ひろふみのブログ☆

囲碁棋士大橋拓文のオフィシャルブログです。

4月28日の対局 貪りと反省

2016-05-10 12:12:55 | 手合

最近の対局振り返りも6回目ですが、これでやっと現実に追いつきます。

4月28日木曜日、名人戦の予選で遠藤悦史七段と打ちました。

私の黒番。

1図 白1が厳しい狙い。黒2とつながるだけではちょっとつらい。ともあれ白5までとなり、次の手を感情的に打ってしまった。

2図 白△の3子をターゲットにして黒1が大きいかと思ってしまいましたが、白6が痛烈すぎて必敗の形勢に。

囲碁十訣にも「貪れば勝ちを得ず」とありますが黒1は貪りそのもの。

3図 何はともあれ黒1と備えるよりありませんでした。

4図 この後も命からがらの脱出行。白2と打たれ、「えっ、つながれせてくれるの!」と思いましたが

つながっても2眼はっきりしないという惨状。白2は簡明かつ正着でした。

黒に眼形が無く、白には隙の無い壁が出来て、はじめに打った黒△がほとんど働いていません。

黒が生きたとしても形勢は大差で白良しです。

ずっと必敗の形勢でしたが、200手すぎから上辺の劫の振り替わりで数目得して逆転。

 301手完 黒1目半勝ち 残り黒31分47秒 白1分


棋譜再生

最後は何とか勝ったものの内容は大反省です。

今週から棋聖Cリーグがはじまります。初戦は久しぶりの名古屋遠征。

気合を入れ直してがんばります。

☆☆☆☆☆

読売新聞夕刊で毎週火曜日にコンピューター囲碁についての連載記事が載っています。

4回シリーズで今日が2回目です。

読み物調になっていますので、気楽に読んでいただけると嬉しいです。

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4月21日の対局 亀の尻尾も役に立つ

2016-05-09 12:25:21 | 手合

最近の対局振り返りその5。

4月21日木曜日、碁聖戦の予選で寺山怜四段と対局しました。

寺山四段はみなさんご存知のように、NHK杯で準優勝するなど活躍しています。

研究会でもよく打ちますが、最近はたくさん負かされています。

私の白番

1図 黒1と構えられたところでふと記憶が蘇って手が止まる

ブログで確認すると1年と2ヶ月前でした。同じ布石でやられてます。

黒△と黒1の幅だと白Aから入りたくなりますが、二の舞になっちゃうかとしばし少考。

2図 実戦はこちらを選択。白5までをなんとなくイメージ。

3図 もし白1と打つと、黒2などの構えが理想的。気分的に黒△が、黒Aの中国流より良い位置にあるような気もする。白Bの三々も入りにくい。

4図 少し進んで普通の定石を選ぶとやっぱり黒の構えが美しく見える。

5図 実戦はちょっとレアな進行を選択。黒にポン抜きを与えるので打つ棋士は少ないです。白19に期待。

さて、この碁は中盤も謎の変化が現れましたので、少し長くなりますが紹介します。

6図 黒1と打たれたら上辺白10子は取られです。

白2のポン抜きで打つつもりでしたが、さすがに上辺の黒地が大きすぎて形勢は黒良しだったでしょう。

7図 しかし実戦は黒1と反発。白も2から反撃して、上辺を助けました。

黒の形は俗に言う「亀の甲」ですが、これは更に浦島太郎もビックリの「亀の甲の尻尾つき」です。

しかし、上辺4子取っての白復活も巨大です。もともとは、やや黒ペースでしたが、ここで互角に戻ったようです。

 

8図 黒は「亀の甲羅」を活用して下辺白に寄り付きましたが、なんと亀の甲にへばりついた白△が働いて生還。

半目勝負の形勢です。

 

 266手完 白中押し勝ち 残り白3分 黒1分


棋譜再生
  

最後は投了となりましたが、作れば白1目半勝ちです。

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4月7日の対局 穴熊

2016-05-06 13:14:15 | 手合

こんにちは。

昨日に引き続き、最近の対局振り返りその4です。

3月~4月はほぼ毎週手合いがあったため、ネタがたまっております。

4月7日木曜日、名人戦の予選で、相手は熊丰六段です。

名前は「ゆう ほう」と読みますが、みんなからは「くまさん」と呼ばれ、親しまれています。

私の白番。

1図 黒1が急所の押さえで次に黒Aの切りもあります。ここで白はどうしたら良いでしょうか?

2図 普通に打つと白1ですが、黒4までとなると次の白の手が難しいです。1図の切りもあり左辺の白も少し心配です。

3図 一工夫して白1から運んだのが実戦です。

4図 このようになれば、一回たたいてる分、2図よりも白が良いでしょう。

5図 実戦は少し考えた後、黒1の抜きでした。これによって劫材が1億個あっても死なない黒石が出来ました。

閉じ込められる代わりに絶対死なない石が出来る、こういうのは時に魅力的に映るものです。

しかし局後の検討で熊さんが

「穴熊になっちゃったか」

と一言。


棋譜再生

208手完 白中押し勝ち

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3月31日の対局 珍しく〇〇

2016-05-05 14:16:07 | 手合

みなさんこんにちは。

最近の対局振り返り第3弾。

3月31日木曜日、本因坊戦の予選で山田拓自八段と対局しました。

私の白番。

1図 黒1とコスミツケられましたが、スピード重視で白2、4と決めました。

貴重な先手をどこに打ちますか?

2図 実戦進行1 白1とよくあるシマリを選びましたが、黒2とツケられて悩みました。

3図 白3と打つのが第一感でしたが、隅で生きられると少し甘そう。

4図 実戦進行2 多少不本意でしたが隅から押さえて黒10までとなりました。

どちらかと言えば黒を持ちたい進行です。白5では6と押したほうが良かったかもしれません。

そもそもさかのぼって

5図 2図白1では、このように大きく構えた方が、黒の打ち方が難しかったようです。

中盤以降は紆余曲折ありましたが、4図のなんとなく黒リードを覆すことは出来ず5目半負け。

日本棋院5階、和室での対局だったので検討も普段より多くしましたが

(大広間一斉対局だと、隣の対局があるため、検討はあっさり終わる)

山田八段曰く

「中盤以降は、珍しく両者よく打ってる」

とのことです。

 
棋譜再生

245手完 黒5目半勝ち 残り黒2分 白1分

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3月28日の対局 AlphaGoにはなれないけど、どうしても影響を受けてしまう、というお話

2016-04-29 19:05:06 | 手合

先ほどに続いて今日2度目のブログ更新です。

3月28日に打った碁聖戦の予選で杉本明八段との碁です。私の白番。

1図 白2で3も考えましたが、やはり3月は中央が大きく見える季節ですね。実戦は黒5までとなりました。

この後の白の構想を考えてみて下さい。

2図 最初は白1を考えました。しかし黒△が光っており白5のような打ち込みに迫力がありません。

下辺の白模様も、白が8手も費やしてる構えにしては小さいです。

3図 白1とコチラを押さえた方が、碁盤を広く使えます。白21の打ち込みもリズムが出てきました。前図と比較して見て下さい。

4図 3図の進行は互角だと思いますが、杉本八段は黒イマイチと感じたのか、

ボウシするのだったかと言われました。白2とかかってまた別の碁になります。

3月後半は棋士のアタマにAlphaGoの鮮烈な印象が残っており、全体的に中央志向な手が増えた気もします。

影響を受けないぐらい確固たるものが自分の中にあれば良かったのですが、どうも私は影響を受けやすい。

そこはかとなく、棋譜の中にも残像があるような。


棋譜再生

255手完 白3目半勝ち 残り白1時間17分 黒2分

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3月24日の対局 AlphaGoにはなれない、というお話

2016-04-29 12:42:40 | 手合

ここ1ヶ月ほど、忙しさにかまけてブログの更新が少なくなってしまいました。

つい最近、白石勇一六段がブログを始めましたね

これだけ丁寧に書けるのはスゴイ!しかも毎日更新!

碁の変化図が詳細で、勉強したい方には特におススメです。

そこで自分を振り返ってみると・・・

もうちょっとマメに書こうっと

というわけで、ここ1ヶ月の間の自分の対局を順に振り返ります。

3月24日(木)に打った王座戦の予選、青葉かおり四段との碁、私の黒番。

1図 AlphaGoの影響を受けたのか中央がやけに大きく見えてひたすら囲う。

白は28からの攻めに賭けるしかない。続いて

2図 白16と打たれて、事態は容易でない事に気付く。(ちょっと遅い・・・)

これがかなり厳しく、この後コウになってしまいました。

そしてコウの代償で中央が破れて、AlphaGoにはなれないと悟りました

やっぱり碁は自分らしく打つのが良さそうです。

もっとも何が自分らしいか分かったら苦労はないのですが。


棋譜再生

358手完 白5目半勝ち 残り黒52分 白3分

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救いの女神

2016-03-03 23:34:45 | 手合

3月になって数日経ちましたが、また寒くなって冬に戻りそう。

少し乾燥気味ですが、今日は手合い。

乾燥対策でリップのメンソレータムを必死に探してやっとこさ置き場所を思い出して見つけて出かけたら

なんと財布を忘れました。。。

気付いた時はすでに電車に乗ってしまって・・・(スイカは持ってる)

う~む。流れが悪い。

こういうことがあると、念入りに読んでも何か読み抜けがあるんじゃないかと不安になる。

というわけで、対局開始時は穏やかに打とう、と思いました。

本因坊戦の予選で青木紳一九段と、私の白番です。

1図 黒3と意欲的に高目に布陣されてさてどうしようかと悩む。

2図 少し考えて白4から6で一局打ってみようという心境に至る。どうも隅より辺に石がいきがち。

3図 例えば普通に一間ジマリならこんなイメージ。

4図 はさんでくれば隅に化ける。これはこれで一局ですが、星の定石に比べて左上隅が一路大きいので黒は気分的に選びづらい。

5図 実戦進行 黒は隅、白は辺という分かれ。互角でしょうが、どちらがお好みでしょうか?

 中央を華麗に捨てられて、うまくしめつけられたときは悪いかと思いましたが最後はなんとか勝ち。


棋譜再生

188手完 白中押し勝ち 残り黒6分54秒 白1時間17分

p.s. 財布を忘れましたが救いの女神が現れてなんとか危機を脱しました。

普段当たり前に感じてたことに、改めてありがたみを感じつつ冷静に帰宅。

それでは良い夢を

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棋聖戦

2016-02-19 11:11:11 | 手合

昨日の棋聖戦第4局に井山棋聖が勝ち、4連勝でストレート防衛。

囲碁界初の7冠がいよいよ現実味を帯びてきました。

さてその水面下では着々とトーナメントが進行中。

昨日私は棋聖戦FTの決勝でした。

棋聖戦は前期からシステムが変わりまして、まずはそれを簡単に説明します。

S、A、B、C、4段階のリーグがありSの1、2位とA、B、Cの各1位、計5人のパラマス戦で挑戦者が決まります。

パラマス戦とは階段状の変則トーナメント戦のことです。

そしてFTはファーストトーナメントのことで、ここを勝ち抜くとCリーグに入ります。

表はこちら。

FT決勝の相手は安達利昌三段。安達三段は昨年から今年にかけて15連勝を記録しています。

私の黒番。

1図 この時点ですでに右辺の黒がぺっちゃんこでイマイチかもしれません。

ここで更に白1からの追及が厳しい

2図 黒4から取ることは出来ますが、ビシビシ決められて黒悪そう。

3図 実戦進行 2図の形は辛すぎるので黒4と頑張りましたが黒6がひどい凡ミス。。。

なんと白7と曲がられて攻め合いは劫。しかも色々な具合が黒に不利・・・

ここで負けにしたと思いましたが黒10からひたすら粘って最後はなんとか勝ち。


棋譜再生

297手完 黒中押し勝ち 両者残り1分

リーグ戦も頑張ります。

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月曜の対局

2016-02-17 18:18:18 | 手合

月曜日は阿含桐山杯の予選がありました。

アマタイトルホルダーも参加できるこの大会。

芝野龍之介君と当たりました。

昨年史上最年少アマ本因坊を獲得しての出場です。

また勝率一位になった虎丸君のお兄さんでもあります。

詳しく知りたい方は「洪道場秘伝問題集」がおススメ。

芝野兄弟の問題は形が個性的です。

どんな詰碁を解いてたら、こんな問題が作れるようになるのか・・・・・って責任の半分ぐらいは、私にありそう 苦笑

この碁も巨大詰碁になりました。私の黒番。

1図 黒1に白2とつながれた。どうもこれが最強のようです。

実戦は次の手を間違えて負け。昨日一日考えて、どうやら良いコースを発見しましたが。。。

詳しくは毎日新聞に掲載されますので、そちらをご覧下さい。

さて切り替えて明日の対局をがんばります。

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手合い

2016-02-12 12:12:12 | 手合

昨日は本因坊戦の予選で知念かおり五段と打ちました。

私の黒番。

1図 白△と受けられたところ。ここで悩ましい。

2図 気持ちとしては豪快に黒1から全体を攻めたい。しかし右下方面でさばかれると得るものが無い気がする。

白4などと打たれても白△が働いてきそう。右上も封鎖されると白Aが先手になってくる。地味に痛い。

3図 なので女々しいかと思いつつも実戦では黒1と進出。辛い(つらい)ではなく辛い(からい)と信じる。

しかし中央の△2子はどうしよう・・・実はこの進行を選んだのは、この後にとある手が魅力的に写ったからなのですが・・・

4図 実戦進行 黒7が黒1と打ったときから打ちたかったツケ 

5図 実戦進行続き 白8から10の切りが最強の反撃。黒も11と返してここから乱戦に。

 大乱戦でしたが最後はなんとか勝ち。


棋譜再生

189手完 黒中押し勝ち 残り黒32分15秒 白1分

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