走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

日本に馴染みのない医療の形 最終回

2020年12月31日 | 仕事
シリーズ 最終回

さあ、今までのおさらいです。

ACPは患者が自分の治療をカスタマイズすること。
治療だけが医療ではない。
治療は回復の可能性がなくなると不毛な処置になる。
医療崩壊寸前でのトリアージの意味。選ばれる命。
医療資源は無限大ではない
緊急事態時の各界を超えた協働の重要さ

日本は歴史のある国です。そして国民はとても勤労勤勉です。そこが日本の良いところであるけれど、周り(国外)を見る事を忘れ、変化を恐れる国でもあります。しかしこのコロナのおかげでで在宅勤務やフレックスタイム勤務を受け入れました。今まで拒み続けた働き方です。インターネット会議や診療、学会など海外ではとっくの昔から始めていた事を、日本ではコロナのお陰で受け入れたのです。

もしかしたら、人工呼吸器のスイッチを切る医療のあり方もあるべき医療の姿として日本に取り入れる時なのかもしれません。誰も予想していなかった、この冬のコロナの威力。ICUの稼働率が下がってきている現状ならば前向きに検討するべき事かもしれません。そしてACP啓蒙のベストチャンスとしてこの機会を逃さない事も重要だと思います。

私は日本と海外の両方で医療者としての経験があります。時折日本で働いていた時の形式的に行う不毛な処置の事を思い出します。医療者の誰もが患者の死が迫っている事を認識しているのに、点滴を始めたり薬を投与したり、酸素を始めたり、心臓マッサージをしたり(予測していなかった心肺停止、所謂コードブルーではなく、病状の進行による予測している死)。いったい誰の為に?何のために?あの儀式をしなければならないのか?と。8年前に祖母が亡くなった時もそうでした。

治療は不毛な処置の為に使うより意味のある目的で使うべきだと思います。

シリーズ終わり。

今年も一年私のブログに付き合っていただきありがとうございました。2021年が世界中の人にとって素晴らしい一年になりますように!

冒頭写真は数週間ほど前のもの。重い雪で停電。なのに自家発電機があるご近所はあかかかと灯りが、、、


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2 コメント

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Mrs (玲子H)
2021-01-03 08:47:35
初めまして、あなたのこの記事を見て共感することが多くて書きました。私も日本で8年を看護婦として働いてきましたが、48年前から英国に居ります。
昨年(2020)7月に47年連れ添った夫を肺がんで亡くしました。コロナの真っ最中、夫は医者にも一度も診てもらわず、自宅で私一人で見送りしました。
病院へ入っていたなら、点滴や酸素吸入などで少しでも息を引き延ばせたのかもしれませんが、彼は痛みだけはなかったので安らかに逝ってしまいました。寂しいけれど、今でも私を信じて最後まで文句も言わず逝った夫に感謝しています。
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Unknown (missy0806)
2021-01-04 14:03:40
玲子Hさん

初コメントをありがとうございます。48年!海外生活大先輩ですね。経験をここでシェアしていただきありがとうございます。日本の人にとっては目が点になるような経験だと思います。日本では緩和ケアが20年前に比べたら広がったようですが、診療報酬加算に縛られていたり、医療倫理的な観念も未発達で在宅死、ACPなどはまだまだのようです。帰国する予定はありませんが日本は私の故郷。両親も姉弟も姪っ子も甥っ子も友人もいる国。日本の医療の発展に繋がればとこれからもブログを書き続けていきます。
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