傍聴のご案内 等
      *月額100000円の自動振替手続き(銀行)も承ります。
〇振込先 ●ゆうちょ銀行 00190-4-418761 安裕会(アンユウカイ)
     ●りそな銀行 衆議院支店 普通0055199 安裕会 代表 安藤裕
〇入会申込・お問い合わせ
・京都事務所 〒611-0042
       京都府宇治市小倉町神楽田35-1 MSKビル1階
       ☎0774-28-6789 📠0774-28-6787
      E-mail info@andouhiroshi.jp
・国会事務所 〒100-8982
       東京都千代田区永田町2-1-2
       衆議院第二議員会館705号室
       ☎03-3508-7409 📠03-3508-3889
E-mail i12690 shugi in.go.jp
〇WEB 衆議院議員 自民党京都府第六セミナー選挙区支部長
    あんどう裕 オフィシャルWEBサイト
    http.//www.andouhoroshi.jp/
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第4回 交観会BUNSO 無事に終了しました(その1)米中経済戦争について

2019年07月13日 18時19分59秒 | 文化


・実施日時と場所 令和元年七月七日(日)午前11:00~午後2:00
         新宿 珈琲西武 個室
・内容
①美津島明より 藤井厳喜氏「ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート6月号」から
テーマ:米中経済戦争について

・チャイナは世界の通信覇権をアメリカから奪うべく、盛んに攻勢をかけてきた。その先頭に立っているのがファーウェイである。ファーウェイは英国旧植民地勢力(タックスヘイブン擁護派)と組んで、金融通信網の覇権も狙ってきた。

・ファーウェイは、海底光ファイバーケーブルの地球規模でのネットワーク構築を目指してきた。つまり携帯スマホの覇権だけを目的としていたわけではない。チャイナはこの海底光ファイバーケーブルに人民元決済のシステムを乗せることにより、米国のドル覇権を凌駕しようとの戦略を展開している。

・シティを中心とする英国タックスヘイブン養護派は、タックスヘイブンとしての香港を失いたくないので、香港の抗議デモを煽ってきた。これに対する習近平の妥協が、ロンドンと上海の株式相互上場の実現であった。

・1997年の香港返還に関して、一般に知られていない事実がある。それは99年間の租借で英国が香港に返還しなければならなかったのは、香港の新租界と呼ばれる地域だけだった、という事実である。香港の本体である香港島と九龍半島の先端部に関しては、99年間の租借地ではない。そこは純然たる英国の領土であって、英国は返還しなければならない理由はまったくなかったのだ。しかし英国は新租界のみならず,元来の自国領土である香港島と九龍半島の先端部分をチャイナに返還することを決定した。英国はタックスヘイブンあるであり、フリーポート(自由港)である香港で、イギリス企業が自由にビジネスを継続するために、香港全体の返還に応じたのである。この時点でイギリスは香港のデモクラシーをカネのために売り渡したのである。

・トランプ大統領が香港の抗議デモに冷淡なコメントしか寄せていないのは、抗議運動の背後に英国タックスヘイブン擁護派の金融資本の動きがあることを察知しているからである。

・習近平は「ファーウェイを擁護し、英国旧植民地勢力と組んで米国と対立する」のか、「ファーウェイを処分し、英国旧植民地勢力と断絶する」のかの二者択一を迫られている。

・米国は、江沢民派の人権弾圧に焦点をしぼり、江沢民派幹部の米国入国拒否や、彼らの隠れ資産摘発に動いている。米国務省と法輪功の協力関係から、それが読み取れる。

 *これは、トランプ米国が、習近平チャイナに対して、「江沢民の次は、習近平、お前だぞ」という警告を与えていると同時に、「当方の要求を呑むならば、このあたりで勘弁しておいてやるのみならず、お前の権力闘争を有利に運ぶサポートをすることだってできるんだぜ」というメッセージを送っているものと解釈できます。なかなかの高等戦術です。

・世界のデータケーブルの中心はロンドンであり、これが英国のタックスヘイブン利権と英国の特権を支えていた構造であった。これは大英帝国の遺産であり、英国はこの特権に依存してきたが、タックスヘイブンをめぐっての時代の趨勢から、もはや、それが継続できなくなりつつある。

・英国のEU離脱強硬派は、上記の特権的地位を利用して、EU離脱が容易にできるものとタカをくくっていたが、それができなくなり、苦境に陥っている。

・6月29日(水)の米中トップ会談では、わずかながらではあったが実質的な進展があった。それは第一に米中経済協議の再開が決まったことである。

・詳細は発表されていないが、チャイナはアメリカからの輸入、特に農産物の輸入を再開することに同意した。トランプはこれにより、2020年大統領選における中西部の農民票を固めることが出来た。これは現行の制裁関税の引き下げなしに勝ち得た成果である。

・米企業のファーウェイへの輸出に関しては、原則としてこれを認める方向で検討する。ファーウェイ製品の輸入は禁止したままである。ただし、ファーウェイ問題は米中経済協議の最後まで課題として残すことになっている。米国の安全保障にとって深刻な要素がからんでいるので当然のことである。つまり、即輸出が再開されたわけではない。

・チャイナ側は、対米経済協議の早期妥結が不可能であることを悟って、持久戦を覚悟した。習近平は、トランプが大統領選挙の圧力で妥協すると楽観視しているようだ。

・チャイナはアメリカよりはるかに苦しいがいまだに余力がある「フリをする余力」ならある。

・大統領選挙でトランプが安易な対中妥協をすれば、むしろ支持を失うので習近平の楽観的期待は空振りに終わるだろう。

・米中両国は以上のように虚々実々の激しい駆け引きを展開しているが、これをまったく無視するかのように、日本大手企業の対チャイナ傾斜が続いている。安全保障上、日本はアメリカと一体となってチャイナの脅威に対抗しなければならないのは明白である。日本大手企業の対チャイナ傾斜は、アメリカの目には利敵行為と映る。日本企業は、アメリカの厳しい制裁措置を覚悟しなければならないだろう。
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MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その13)

2019年07月11日 19時53分09秒 | 経済

間違った貨幣観に基づく正統派経済学は、かつての天文学における天動説の位置にある存在であると申し上げるべきでしょう。

*MMT論者モスラーとオーストラリアの正統派経済学者の、生々しくて興味深いやり取りが登場します。

支払い能力上のリスクなどまったくないということは、すなわち、連邦政府が破産することなどありえないということであり、われわれの政府にとって(オバマ大統領が繰り返し誤って述べたごとく)“財政支出すべきお金が底をつく”ことなどありえないということです。これまたオバマ大統領が述べたことですが、合衆国連邦政府の財政支出額は、借り入れ可能額によって制限されてなどいません。

だから、あなたが今後「社会保障のためのお金はどこからやってくるのだろうか」というだれかの言葉を聞いたら、進み出てこう言ってあげてください、「それはただのデータ入力なのです。そのお金は、ボーリング場でのあなたのスコアと同じ場所からもたらされます」と。

違った風に言えば、合衆国の政府小切手は、もしも政府が不渡りにしようと思わなければ、不渡りになることはありません。

*念のために申し上げておきますが、不渡りとは、小切手や手形の支払義務を負った者が当座預金の残高不足などによって、支払い期日が過ぎても小切手や手形の決済をできない状態です。

連邦政府の小切手が不渡りになることはありません。

数年前に私は、オーストリアのある経済会議で「政府の小切手が不渡りになることはない」というタイトルの講演をしました。聴衆のなかに、オーストラリア準備銀行の研究責任者であるデビッド・グルエン氏がいました。それは見せ場でした。

*オーストラリア準備銀行は、オーストラリアの中央銀行です。

私は、それまでの数年間ずっと彼を筆頭とするアカデミックのグループに対して講演をし続けていました。私は、彼らの大部分に、政府の支払い能力など問題ではないということを信じさせることができないままでした。彼らはいつも、「アメリカ人は、オーストラリアのような小さくて開かれた経済はアメリカとは異なるということを理解していない」という常套句で議論をし始めました。彼らの(たぶん)いやというほどに教養にあふれた頭蓋骨に少なくとも「あなたがたが考えていることはどれもたいした問題ではない」という一事を呑み込ませる方法はまったくないように思われました。表計算ソフトは、表計算ソフト以外の何物でもないのです。ビル・ミッチェル教授と彼の数人の同僚以外の人たちはみんな、心の壁を有しているように思われました。そうして彼らは、市場がオーストラリアに敵対して“赤字を補填する”ことができなくなったらどうなってしまうのかということを深く恐れているのでした。

だから私は、合衆国政府の小切手がなにゆえ不渡りにならないのかを話始めました。その数分後、デビッドは挙手して、やや上級の経済学徒たちにとっては耳慣れたセリフを次のように繰り出しました。

「国債の利子率がGDPの成長率よりも高くなると、政府の国債は持続可能なものではなくなります」と。これは、質問として繰り出されたものではなくて、事実として開陳されたものでした。

私は次のように応じました。「僕は実務家なんだよね、デビッド。で教えてほしいんだけど、‘持続不可能な(unsustainable)’ってどういう意味なんだい。もしも利子率がとても高くなって、いまから20年後に、政府の借金が膨大になったら、政府は利子の支払いができなくなるだろうって言いたいのかい。で、もしも政府が年金受給者に小切手を切ったら、その小切手は不渡りになってしまうって言いたいのかい?」

デビッドは沈思黙考してから言いました、「ご存知のように、ここに来たとき、オーストラリア準備銀行の小切手決済がどうやってうまくいくかを考え抜くとは思いもしませんでした」と。彼は、そのセリフにいささかのユーモアを交えようとしているようでした。しかし会場のだれも笑ったり、物音を立てたりしませんでした。みんなは、固唾をのんで彼の言葉を待ちました。その場面は、この問題をめぐっての“決闘”でした。デビッドはついに発言しました、「小切手は決済されます。しかし、インフレが惹起され、通貨は暴落します。それが、“持続不能”の意味です」と。

重苦しい沈黙が会場を満ちました。その長い議論は終わりました。支払い能力は、小さな開かれた経済においてさえも問題ではない、ということです(デビッドは事実上それを認めたのです)。ビルと私は、高いレベルの敬意を常に払っていました。その敬意は、以前の懐疑派たちから“ええ、もちろん、私たちはいつもそう言ってきた”という通常の外向きの形式を奪うものです。

*上記の「ビル」は、先ほど登場したビル・ミッチェル教授のことです。モスラ―の良き理解者のようです。

私はデビッドと議論を続けて、次のように言いました。
「えーと、大部分の年金受給者は、退職したとき、年金の基金がちゃんとあるのかどうか、そうして、オーストラリア政府がきちんと年金を支払ってくれるのかどうかを心配しているんだよね」
デビッド、答えていはく「いいえ、彼らは、インフレとオーストアラリアドルの相場を心配していると思います」。

そのとき、ニュー・キャッスル大学の経済部門の部長であるマーチン・ワット教授が口をはさみました。「なんてこった、デビッド!」 で、デビッドは、沈思黙考したうえでしぶしぶ「あなたは正しいと思います」と言いました。

さて、その日出席したシドニーのアカデミシャンたちは、実際何が事実であると確認したのでしょうか。以下のとおりです。

自国の通貨を使う諸政府は、彼らが欲するものを欲するときに支出できる。それは、アメフトのスタジアムが好きなように得点ボードに点数を掲げることができるのと同じである。財政支出の行き過ぎは、インフレや通貨の価値の暴落を招くかもしれないが、決して小切手の不渡りをまねくことはない。
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MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その12)

2019年07月09日 18時37分03秒 | 経済

*けっこう間が空いてしまいました。コンスタントに発表できるよう心がけます。

さあ、一から始める、ある国家の通貨を造りましょう。新しくアナウンスされた通貨を伴った新国家を想像してみるのですね。いまのところだれもその通貨を持っていません。そこで政府は、たとえば、適正な税があると宣言します。では、どうやってその税金は支払われるのでしょうか。政府が財政支出をしてはじめて、それが可能になります。政府がその新しい通貨を支出した後にはじめて、人々は税金を支払う元手をゲットするのです。

繰り返します。税金を支払うための元手は、政府の財政支出(かもしくは貸し出し)からもたらされます。ほかのどこからもたらされるというのでしょうか。注2)

*以下の注2)は、読み飛ばしていただいてけっこうです。訳もあまり良い出来ではありませんし。

注2) 市中銀行が中央銀行のFRBに設けている準備金勘定を理解する人々のために申し上げるのですが、FRBは、準備金の追加なしにいわゆる準備金の流出を実現することはできない点に留意していただきたい。で、財務省の残高が増えたとき、FRBは決済日に何をするのでしょうか。

*次の「It does repos」のなかの「repos」の適切な訳が浮かびません。

財務省証券を買わなければならないという銀行制度につぎ込まれるべき基金を追加するのです。さもなければ基金が、財務省証券を買うためにそこに存在することはないでしょう。そして市中銀行は、彼らの準備金勘定に当座借越を有することになってしまうでしょう。FRBにとって、当座借越とはいったい何でしょうか。当座借越とは、機能面からすれば政府からの借金です。ゆえに基金は、いずれにせよ、政府それ自体に由来する財務省証券を買うために使われることになります。税金を支払ったり国債を買ったりするための元手は、政府の財政支出からもたらされます。政府がまず支出し、その後税金を集めたり借り入れたりすると考えるのがベストです。(以上 注2 )

話を戻しましょう。税金を支払うための基金は、政府の財政支出(かもしくは貸し出し)からもたらされる、ということは、政府はまず最初に財政支出をしなければならないということを意味します。そうして、財政支出は、結局のところ、私たち民間部門に、税金を支払うための基金を供給するのです。この場合、政府は、あの両親、すなわち、子どもたち実際にクーポンを集めはじめることがでできるようにする前に、まずクーポンを配らなければならないあの両親によく似ています。そうして、政府も両親もともに、彼らが支出した額より彼ら自身の通貨をより多く集めることはできません。そんなお金がほかのどこからもたらされるというのでしょうか。注3)

*次の注3)も読み飛ばしていただいてけっこうです。

注3)銀行制度の内側で、いま述べたことはどのようにうまく働いているのか書き留めておきましょう。あなたが連邦政府に対して小切手を切って税金を支払うとき、その税額は、FRBの準備金のなかのあなたの銀行の準備金口座の借り方に記入されます。もちろん、FRBの準備金は連邦政府からもたらされます。民間部門は、準備金を生み出すことができません。もしあなたの銀行が準備金口座にお金がまったくなかったら、あなたが切った小切手は、その銀行の準備金口座の当座借越になります。当座借越は、連邦政府からの借り入れです。だから、どんな場合でも、連邦政府への支払いをする元手は、連邦政府だけによってもたらされるのです。(以上 注3)

だから、われらが政治家さんたちは、政府は、彼らが財政支出をするためには、徴税か借り入れによって国民のドルを手に入れることが必要であると固く信じているのではあるのですが、真実は以下の通りです。

私たちは、私たちが税金を支払うのに必要な元手を得るために連邦政府の支出を必要とする。

私たちは、連邦政府(やボーリング場やアメフトのスタジアム)がそうするようには、自分たちの数字を変えることができません。注4)

注4)ちょっと留意していただきたいことがあります。州と地方政府は、USドルの使い手であって、発行者ではありません。そこは連邦政府とは異なります。実際、合衆国の州政府は、私たち民間人とよく似た位置にいます。州政府も私たち民間人も小切手を切る前に、銀行口座にお金を入れる必要があります。さもないと、小切手は不渡りになります。親子のアナロジーのなかで、私たちと州政府は子どもたちとほとんど同じ立場にいます、与えるためにはまず得る必要があるという点において。(以上 注4)

ちょうど、子どもたちがクーポンの支払いをするために、稼いだりどうにかクーポンを手に入れたりしなければならないように、私たち国民は、税金の支払いをするためにUSドルを稼いだり、どうにかして手に入れたりしなければなりません。そうして、いまや読者のみなさんがお分かりのとおり、国民経済全般で起こっていることは、それぞれ独自のクーポンを発行するそれぞれの家計において起こっていることと基本同じです。子どもたちが両親に支払うのに必要なクーポンは、両親からもたらされなければならないのです。

そうして以前述べたように、財政支出はどんな場合においても運用上収入(すなわち、税収と借り入れ)によって制限を受けていません。はい、議会が設けたところの、“自分に課した”財政支出に対する制限はありうるし、また実際にもありますよ。しかし、それはまったくの別問題です。これには、債務上限ルールや財務当座借越ルールや連邦政府が財務証券を買う場合の諸制限が含まれます。それらはすべて、貨幣制度についてのまともな知識を持っていない議会によって課されたものです。私たちの現代貨幣論からすれば、それらの自ら課した制限はすべて、公益の増進に対して逆効果をもたらすものです。

それらはすべて、なくもがなの、貨幣の供給にとっての障害物にほかなりません。そうしてそれらは、(それらがなければ起こるはずのない)諸問題を惹起します。事実、それらのいくつかは最近財政危機をもたらし、現実経済に悪影響を与え不況をもたらしました。

政府の財政支出はどんな場合でも運用上収入の制限を受けていない、という事実は、

支払い能力のリスクなどというものはまったくない

ということを意味します。言葉を換えれば、連邦政府は、自国通貨によってあらゆる支払いをなしうるのです。むろん、財政赤字がどれほど膨大であろうと、もしくは、税収がどれほど少なかろうとも。


しかしながら、だからといって私は、政府は前後の見境もなしに欲するすべての支出をすることができる、放漫な支出をせよ、とそそのかしているわけではありません。過大な財政支出は、物価の上昇をもたらし、インフレを惹起してしまいうるのです。

*MMTへのステロタイプの批判のひとつに「MMTは、ハイパーインフレをもたらす野放図な財政支出を是とするとんでもない理論である」というのがありますが、それがいかに的外れか、上の2文から即座に分かります。
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