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コスラエ州立病院で医療廃棄物改善へ向け、少しずつ動き始めました。
JICAミクロネシア支所長が2010年3月コスラエ州立病院を視察された際に、病院長が焼却炉の設置を要望され、JICA所長は故障中の焼却炉が修理可能かどうかを調査するようにコスラエ州立病院配属の奈田SV(平成21年度2次隊 臨床検査技師)に要請されました。それで、機械類に詳しい技術者に点検を依頼して濱崎SV (DT&I、コスラエ州運輸・インフラ局)と協力して調査しました。
5年間故障で休止している医療焼却炉
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その結果バーナーを交換すれば直る見込みがあると判断されましたが、実際に使用していた職員が退職していて、故障個所が不明であり、部品を取り換えても使用できる保証がない事から、JICAの佐上企画調査員(環境)の意見も取り入れて、JICAとしては結局新品を導入する事になり、新品を設置するまでには年数を要することから、つなぎとしてFSM病院共通マニュアルに準拠したドラム缶を改良する案に決まりました。しかし、病院のスタッフは既に空港近くで稼働している魚のコンテナを再利用した簡易型焼却炉を作成する案を提示し、この案に沿って奈田SVの現地活動費をJICA事務所に申請して認可していただきました。焼却炉の建設については、奈田SVを取りまとめとして濱崎SVがサポートする形で動き、焼却炉の工事はそのDT&Iの方で7月下旬より開始され、8月27日に簡易医療焼却炉が完成しました。(一番上の写真)残念ながら濱崎SVの任期中の完成にはなりませんでした。(2010年8月25日任期終了)
9月2日(木)にはコスラエ州立病院、DT&I,私の配属先であるKIRMA(コスラエ州資源管理委員会)のスタッフ、JICAの佐上企画調査員(環境)、奈田SVと私を交え完成セレモニーが行われました。
9月中旬から使用が開始され、大量の注射器が大きな125Lポリバケツに15杯も保管していたものを焼却処理しました。
10/4(月) コスラエ州立病院サニテーション施設のディレクター、私の配属先のKIRMAのスタッフ、奈田SVと私で病院内を巡回し、ゴミ箱の分別状況をチェックしました。FSM病院共通マニュアルのゴミ分別表に基づいての分別啓発活動を実行する事を決定しました。
注射針は専用のボックスに入れるなど分別をしっかり行えています。一般廃棄物の袋に針のないシリンジが混入していたり血液が混じっていたり、感染性廃棄物のゴミ箱に一般廃棄物が混入していたり、ゴミ袋も一般廃棄物では黒の袋を使用する事になっていますが、白の袋を使用していたりでマニュアルに準じては行われていませんでした。また袋の種類(黒、赤、黄の3色)に見合った袋が用意できておらず、感染性廃棄物のゴミ箱が足りなく、分別できない状況であることも分かりました。特にラボラトリーのゴミ分別ができていなかった為に、サニテーションのディレクターが病院スタッフに 直接指導を行っていました。このゴミ分別表が記載してあるFSM病院共通のマニュアルが存在している事も知らない病院のスタッフが多く、またマニュアルの数が全く不足している事も分かりました。これでは医療廃棄物をどう分別するのか、スタッフが理解できる環境ではない事にも気づきました。
一般廃棄物のゴミ箱に針のないシリンジが混入
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一般廃棄物、針のないシリンジ、血液の廃棄物がごちゃまぜ状況
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またパブリックヘルスの倉庫では約3年間分の注射針と期限切れの経口避妊薬で部屋が埋まっていました。
部屋が注射針と期限切れ経口避妊薬で埋まっている状況
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この病院内を巡回してチェックしたゴミの分別状況の写真を証拠として、サニテーションのディレクターより依頼を受け、奈田SVと私で写真を交えて現状報告書を作成し、それを受けてディレクターがまとめ改善案も交えた報告書をコスラエ州立病院院長に提出しました。
10/7(木)までに焼却処理した総数は、注射針を125Lポリ容器(18杯)、大シャープコンテナ(3箱)、中シャープコンテナ(7個)、小シャープコンテナ(3個)、紙性針入れ(40箱)、あと期限切れの経口避妊薬を約150ケース(1500箱)です。焼却炉の投入口を開けて空気を供給して、火がゴウゴウと立ち上る様子から5年間どれだけ医療廃棄物を蓄積していたのかというのを実感しました。
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医療焼却炉での処理中の炎
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サニテーションのディレクターは今後の改善として種類別のゴミ袋の用意、感染性廃棄物等の不足しているゴミ箱の用意、またそのゴミ箱がどの種類の廃棄物を捨てるものかすぐに分かるラベルの作成、病院のスタッフへのゴミ分別への意識の徹底などをあげました。ゴミ箱の廃棄物量、分別状況の確認は毎週木曜日に行う事になり、毎週金曜日に医療廃棄物の焼却処理を行う事になりました。
病院のスタッフのゴミ分別の意識も少しずつ表れ始めたようです。先週ラボラドリーをチェックした際には分別が行われていました。
感染性廃棄物ゴミ箱の中
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感染性廃棄物ゴミ箱
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あと簡易焼却炉の周りも廃棄物がたくさんあります。時々医療廃棄物が土に混ざっていたりもして非常に危険です。この周りの廃棄物処理も行う必要があります。現状改善へのアクションはまだ行なわれていません。
医療焼却炉周りの廃棄物(一部)
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医療廃棄物は大変危険な廃棄物の部類に入ります。大きな改善にはかなりの時間を要しますが、改善に向けて少しずつ動き始めているのは確かだと思いますので、少しずつ根気強く啓発活動を継続していきたいと思います。
平成21年度3次隊 コスラエ州 柏原 庸一
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