うれし涙を見るために・・・芽育学院

みんなの《うれし涙》を見るために・・学院長がソウルする!
 《うれし涙》こうして流す。
  《うれし涙》家族で流す。

私たちの脳は、穴の開いたバケツ

2012-07-13 01:01:08 | 講師から

 高田市駅校のプーさんこと、篠原です。

 また、いつも通り、プーさんの小話を一つ。
 プーさんの家の表札には、Mr.Winnie(ウィニー)じゃなくて、Mr.Sanders(サンダース)と書いてあります。プーさんは、周りからこう呼ばれたいのでしょうか。
 ただ、周りのキャラクターがプーのことをサンダースと呼ぶところは、私の知る限り一度もありませんね。



 さて、話を戻しましょうか。
 今まで私は、このブログで「気持ちの作り方」、「成績の上がり方」について心理学の知識を交えつつお話ししてきました。

 今回も心理学の知識を交えつつ、「忘却曲線」というものについてお話します。この話はすでに去年の同じくらいの時期に八木校のらびーがお話してくれているので、そちらも参考にしてください。

 らびーの話。←ここをクリックしたら読めますよ。

「忘却曲線」とは、聞き慣れない単語ですよね。
 難しそうな名前で書いていますけれど、内容はとても簡単です。

 ただ説明すると、眠たくなってしまいますでしょうし。
 ここはひとつ、物語風にお話しましょう。



(注:ここからのお話は、私の作り話です)

『おっちゃん、暗記のなぞに迫る!』

 昔々、あるところにエビングハウスというドイツ人のおっちゃんがいました。
 いい感じの髭を蓄えたダンディーなおっちゃんです。
 おっちゃんは、暗記が大の苦手。



 おっちゃんは齢(よわい)59歳。もうすぐ還暦を迎えるこの歳になって、アメリカのラスベガス、カジノに行き、一攫千金の夢を掴もうと思い立ちました。
 ただ、おっちゃんは、英語もとても苦手……。
 いきなりラスベガスに行っても、おそらくイエス・ノーとサンキュー・グッバイの4語だけでは、一攫千金は夢のまた夢です。

 そこでおっちゃんは、「芽育でEnglish(注:実在しません)」という駅前で流行っている英会話教室に通ってみることに。

 そこには、とても個性豊かで教え方の巧い講師の方がたくさんいるところでした。

「ここでなら、僕も英語マスターだ!!」

 たわわな髭をなでなでしながら、おっちゃんは意気揚々です。
 ただ、人生はそんなに上手くは行かないもの。

 英会話教室に通い始めてから、ひと月が経ちました。
 それなのに、おっちゃんに英語力は牛歩の如し、いやいやナメクジ並みのスピードでしか伸びて行きません。(お髭は嫌ってくらい伸びるのに!)
 そうです。おっちゃん、自分が暗記が超ニガテ! ってこと、すっかり忘れていたんですね。
 お髭はフサフサなのに、お頭の方はスカスカです。

 しかし、夢見るおっちゃんはこんな程度じゃへこたれません。

「大の仲良し、ツルツル頭だけど、頭の良いフェヒナーくんに相談してみよう」



「フェヒナーくん! 久しぶり」
「久しぶりじゃな。最近ワシは、太陽の研究のし過ぎで失明寸前なんじゃ……」
「ええ! だいじょうぶ?(つか、喋り方えらい老けたな……)」
「大丈夫、大丈夫。研究にくらべれば眼くらい安いもんじゃよ。それより、そっちから連絡をしてくるってことは、なんかあったかいの?」
「そうなんだよ。実は、かくかくしかじかで……」

 そうして、自分の暗記力をどうやってUPさせればいいのかアドバイスをもらったエビングハウスのおっちゃんは、この一言に動かされます。

「暗記力UPの方法なんざ知らん。気になるのなら、ワシみたく、そっちも研究してみぃ」


 さてさて、この日からおっちゃんの研究が始まります。

 まず、100個の英単語を覚えました。
 努力のし過ぎで、おっちゃんは既にへろへろでしたけど。
 けど、暗記は苦手とか言いながら、実は努力してなかっただけなのかもしれませんね。

 次に、おっちゃんはパソコンを駆使して、今覚えた100個の単語がランダムで出てくる試験問題を作成しました。
 いやー、こんなものを作成するなんて、おっちゃん実はすごい人なのかも。
 プログラマーとかになった方が堅実な夢かもしれませんね。

 さて、その試験を、20分後、1時間後、1日後、1週間後、1ヶ月後と5回テストをしてみました。

 20分後……
「なっ……58点……もう、半分くらい忘れてしまった……」

1時間後……
「44点……半分もない」

 1日後……
「26点。 暗記はやっぱり苦手だーーーーーー!」

 あらあら、おっちゃんは自分の頭の悪さ加減に自暴自棄になったしまったようですね。
 この後もおっちゃんは、辛うじて試験を続けます。

 1週間後……
「23点。あれ? あんま減ってない」

 1ヶ月後……
「21点。おお、忘れなくなって来たんじゃない?」

 おっちゃんは覚える単語を毎回変えて、時には、研究に忙しいフェヒナーも参加させて暗記のなぞに迫っていきます。

 そして、誰が何回やったとしても、毎回ほぼ同じ点数になってしまうことがわかりました。
 それをグラフにしたのが下のものです。



 そうです。おっちゃんは暗記が苦手じゃなかったのです。
 一般人並でしたね。おっちゃんの苦手だと考える、思い込みの部分がとても強かったのでしょう。

 これが分かったおっちゃんは、今度は勉強法を考えます。

「1時間経つと覚えている量は半分になってしまう。
 10個覚えても、100個覚えても、覚えてから1時間経てば半分に……ということは」

 そうですね。解決方法はただ一つです。
 たくさんの量を完璧でなくてもいいから5分(量によっては増やす)くらいで、ある程度覚えて(8割くらい分かるかなーってのが目安)
 20分から1時間経ったらもう一度暗記をする。
 それを何度も繰り返す。

 おっちゃんは、たくさんの量の単語を短い時間を使って、短いスパンで何度も繰り返すことで、暗記することができるようになったのです。

 おっちゃんは今まで一度は完璧になるまで暗記をして、繰り返すことをせずに安心しきってしまっていたんですよね。
 私たちの脳は、忘れていくようにできているんですから。

 楽しいこと、嫌なこと。大切なこと、どうでもいいこと。一瞬の色や匂い。声音やぬくもり。
 私たちは、そんなすべての情報をいったんは、頭の中に暗記するんです。
 けど、そんな膨大な量の情報をいつまでも覚えていられないから、覚えていたらパンクしてしまうから、淋しいけれど、どんどん捨てていくんですよね。
 
 そして、捨てていく時に、間違えて大事なことまで一緒に捨ててしまうんですね。

 みんなもたまにはあるでしょう。
「あ、ペンを一階に置き忘れちゃった」
 でも、一階に降りた時には、
「あれ? 私は何をしに来たのだっけ?」
 ってね。

 時間っていうのは時には優しくて、時にはとても残酷なものなんですね。

 太陽の研究で髪の毛もチリチリになったフェヒナーは、友人の研究の手伝いが終わった時に、ぼそりと呟きました。

「私たちの脳は、穴の開いたバケツみたいなもんなんじゃなぁ。開いた穴は塞げはしないから、次から次へと水を注いでやるしかないということじゃ」
 ツルツルの頭を撫でながら……


 さてさて、エビングハウスのおっちゃんはその後どうしたのでしょうか。
 うんうん、無事、英会話力を習得したようです。
 最近もっさりしてきた髭を優雅に撫でながらご満悦な表情を見せてますね。

 しかし、そろそろ私はお暇のお時間です。
 おっちゃんがラスベガスで夢を叶えたかどうかは、また次の機会に……ということで。

 めでたしめでたし?

おしまい




 どうでしたでしょうか?
 このお話、メイキーたちの参考になりましたか?

 暗記ものをする時の極意は
1、 短い時間で
2、 たくさんの量を一気に覚えて
3、 何度も繰り返すこと

 ということですね。小テストの前日とか直前に必死で覚えることは、全く意味がないってことですよ。いいですか?


 もしも、こういう小噺タイプの記事の評価が高ければ、今後このスタイルで書いていってもいいかなー。
 そんなことを思っています。
 
 ではでは、またの機会に。




*登場人物紹介

 ・ヘルマン・エビングハウス(1850年~1909年)
   ドイツの心理学者。フェヒナーの影響を受け、記憶の忘却の研究をした。
   「節約法」「忘却曲線」「エビングハウス錯視」などを発見。

 ・グスタフ・フェヒナー(1801年~1887年)
   ドイツの物理学者・哲学者。実験心理学の成立に影響を与えた。
   「ウェーバー・フェヒナーの法則」「精神物理学」などを作った。
   ちなみに、作中の失明しかける話は、事実です。太陽の残像の研究をしていました。
コメント
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