走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

予防接種の意義

2020年03月01日 | 仕事

学会3日目。最終日。昨夜は遅かったので超疲れている。

昨日の続きを少し。私が所属する保健機構の管轄で陽性が確認された2人のうち1人は自宅療養で回復し、もう1人も同様の傾向だとメールをもらいました。真っ当な情報のみを読んでいる人はわかってきたと思いますが、今回のコロナウイルスはインフルエンザにとても似ているんです。インフルエンザも毎年死亡者を出す病気です。2017-2018年の死亡者はアメリカの報告によると7万9千人。驚きますか?入院が必要になった人や罹患者の数を調べれば毎年インフルエンザが健康に与える影響の大きさがわかるはず。なのになぜ今コロナを警戒しなければいけないのか?それはインフルエンザのように予防接種がないからです。そして新しいウイルスなので今後のミューテーションなどの可能性がわからないからです。

インフルエンザの予防接種はしていますか?カナダBC州では6歳以下と65歳以上、それらに当てはまらない年齢で慢性疾病、癌や、感染にかかりやすい状態の人は接種が無料になります。職業によっても無料となります。私は医療者なので職業によって無料の対象になります。そして喘息持ちなので疾病による対象者にもなります。疾病による対象者の家族も無料となります。なので私と同居する家族全員が無料の対象になります。どうしてだと思いますか?

私は自分自身予防接種をすることができる疾病なので良いのですが、疾病の中には予防接種ができない人がいるからです。その人をインフルエンザから守るためにはその周りにいる人が抗体を持つ事でその人がインフルエンザにかかる確率を下げることができるからです。健康な人はインフルエンザに罹患しても生き死に関係するような状態のなる確率はかなり低く、自分の体の中で抗体を作る事ができます。それぞれが予防接種か罹患でインフルエンザの抗体を持つ事で社会全体がそのインフルエンザに対する防御が高まり死亡する人が減るのです。これが予防接種を推奨する理由です。

さてコロナに戻って、先の2人の患者は抗体を作った。つまり病気に対して強くなったという事。ではお互いにうつしあって抗体を作れば良いではないか?と思うかもしれません。しかし世の中には慢性疾患や癌、免疫性の疾患、新生児などうつればたちまち重症化する人がいます。罹患した人が公共の場へ出ていく事でその場にいる前述した状態の方にも罹患させてしまう可能性があるのです。私のように喘息持ちでも顔に書いてあるわけではないですから、あなたにとっては重症化する人かそうでないかはわかりません。だから予防接種という安定した抗体を人口の大半に作る方法がない限り警戒は高くしておかなければならないのです。

もう一度インフルエンザの話に戻ります。インフルエンザの予防接種を受ける事は自分自身を守るだけではなく共同する事で不必要な伝染病を広めることを食い止める意味があります。予防接種がある病気は全て同様の意味があります。風疹、麻疹、おたふく、水疱瘡、B型肝炎、破傷風、そして子宮頸癌、まだまだあります。今回のコロナを通して感染症の仕組みの一面を理解して頂けたら、普段から予防接種を行なっていくことがどれだけ重要かわかって頂けると思います。もし貴方が予防接種を拒否するなら、あなたは感染症を広めることに一躍買っていると言う事です。残念ながら日本はMMRも子宮頸癌の予防接種の接種率が低い国でそれに対して国はどんな政策を行なっているのか(例えば国民に対する啓蒙活動)、不透明なままです。外出を避け、旅行をキャンセルする事で国民を守る。これが最善な方法と半強制的行われている日本の現状がどれだけ毎日の生活や経済に影響を与えるのか?多くの方が実感していると思います。これを機会に予防接種、感染症への理解を深めて頂けたら、と思います。そして国としての感染症に対する政策も見直していただきたいと思います。最後に、一日も早く予防接種が開発されますように、、、

冒頭写真。青空が広がっていますがホテルに缶詰。


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