ミクロネシア 青年海外協力隊環境隊員のブログ

ミクロネシア連邦国において環境分野で活動する青年海外協力隊、シニアボランティアからの報告。コメントお待ちしています。

第n回目の水質検査!!

2010-02-23 10:23:58 | コスラエ州
廃棄物処分場の濱崎SVです。
第n回目(私が赴任して第1回目)の排水・水質検査を1月27日(金)に行いました。
この検査は私が勤務しているDT&IではなくKIRMA(Kosrae Island Resource
Management Authority)という州の環境関係の主管局で、2008年11月から検査を開始し、これまで9回不定期的に実施しており、今回が10回目です。
継続していることを表現するため「n回」としました。
不定期とは言え、その記録がデータベース化されていることに感心しました。
廃棄物処分場の記録と同様に、以前赴任されて指導されたJOCVの努力がきちんと引き継がれていることはうれしいことです。
コスラエの中でこうして継続されている事実を目の当たりにすると我々ボランティア活動の意義を肌で感じます。ただ残念なことはこの貴重なデータの取り扱い(解析、問題把握、改善へのフィードバック)に課題があり、今回赴任した新JOCV(KIRMAでのモニタリング支援)の仕事になるでしょう。
これまでの検査項目はCODだけでしたが、今回これにPH、温度、天候を記録として入れてもらうようにしました。
PHは今回私が持参したPH1~11まで判定できる簡易ユニバーサル試験紙です。
以下私なりに解析した状況を報告します。

1)検査場所は次の4か所です。
従来は第1浸出液調整池とマングローブ林の2か所でした。
問題が発生し、改善を図る必要があれば、場所を特定し改善策を決定するためには新たに2か所を追加し、合計4か所のデータを取得するようにしました。

2)検査項目と機器
現状の検査機器の関係上、以下の2種が主項目です。
今後は検査機器の装備状況に合わせて検査項目を増やしていく必要があります。
(a)COD(Chemical Oxygen Demand)
水中の被酸化性物質量を酸化するために必要とする酸素量で示したものです。
CODの値は、試料水中の被酸化性物質量を一定の条件下で酸化剤により酸化し、その際使用した酸化剤の量から酸化に必要な酸素量を求めて換算したものであり、単位は ppmまたはmg/Lを使用します。
CODが高いほど有機物量が多いと言えます。なお今回の測定に使った機器は共立理化学研究所製の簡易パック試験器です。
(b)PH(potential Hydrogen, power of Hydrogen)
物質の酸性、アルカリ性の度合いを示す数値です。
PHは0から14までの値があり、中間点のPH=7 の場合を中性と呼ばれます。
pH値が小さくなればなるほど酸性が強いとされ、逆にpH値が大きくなればなるほどアルカリ性が強いとされます。
なお今回の測定に使った機器はアドバンテック製の簡易万能試験紙です。

(3)検査結果
検査結果は以下の通りです。
COD(単位はmg/L)は第1浸出液調整池とマングローブ林はそれぞれ40、16で、追加した二点は(第1浸出液調整池-オーバーフロ管周辺と第2浸出液調整池)いずれも40でした。
一方PHはごみ処分場からのマングローブ林へ排水される経路に沿うと、1)第1浸出液調整池は10、2)オーバーフロ管周辺は9、3)第2浸出液調整池は8、4)マングローブ林は7で値は徐々に減少し最初の弱アルカリが中性になっていく経過が読み取れました。

(4)考察
日本の公共水域への排水の水質基準をベースに考えてみます。
この中で「生活環境の保全に係る排出基準」は15項目がありますが、その内のCODとPHについては以下の基準(水質汚濁防止法)です。

COD:160mg/L、日間平均120mg,/L以下
PH:河川、湖沼 5.8以上8.6以下
   海域 5.0以上9.0以下
となっています。

この基準はあくまで日本の基準であり、ミクロネシアでは独自の基準を作る必要があります。
これはKIRMAの仕事であり、今後基準の必要性をこの局へ要請していくつもりです。

(a)2010年1月時点の解析
最終的に排水される地点はマングローブ林へ排出される排水の最終状態がこれに該当しますが、その値はCOD16、PHは7であり、いずれも基準値をクリアしています。わずか2項目に限れば現時点では、廃棄物処分場の排水に問題はありません。
今後は定期的(毎月、3か月単位--等)に定点での検査が必要で、しばらくはこの観測を続け、傾向と問題点が把握できれば、限られた予算内で、もう少し絞った検査が可能かも知れません。

(b)これまでの10回のデータからの解析
これまで実施した検査結果は今回を含め10回ありますが、いずれの検査も不十分です。第1浸出液調整池のデータはあってもそれに対応する最終のマングローブ林のデータがなかったりしています。
ただこのデータから読み取れることは、最終的にマングローブ林のCODは最小10、最大16であり、またPHも7であることから、この2項目に限定すれば、観測を開始してから現在まで排水に関しては問題がなかったと言えます。
しかしながら気候、温度等の状態が不明ですが、第1浸出液調整池の値が100mg/Lの結果が4回あります。現在使用している機器の機能上100以上の値を得ることが出来ませんが、再度このデータ値に近い状態が発生したら、その状況を詳細に分析する必要があります。
むしろこのようなデータが処分場の排水に関する改善のヒントを与えるかもわかりません。4回この値が発生した日の内Mangrove林の値は11/30/2009の1回のデータしかありませんが、フィルター後のこの時のCODは10mg/Lであり問題はありません。

以上排水池に係る処分場の課題はいくつかあるものの、現状の簡易ろ過方式の状態で推移させても問題がないと判明できただけでも、この処分場の状況把握を一歩進められたと思っています。

前回報告しました「覆土」の件、今回報告しました「モニターリング」の件とも、パラオのコンサルタントの「藤-Katsuo Fuji」さんの協力を頂きました。
彼に感謝すると共に、教科書の知識を下敷きに、現場に近ければ近い程、置かれた環境に依存した判断が必要だとつくづく実感しています。