ひろふみのブログ☆

囲碁棋士大橋拓文のオフィシャルブログです。

謹賀新年&囲碁AI

2017-01-02 15:55:55 | コンピューター囲碁

皆様、明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて早速ですが、最近になり各インターネット囲碁サイトに次々と超絶囲碁AIが現れていますね。

さすがにこれはリサーチしないといけない!ということで新年一発目から囲碁AIブログです。

まずはYahooニュースのトップにもなった「GodMoves」

KGSに11月29日、12月1日だけ現れて3局の棋譜があります。

正体不明でAIという確証はありませんが、1局を通しての消費時間が7分弱

Zenに3戦3勝しています。

そして何よりその棋譜が斬新。

全てGodMovesの黒番でした。

1図 1局目、横向きに中国流を構えたことからAlphaGoではという噂になりました。乱戦の末、黒が勝ち。

2図 2局目 1手目天元から!しかしその後は普通に進行。黒9の肩ツキにZenも白16とお返しの肩ツキ。

囲碁AIは肩ツキが大好きです。結果は黒の圧勝。中国流より1手目天元の方があっさり勝ったように見えたのが不思議です。

3図 3局目 ナナなんと黒1、3の天元1間ジマリ しかも黒15から白16ツケに手抜きで黒17と裏からツメ

4図 (白1~黒24、通算18~41)

続いて当然白1ですが、自然な流れで下辺が黒地っぽくなりました。

そして大好きな肩ツキ黒18。黒24のリズムもよく天元1間ジマリも良い位置で黒好調です。

結果これも黒の完勝。ちなみにZenは趙治勲名誉名人と打ったバージョンとほぼ一緒でKGSでは約9割の勝率を記録しています。

置き碁やコミなしの先も含んでの勝率9割ですから、互先では滅多に負けていませんでした。

GodMovesはAIなのか

消費時間や肩ツキが好きなところはAIのようですが、天元1間ジマリを囲碁AIがやるかどうかは疑問という意見もあり

私見では最初の数手だけは人間の意志が入ってると思いましたが、結局のところ未だに正体不明です。

しかしこれは2016年大晦日から2017年の元旦囲碁AI祭りの序章にすぎませんでした。

最近ネット囲碁サイトでは中国発の野狐囲碁が盛んですが、そこにも囲碁AIがいます。

世界最大のゲーム会社テンセントが開発したもので「絶芸」「刑天」という二つが確認されています。

「絶芸」は11月29日夜の対局を最後に現れていません。これを書いていて気づきましたが

絶芸が消えた日とGodMovesが出現した日が一緒ですね

一見すると時間が一緒のようにも見えましたが、アジアの時間とGMTなので出現時間はかぶってないはずです。

現在は12月27日に現れた「刑天」がよく対局しています。

刑天と絶芸が違うソフトなのか、同じソフトをアップグレードしたものかは分かりません。

序盤のパターンは非常によく似ていますが、テンセントが開発している囲碁AIは複数あるとの情報もあります。

野狐囲碁のIDはハンドルネームの下に実名が書いてあり、世界のトッププレーヤーは名前バレしてる状態で刑天と対局しています。

観戦者数は毎局2000人超です。

世界のトッププレイヤーが束になって襲い掛かっていますが、刑天は20局打って勝率は8割です。

5図 刑天(黒)vs潜伏〔柯潔九段〕(白)

黒1から3が人間には気がつきにくいかと思いましたが、よく見ると棋理に適っています。

地を気にして右辺に目がいってしまいますが

まず弱い石を繋げて中央のラインを作るのが良いのですね。なるほど。

そして黒3と打ち俄かに中央が黒っぽいです。続いて

6図 白4と反発しましたが、黒23までいつの間にか攻勢に立っています。結果は黒の勝ちでした。

この全体感覚が非常に勉強になります。

一方でどういう碁のときに刑天が負けてるかというと

7図 刑天(黒)vs潜伏〔柯潔九段〕(白) 白Aと打ったところです。白△と黒□の攻め合いはどうなってるのでしょうか?

8図 ご覧のように白の1手勝ちです。

この碁は99%白の勝ちでしたが、回線が切れてしまって黒の勝ち

柯潔九段もネットで悔しがっていたとか。しかし内容は白の圧勝でしたね

この他にも柯潔九段は刑天に勝っており、全局的な乱戦から死活の勝負にしてるのが特徴です。

もともと囲碁を打つ囲碁ソフト(詰碁用ではない囲碁AIのこと)は死活が苦手と言われています。

ですが、最近は学習が急ピッチで進んでおり、その弱点も隠れていました。

しかしやはり、序盤に比べて相対的には少し弱く、全局的な戦いに持ち込めれば、人間にもチャンスがありそうです。

尚、「刑天」とは古代中国の神の名だそうです。

前置きが長くなりましたがここからが本題です(笑)

最初に少し触れたZenですが、KGSから東洋囲碁に引越しDEEPZENとして対局しています。

100局以上打ち、勝率は約9割。

これは1年前から考えれば驚異の進歩ですが、それが霞むほどの打ち手が突如として東洋囲碁に現れました。

その名は「Master」東洋囲碁で30連勝を記録し元日からは野狐で打っていますが、世界チャンピオン経験者に5連勝。

未だに負けなしです

出てきた当初は韓国のAIという説がありましたが

野狐で世界チャンピオン経験者にしかつかない金の冠マークがあることからAlphaGoとも噂されています。

では少し打ち方を見てみましょう。

9図~12図 Master黒番の布石です。

9図 黒番の場合、この布石は非常に多いです。白4の小目に対しては見た限りでは黒5の大ゲイマジマリですね。

黒21、23のスピーディーな手法も頷けます。

10図 白4が星の場合は黒5の2間高ジマリ。そして大好きな肩ツキ黒7!これも複数局打たれています。

11図 現在(1月2日日本時間15時半)進行中の碁も似たパターン。黒29といきなり三々に入るのも好きなようです。

12図 同じくすぐ三々に入った例。なるほど、星に接する両辺がほぼ等価の場合は三々に入るのか、打たれてみれば理に適っている・・・

13図 白番の布石も見てみましょう。肩ツキが好きなのは知ってましたが、ここまで大好きとは・・

白10、16、20と3回打ちましたね。

14図 ツケの運用も目立ちます。白18。同じような例がいくつかありますので他も紹介します。

15図 なんと大ゲイマジマリにツケ。しかし実はこの様な手は、私は囲碁クエスト13路でAyaZにたくさん打たれています。

凝り形に導くようにすぐツケる手がAIは得意ですね。13路と19路では少し性質が違うかとも思ってましたが、これを見ると真理は近いのか・・・

16図 AlphaGoの自己対戦で有名な白1のツケと雰囲気が似ていますね。実は全く同じ局面が現れ、Masterはどう打ったかと言うと・・・

17図 Masterは白1と入り、道策を彷彿とさせる打ち回しです。

大分長くなりましたが、2017年早々囲碁AIから目が離せない展開です。

囲碁AIは寝ないで打てるので追いかけるのが大変ですが、全力でリサーチしようと思います。

リアルタイム情報はツイッターの方が速いのでそちらもよろしくお願いします。

それでは今日はこの辺で。また会いましょう

コメント (3)
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