走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

堅い決断

2015年10月08日 | 仕事
彼に会ったのは1年以上も前。ヘロイン、覚せい剤の常用者。かなり高い量のベンゾ系の薬も服用していた。処方されていたベンゾ系の薬がなくなり退薬症状を起こし、受診してきた。発汗が著明で、光の眩しさから目が開けられず、体は小刻みに震え、しゃべることもままならなかった。

ベンゾ系の薬は突然服用を中止することはできない。退薬症状、特に痙攣が起こり命に関わるのだ。急性期を通り越し、彼は定期的に受診するようになった。中毒者とレッテルを貼られ門前払いを受けるのが当たり前だった彼に、私はきちんと聴いてくれて、治療をしてくれたと感謝する。

再診の時に礼儀正しく、受付のスタッフも薬局も彼は良い子だと絶賛するほど。

ホームレスだった彼だが、今はきちんと家に住んでいる。身なりも身だしなみもきちんとしてきた。

ヘロインや覚せい剤の使用量も減り、自らベンゾ系の薬の減量を願ってきた。何年もベンゾに頼り切ってきた彼。減量は一ヶ月後と。それも0.5mgずつの減量なのでまだまだ時間はかかる。

以前の処方は1日ずつ。こうすることで大量に服用(悪用)することを防ぐ。半年ぐらい前に2日ごとに切り替えた。3ヶ月前に週に2回の処方に切り替えた。何も問題がないので1週間ごとの処方ににしようかと聞くと断った彼。

手元にたくさん持っていたら欲望に負けて服用してしまうかもしれないから。未だに自分に自信が持てないと話す。

殆どの人が薬局に頻繁に通うことが嫌で、長めの処方を求める中、何て偉い決断なんだ!と感心した。今度こそ薬から抜け出そうという彼の強い気持ちがうかがえる。

頑張れー応援してるよ!



森のように茂るケール

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