走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

免許をかけて市民を守る

2023年08月18日 | 仕事

電動車椅子が欲しい。費用の申請をする書類に署名して欲しい、と言います。


疾患のため息切れが酷く行動範囲が限られている彼。電動車椅子があればどんなに楽か?!よって気持ちは重々わかります。しかし署名はできません。何故なら危険だから。


電動といえども時速もそれなりに出ます。大きな鉄の塊で交通ルールを守られなければ市民に怪我を負わす可能性があります。だからできません、と言うと怒り出します。


彼は10年近く私の患者。巷では有名な問題児。司法でも名の知れたやんちゃもの。自転車が今の主な交通機関ですが、全く交通ルールを守りません。我が物顔で車道を逆走したり、急カーブをしたりします。


その上アルコール依存と覚醒剤依存があります。


アルコールと覚醒剤の利用を辞めて3ヶ月辞めたら再考します、と伝えます。つまり完全否定はしていない。条件をつける(でも再考であって約束ではありません)ことでやんわりとしたのですが、「今」署名できないことに腹を立てています。


そしてここからあれよこれよ、といちゃもんが始まります。どんなことを言われてもここは曲げられないところ。


彼はアルコールや覚醒剤利用が心臓と肺に悪影響を与えていることを理解しています。ハイリスクな行動と分かっていても、それを選んでいます。しかし車の免許や電動車椅子は彼以外の人が影響するので、本人の自由とはならないのです。だから死ぬ病気であっても交通ルールを守らなければ、市民に危害を与えれば(意図があってもなくても)、司法は対応をしなければならないのです。


分かってもらえるかな?いや理解できなくてもここは絶対曲げられないのだ。


冒頭写真拡大するとアリンコのように写っている人間が見えます。片道9.5kmを歩いてこの山頂から噴火口を見ることもできます。しかし道は整備されておらず、足場は悪く怪我をする人が多いとか。



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