走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

思い込みの決断

2021年08月27日 | 仕事
5年ほどかけて不必要な麻薬処方を減量してゼロになった彼女。3ヶ月ごとの処方のための診察でT3 (アセタミノフェンとコデインの入った錠剤)を処方してくれと言う。

ダメですよ。麻薬は術後の急性期でもない限り処方はしない、と話しましたよね、と伝える。

事故や怪我でも処方するって言ってたじゃない!と彼女は声を上げます。交通事故にあったのよ私。と言います。

いつ?救急には?

6〜8週間前。後ろから衝突され、その勢いで反対車線へ出て対向車とぶつかった。車は大破。救急車が来たけど拒否の用紙に署名をして病院へ行かなかった。救急室は大嫌い。

保険会社に身体的ダメージの届出はしたんですよね?

してないわ。だってもともと腰痛があるから保険からは何も出ないでしょ。大破した車のお金だけもらってそれで終わりよ。と彼女はあっけらかんに話す。

ああああああ、なんでこうなんだ。思い込みで物事を運ぶ彼女。賠償金が出る出ないを決めるのは貴方ではないし、それより元来の腰痛が悪化したかどうかが重要で、事故後2ヶ月近くも経ってようやく医療者へ診察なんて、、、それもあのめんどくさい書類(保険の書類はとにかく長い)の記入をしなければならないのが私、となる。面倒くさい!と頭の中でぐるぐるする。

で、どうなんですか腰痛?と聞くと

前と変わらないから救急に行かなかったのよ。でも事故だったんだからT3はくれるよね、と。

前と変わらないのなら処方はしません(救急へ行っていたら絶対処方してもらえてたのに)。それより別日に再診してください。正確な身体状況の報告書を書くべきですから、、、と話した(横道に逸れる彼女の診察はいつもオーバーしてしまう。その日も既にオーバーしていた)。

全く話がチグハグというのはこの事。事故った瞬間、これで麻薬を処方してもらえるラッキー!と思ったのか?そうならばかなりの重症の麻薬依存者。6〜8週間も我慢して、我慢して今訴えているのか?すぐに行動に移せない、電話をすることも出かけることもできない不安症があるからなのか?

普通なら、、、って決めつけたくなるけど、そこはグッと我慢で医療者としての仕事をするだけ。愚痴らない、愚痴らない、、、、。


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